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『キングダム』と『蒼天航路』の違いとは?魅力的な女性武将が多数登場する大人気作の面白さを紐解く。

歴史モノが好きな方は多いと思います。私もかつて司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』『竜馬がゆく』などに胸を躍らせました。

 

さて、今日紹介するのは、今更ではありますが『キングダム 』(原泰久)です。

中国の歴史物といえば『三国志』や『項羽と劉邦』などが有名ですが、『キングダム』はそれらよりもっと以前、中国の春秋戦国時代を舞台に、史上初の中国統一を成し遂げた秦の最初の皇帝となる後の始皇帝「政」と後の大将軍「信」との活躍を中心に描いた作品です。

 

キングダム 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
著者:原泰久
出版社:集英社
販売日:2012-06-22

 

女性活躍推進の『キングダム』

当初は後に始皇帝となる「政(せい)」を主人公にと作者は想定していたようですが、「政」の親友である後の大将軍「信」を主役としたことで、下賤の身から数々の武功を立てて大将軍まで成り上がる様子と、武将の目から見た個々の戦場における戦略が生き生きと見られるようになりました。

 

『キングダム』の特色の一つは、魅力的な女性武将が登場することです。

主人公「信」率いる飛信隊の中には、猛者たちに混じって副長である美貌の女剣士・羌瘣(きょうかい)や、娘軍師と呼ばれる軍師の河了貂(かりょうてん)などがいます。

さらに、女性ながらも山界の王である秦の武将、楊端和(ようたんわ)も登場します。

 

とりわけ、美少女の羌瘣(きょうかい)は人気キャラです。

愚直で武力一辺倒の主人公「信」を智謀で上回り、武力も互角以上の力を持ちますが、なぜか「信(しん)」が隊長を務める飛信隊の副長を務める古参のメンバーで、「信」を支える健気さを持ちます。

 

その美貌と可憐さとは裏腹に、『キングダム』の設定では暗殺一族の出自で姉の敵討ちに執念を燃やしており、そのギャップに萌える読者は私だけではないはずです。

 

読者として気になるのは、羌瘣が主人公の「信」の子を産むとうっかり?発言したりと、「信」と羌瘣がほのかに恋心を通わせているように見えることです。

この二人の恋の行方はしかし、羌瘣と信のモデルとなった人物(羌瘣と李信)の史実から考えると、それほど簡単ではなさそうです。

 

羌瘣は、紀元前228年(始皇19年)、王翦と共に趙を攻め、趙王幽繆王を東陽で捕らえ、趙を滅ぼしたと知られています。

昔のことですので、没年や性別は不詳ですが、「信」のモデルである李信とともに有能な秦の武将であったことを考えると、両者が結婚したりするのは、さすがに無理がある気がします。

 

『蒼天航路』との違いは

それでも、史実を元にしながら、どこまで逸脱と創造が許されるかと考えるのもまた、歴史モノを読む醍醐味の一つです。

 

中国の古典史実を元にした他の有名な漫画作品には『蒼天航路』(そうてんこうろ、原作・原案李學仁、作画王欣太)があります。

中国の後漢末期から三国時代にかけて群雄割拠していた時代(180年頃 – 280年頃)の興亡史を描きました。

 

蒼天航路(1) (モーニングコミックス)
著者:王欣太
出版社:講談社
販売日:2012-09-28

 

『蒼天航路』は1994年から2005年まで『モーニング』で連載され、2006年から連載開始された『キングダム』よりほぼ10年前に生まれた作品ですが、こちらには女性の武将はほとんど登場しません。

この辺りは『キングダム』が近年の女性の活躍を作品に取り込んだと見ることもできます。

 

なお『蒼天航路』は、三国志の通常の主役の劉備ではなく、曹操からの視点で描いた作品である点で新しさがあります。

 

『キングダム』はまだ連載中で現在51巻まで出ています。史実による「限界」を知りつつも、羌瘣と信の恋の行方が楽しみで、今後の続刊にも目が離せません。

 

 

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キングダム 51 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
著者:原泰久
出版社:集英社
販売日:2018-08-17