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放尿されて悦ぶ先輩が好きで、驚異的変態(?!)な彼の元カノたちへJKが挑む!——『オッドマン11』

「私って変わってるよね」

 

いるのだ、中学でも高校でも、信じられないことに大学でも、聞いてるほうが恥ずかしくなるそんな台詞を臆面もなく言ってしまうやつが。

 

(いや凡庸だから! 徹頭徹尾、完膚なきまでに凡庸だから! 自分が特別であると思いたくて変人じみた振る舞いをしてみたり、ちょっとした個性を絶対視してしまうことがまさに凡庸だから! 自分が変わってるなんて言っていいの、道満晴明さんのマンガに出てくるキャラクターくらいだから! 思春期なの? なに思春期なの!?……)

 

空気を荒立てないことを美徳とする日本人的な態度を心の底から尊んでいる僕は、世界が平和でありますようにと心で唱え、目の前の顔面に唾を吐きたい気持ちを押し殺しつつ、凡庸にかわいい君へと「そうでもないんじゃない」と曖昧に答えるのだった。

 

 

君も僕も、変わってなどいない。
凡庸に孤独だっただけだ。君はそれに耐えられなかっただけだ。

 

 

ということで、主にエロ漫画誌で性表現は淡白ながら(下ネタは強烈だけど)膨大な知識量に裏打ちされたギャグが散りばめられた、時に痛快で時に寓話的な、おおよそエロ漫画というカテゴリを逸脱しまくっている怪作を発表してきた道満晴明さんの作品を。

 

感情移入なんて微塵にも試みることができなそうな現実離れしたエキセントリックなキャラクターばかり登場するのに、凡庸な僕の心を摑んでやまないオッドマン11を紹介する。

 

物語は、弟が姉の放尿を歓喜して受けとめるシーンから始まった。

 

 

オッドマン11 (メガストアコミックス)
著者:道満 晴明
出版社:コアマガジン

 

「オッドマン」は11人いる!

 

いたってふつうの女子高生・逆叉セツは、校内で男子生徒が女子生徒に放尿をぶっかけられている場面に遭遇する。
驚愕したセツ、勢いでその男子をぶん殴ってしまう。

 

セツの拳を受けた彼は叫んだ——「ご褒美!!」

 

この学園には、特異な性的嗜好や能力・姿形を持つ「オッドマン」と呼ばれる存在が11人いた。

 

放尿を受けとめていた彼もそのひとり、オッドマンNo.3「被虐(マルソキスト)」の伊丹(弟)、そして彼に放尿していたのはオッドマンNo.2「加虐(サディスト)」伊丹(姉)だったのだ。

 

 

No.1 「狗(イヌ)」狗田ワン
犬娘。乳首が6つある。

 

No.2 「加虐(サディスト)」伊丹(姉)
弟と付き合うオッドマンたちを無理矢理別れさせてきた。

 

No.3 「被虐(マルソキスト)」伊丹(弟)
姉以外の学園のオッドマン全員と付き合った過去がある。日常的に姉とSMプレイに励む。

 

No.4 「蒐集家(アタッチ)」呪島たたり
一つ目少女。新聞での4コマ漫画連載を受け持っている。

 

No.5 「淫乱(ビッチ)」白石きらら
猫娘。初体験は11歳の時。好きな体位は「輪入道」。

 

No.6 Not contact

 

No.7 「露出狂(ゴディバ)」縫田キヌ
全裸。気弱で優しげに見えるけど……?

 

No.8 「下衆(シットヘッド)」賤機嘲子
甲冑の女の子を連れた鬼娘。おしっこ見るのが好き。

 

No.9 「不潔(ペスト)」不条澱
ある性質のため、クラスメイトの顔をひとりも覚えていない。

 

No.10 「深きもの(ディープワン)」イカちゃん
某神話体系の生物っぽいイカ娘。焼いた皮がおいしい。

 

No.11 Not contact

 

 

先の件で伊丹(弟)を好きになった(?)セツは、彼に元カノがいたこと、その元カノが学園にいる伊丹姉弟以外の9人のオッドマンであることを知る。

 

「センパイ!! 私 頑張って勝ち取ります」

 

友人たちに煽られたセツは、伊丹(弟)と付き合うため、彼の元カノである9人のオッドマン、そしてラスボスとなるだろう伊丹(姉)と戦う決意を彼に宣言した。

 

VS.  オッドマンNo.9 「不潔(ペスト)」不条澱

 

「オッドマンとお見受けしました」
「ああ聞いてるわよ 私達にケンカ吹っかけてる子ね」

 

最初にセツが挑んだのは、乱れた黒い長髪をうねらせて佇むオッドマンNo.9、「不潔(ペスト)」不条澱

 

彼女に近づこうとするセツを、猛烈な悪臭が襲う。

「不潔(ペスト)」不条澱——彼女は生まれて以来、一度もカラダを洗った事がなかったのだ。

 

「もちろん歯を磨いた事も お尻も拭いた事すらないわ」

 

そう微笑んだ不条はこれ見よがしに靴を脱ぎ……放出された尋常ならざる悪臭を受けてセツは気絶した。

 

蒸れたストッキングに包まれた足を、不条は気を失ったセツの鼻先へと近づける——セツの鼻の骨は折れた。

 

VS. オッドマンNo.1 「狗(イヌ)」狗田ワン

 

「お前不条の体臭まともに嗅いで鼻の骨折れたんだって? バッカだな」
「別にこのくらいへっちゃらです コミックZINに行けばすぐ治ります」

 

