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この世に許せるセクハラはあるのか?漫画『先生!! 原稿下さい。』

「キミ、女の子なんだから。」

 

そんなふうな台詞を言われ、ときに「ちゃんと異性として扱ってくれている!」と喜び、
ときに「ああ、オンナとして見てるのね」とがっくりするのが、女性である。

 

前者がイケメンに言われた場合、後者が非イケメンに言われた場合というわけでもない。

この違いは何をもって生じるのだろうか。

 

 

「キミはどんなブラジャーとパンティーをつけてるの?」

 

 

エロティックホラーサスペンスを連載する大物作家・柿内十鉄が問う。

 

掲載誌「小説こころ」の担当編集・木村紗和(26歳/和美人/巨乳)は
もちろん渋るも、彼の筆が進み原稿さえもらえるなら、と答える。

 

すでに上がっていた原稿を手渡し、どこからか取り出だしたる下着カタログをじっくりと眺め、紗和の下着のタイプを確認して噛み締める十鉄。

 

万華鏡を差し出してその名称を言わせてみたり、コタツの温度を調整するふりをしてスカートの中を覗き見ようとしたり、とにかく面倒なエロジジイ作家である。

 

そんな十鉄と紗和のゆる~い攻防を描く、1巻完結の漫画『先生!!原稿下さい。』は、2008~2009年に『小説現代』にて連載していた作品とのこと。

 

たいていの女性が紗和の立場なら、相当な不快感を覚えるだろう。
小説を書くためなどと体のいい文句でセクハラを受けているのだから。

 

しかしこの漫画、一度たりとも「セクハラ」という言葉は出てこない。

紗和は持ち前のスルースキルと鈍感力の高さで、十鉄をかわす。

 

「原稿がもらえるのなら……」と苦痛に絶え絶え屈辱に耐えるのではなく、

「言ってやるからとっとと原稿を書け」という強さがうかがえる。

 

全裸にコート一枚を強要されても、アンダーウェアの袖や裾を折り折り、そう見えるようにしてやり過ごせてしまう。

図太い。たくましい。

 

彼女の心中は「バーカ」「原稿書かないなら死んでくれ」などなど
十鉄への罵声のオンパレードで、無表情とのギャップがおもしろい。

 

エロの探求が仕事と表裏一体である十鉄のハートは、そんなものでは折れない。
ほんとうに面倒なじいさんなのだけれど、そこに彼女を貶めようという意図はない。

 

純粋なる性や女体への好奇心と探求心にあふれたエロジジイなのである。

 

作家という自分の立場を利用した、というか、それを利用してでしか若い女性と接触できない、かわいくてかわいそうなエロジジイである。

 

女性が女性として認識されることを不快に感じるのは、往々にして
「ばかにしているのが透けて見えるとき」だろう。

そんな意図付きの、一見褒め言葉のような台詞を言われても、喜びはない。

 

ばかにされたのなら、紗和のように心のうちで相手を散々ばかにすればいい。

 

二人のゆるやかな攻防戦は、息抜きにちょうどいい笑いになる。
おっさん上司のセクハラに疲れた女性にも、ぜひおすすめしたい。

 

ラスト1ページが、ちょっと考察し甲斐があるので、
作品のその後や前提そもそもで遊びたい人も、ぜひ読んでみてほしい。

 

先生!!原稿下さい。 (KCデラックス)
無料試し読み
著者:中島 守男
出版社:講談社
販売日:2012-11-22