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朝起きて着る服を選ぶのが億劫だったことがあるすべての女たちへ『あたらしいひふ』

みなさんは、服を選ぶのは好きですか?

 

私は服には無頓着に生きてきたタイプなので、この時期は毎年「去年の今頃私はいったい何を着ていたんだろう……?」と思っているうちに冬が来ます。

 

おしゃれな人は「秋はコートがいらなくて色んな服が着られる」といって好きな季節だそうですが、私は服選びが本当に苦手で、秋はどのくらいの重ね着で挑めばいいのかわからなくて苦手です。

 

また今年も秋服を全然買わないまま秋が来ているので、せめてユニクロくらいは行っておきたいな、と思う今日この頃です。

 

 

 

今回紹介する漫画の登場人物で、偶然にも私と同じ苗字の高橋さんは、服に無頓着なタイプです。

そんな彼女のコンプレックスが描かれたシーンをTwitterで見て、続きが読みたくなって買ったのが、この漫画『あたらしいひふ』でした。

 

 

あたらしいひふ (FEEL COMICS swing)
著者:高野雀
出版社:祥伝社
販売日:2017-10-05

 

この漫画は、表題作「あたらしいひふ」を含む短編集になっており、コンプレックスを扱った作品が多く収められています。

 

表題作「あたらしいひふ」では、4人の女性の服を巡る悩みやコンプレックスが、オムニバス形式で描かれています。

 

 

服選びとコンプレックス

 

高橋さんは、着られればそれ以上に求めるものはなく、おしゃれな服には逆に気後れしてしまうような、そんな女性です。

 

 

こんな考えから、無難に黒ばかりをローテーションで着るようになってしまった高橋さんに対して、同じ部署のアルバイトのギャル、田中さんは「なんでそんな強いんすか」と聞きます。

 

 

田中さんは、「かわいいで武装」していて、「かわいい」は「わたしの気持ちを強くしてくれる」と言います。

そんな田中さんにとって高橋さんは、なんの武器も持っていない「基本アバター」のまま戦っているプレイヤーのようで、自分に自信があるように見えていたのです。

 

 

あと二人の登場人物である、渡辺さん鈴木さんにしても同じです。

 

 

渡辺さんは自分に合う服で冴えない自分を少しでもかっこよく見せたいと思っているし、鈴木さんは無難なファッションにまとまってしまう自分があまり好きじゃないのに、それに反して周囲からの評判はいいというギャップに悩んでいます。

 

 

4人とも、それぞれかたちや時期は違えど自分のあり方と周りからの見られ方の違いに苦しんでいます

 

自分の容姿に対する自信のなさから来ているものなのに、真逆の行動になってしまうのは大変不思議なことですが、性格的な部分も大きく作用するところでしょう。

 

誰にでも当てはまる正解がないところが苦しみを増やす要因でもあるでしょうが、最終的には自分がどうすると安心できるか、というところになるのだろうと思います。

 

服と女と世間体

 

さらに「もう少し服かまったほうがいいよ 女の子なんだからさ」という男性の言葉を、高橋さんが気にするシーンや、ジャージ姿の生徒指導の教師に渡辺さんが制服の着方を咎められて、心のなかで反発する場面など、女と服の微妙な関係についても描かれています。

 

もちろん服に気を遣うかどうかに男女差はあまりないと思いますが、女性の化粧が身だしなみと広く思われているなど、女性のほうが「気をつけていて当たり前」と思われている風潮は確かにあると思います。

 

 

男性だと「スーツ」という魔法の戦闘服があります。スーツという基本スタイルを守っていれば道を踏み外すことはほとんどありません。

 

「スーツマジック」なんて言葉もあるくらいですから、スーツがあれば一定以上の清潔感や身だしなみがあるという点では守られています。

(私服とのギャップで幻滅することを考えると、考えものかもしれませんが)

 

 

高橋さんが「女の子なんだから」服に気を遣えと言われる一方で、田中さんは「学生なんだから」と言っておしゃれを規制されています。

この矛盾も、よく指摘されていることです。

 

中高生のおしゃれがしたい盛りは、学業の邪魔だからと言って髪型や化粧が制限されているにも関わらず、大学進学や就職を機に、化粧やおしゃれは最低限の身だしなみとして扱われるようになります。

 

どちらも急にやれと言われてできるものではないし、万人が興味を持っているものでもありません。

 

 

強制されているものではないのだから、やりたくなければやらなければいい、という考え方もあるかもしれませんが、そういった「身だしなみ」を怠ることは、結果的に信用度や印象に直結します。

 

 

そのような世間の見方が、女性の方がまだ強いのが現状ではないでしょうか。

 

 

 

とはいえ清潔感は男女関係なく重要ですし、おしゃれであるに越したことはありません。

それがわかっているからこそ、私たちは悩み苦しみ、ウンウン唸りながらも服を買いに行くことになるのです。

そして、「なんだかんだ服はかわいいし、見ると多少テンション上がるな」と思ってしまうのです。

 

 

最後に、この漫画『あたらしいひふ』は、表題作以外にも、学生のコンプレックスと噂話や、学生時代仲が良かった友人同士が社会人になってお互いに抱く劣等感や嫉妬など、心にチクリと刺さる短編が詰まっています。

 

なんとなくセンチメンタルになってしまう秋の夜長にぴったりなので、ぜひ手に取って見てください。

 

 

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