セツはめげない。
次に挑むオッドマンは、プールで犬かきしていたメガネっ娘の犬娘・No.1の「狗(イヌ)」狗田ワン

 

「何やってんスか先輩っ 乳首丸出しじゃないスか!?」

 

狗田はビキニタイプの水着を着ていたが、犬であるため腹部に位置する乳首が4つ隠せていなかった。

 

狗田から言い渡されたのは、期末テストによる知力勝負だった。
負けた方は乳首丸出しの刑罰!!(狗田先輩のはもう見えてるけど……)

 

彼女に勝利するため、セツは頭が良くていやらしいオッドマンNo.5、「淫乱(ビッチ)」白石きららに勉強を教わり、勉強以外にもエロエロなことをする。

 

VS. オッドマンNo.7 「露出狂(ゴディバ)」縫田キヌ

 

「セッちゃん そろそろ私とも勝負しましょう」

 

オッドマンNo.7、「露出狂(ゴディバ)」縫田キヌがにこやかに提案したのは卓球勝負だった。

白石きららにセツは忠告されていた……「No.7とNo.11には気をつけろよ」

 

縫田は全裸。無防備なその姿に危険は感じない。
怪訝に思うセツだが、サーブを打った瞬間——縫田はセツの顔面へとラケットをぶん投げた。

 

顔面にめりこむラケット。壁に叩きつけられるセツ。

 

「よく 女の子は見られて綺麗になるって言うじゃない あれって本当の事なのよ 露出した肌に視線を感じると緊張から筋肉が引き締まってスリムになるの 生まれた時からずっと全裸だった私は その筋力も常人とは比較にならない」

 

床に崩れ落ちたセツにまたがり、縫田は筋肉質に肥大化した拳を振り下ろした。

 

「全裸で生きていくって事がどういう事かわかる? 全裸って事はね」一発。
「小銭が持てないのよ!」一発。
「小銭が持てないって事は 電車に乗れないの!」一発。
「電車に乗れないと 遠くに行けないの!」一発。
「行動範囲が徒歩圏内なの!」一発。

 

「小銭も持てず徒歩圏内で生きる私から お前は まだ奪う気なの!?」——大きく一発。

 

白石きららが体育館を訪れると、殴打され瀕死の状態のセツが横たわっていた。
白石に背負われながら、セツは呟く——

 

「…ZIN コミックZINに…」
「こんな時に何言ってんだお前!?」
「コミックZINは私のヒーリングスポットなんです…(…)じっとしてるだけで何も買わなくても落ち着くんです」
「いや買い物はしてやれよ」

 

この時、セツは気づいたのかもしれない。
オッドマンたちが「孤独」を抱えていることに。

 

Rematch オッドマンNo.9 「不潔(ペスト)」不条澱

 

コミックZINに癒やされ、なんとか回復したセツ(コミックZINさんすごい!)。

 

テスト結果も発表された……セツ=38/152位、狗田=126/158位。
眼鏡をかけて知的っぽく見せてるだけで、狗田はバカだった。

 

初勝利を飾った足で、セツは茶道部の部室へと向かう。
そこには、ひとり寂しげに弁当を食べる不条澱の姿があった。

 

「お昼はいつも一人でここにいるって聞きました」
「…だって 食事時に私が校内うろついたらみんなの迷惑でしょ?」

 

この台詞は切ない……「本当は誰かとお昼を食べたい」という願望が漏れているから。
だったらカラダを洗えばいいのに、そう言いたくなったひとは分かっていない。

 

カラダを洗わないのが不条だ、その発想は不条を暴力的に否定するものだ。

そんな不条にセツはどう挑むのか——結果だけ記しておこう。

 

白石「お前らずいぶん仲良しになったんだな」
不条「これから一緒にお昼食べるの♡ 下の口で」
セツ「上の口です 白石先輩も一緒にどうですか?」

 

「オッドマン」とは何か?

 

このエキセントリックなキャラクター群像に、胸を摑まれてしまうのはなぜだろう。

 

オッドマンは「健常者(ノーマル)」ではないが「異常者(アブノーマル)」でもない。
彼女たちは「半端者」=「Odd man」。
突飛なところもあるけれど、半分はこっち側。

 

僕たちと同じように友だちがいない寂しさを感じたり、一途に誰かのことを想ったり、水族館へわいわいみんなで繰り出すことがかけがえなく楽しかったりする。

 

だから、凡庸な僕たちも、オッドマンに届き得る一瞬がある。

 

セツはオッドマンに真っ正面から挑み、彼女たちの孤独を解く。
天真爛漫で素直で健気な彼女の真っ直ぐさに当てられ、オッドマンたちは次々と彼女に心を開いてしまうのだ。

 

セツはギャルゲーの主人公のごとくオッドマンたちを攻略し、いつの間にか百合ハーレムを築いていく。
そこで繰り広げられる賑やかで楽しい日々は、とびかう下ネタはインモラル過ぎて、隙あらば投げこまれるギャグはマニアック過ぎるけど、青春と呼んでも間違いではないと思う。

 

しかして、未だ登場していないオッドマンも存在する。
セツの戦いの道程は……ほんとにどうなるんだろう?

 

あとがきによると、第2巻は2022年発売予定とのこと。
僕のように待ち遠しい方は、道満晴明さんの単行本最新作『あやめとあまね』を読んでひとまず溜飲を下げよう。

 

文=マルモ(星海社)

 

あやめとあまね (メガストアコミックス)
著者:道満晴明
出版社:コアマガジン
販売日:2018-06-25