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死にゆくひとに寄り添い続けるということ『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』
おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~ 1 (A.L.C. DX)
著者:広田奈都美
出版社:秋田書店
販売日:2018-07-13
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このレビューを書きながら涙が滲んでいる。ファミレスで41歳の男性が漫画を開き、泣きながら原稿を書いている姿を考えるだけで恥ずかしい(たぶんキモイ)。

 

看取りをテーマにした漫画はたくさんあるが、この漫画『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』は、あまりにも現実的過ぎて、いきなり「自分ごと」として迫ってくる。

 

訪問看護師の木野花(きのはな)は、新卒で訪問看護の世界に飛び込み、彼女の眼を通してひとの死に迫り、死にゆくひとに寄り添い続けることが、いかに過酷で穏やかな世界であるのかを描いていく。

 

何年間も自宅で介護を続ける人間に対して、行動しない人間は感情論や理想論を振りかざす。言葉の暴力は本人や近親者を傷つけ、追い込んでいく。本人の意思や近親者の想いは無視されていく。

 

しかし、多くの場合、彼らは行動しない人間に何かを言うことはない。そんなことに残された時間やエネルギーを使う必要がないからだ。

 

感情論ばっかり

自分が主役になっちゃだめなの

人が亡くなるのって日常なのよ

 

花の先輩であるベテラン看護師の馬淵さんから発せられる言葉は、穏やかな死を受け入れた本人以外の人間にとって「はっ」とさせられるものばかりだ。

 

本書では、高齢者のみならず、両親、パートナーとさまざまな関係性における死のカタチを取り扱っているが、高齢者が大きな人口ボリュームを占める社会において、ひとが亡くなることは日常であり、一方、看護や介護をする側にとっては、ある日突然訪れる非日常の始まりでもある。

 

死を受け入れた本人は病院で死ぬことを願うのか、それとも自宅での看取りを希望するのか。それに対して、介護者は、すべての希望に寄り添うことができるのか。心身の疲労に耐えられる肉体を持っているのか。終わりの見えない出費に耐えられるのか。自分が頑張るというプライドを捨てられるのか、あいつに任せておけばいいと無責任に放り投げるのか。

 

そこに正解はなく、一方で、家族の数だけ正解がある。突然訪れる死に対して、数か月から十数年をかけて寄り添い続けることもある「誰かの死」は、私の死であるとともに、私以外の死でもある。

 

死について、死生観について、近親者との合意はできているだろうか。私の両親はずっとずっと昔から死生観と「死んだあと」について語っていた。幼少期には「死んじゃうの?」と本当に考えてしまったこともあるが、あれは冗談ではなく「人生における自らの意志」を伝え続けているのだといま思い返している。

 

子どもが小さい頃から死生観を共有することは、どこかで死を日常の延長であり、いつ訪れるかわからないからこそ、伝えることに早過ぎることはないということなのではないか。両親は健在であるが、私自身は家族や親族、そして子どもたちと死について語っていないように思う。まだ死生観を持てずにいるのかもしれない。これも非常に恥ずかしいことで、本書から学んだ大切なことでもある。

 

 

最後に、この『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』を読むべきポイントを挙げる。

 

口だけの人間を気にしなくなる

 

上記でも触れたが、看取りにおいてあれこれ口だけだす人間が周囲にいるとき、そんな人間の言葉を気にする必要がなくなる。大切な時間を誰のために使うのかが明確になるからだ。

 

やるべきことが具体的に示唆されている

 

収入が途絶えると、死期を迎えた大切なひとに寄り添いたい一方、これからの生活をどうしていくのかパニックとなる。しかし、寄り添う人間が安心して寄り添うため、いますぐにやるべき「お金」についてしっかりと記載してあることで、何かあっても本書がバイブルとなって私たちを救ってくれるだろう。

 

誰もが直面すべき現実がある

 

本書は特別高齢者の看取りなどに特化しているわけではない。誰にでも訪れる死と、多様なケースごとに描いているため、誰もが直面すべき現実を持って読むことができる。それは寄り添う側だけでなく、自分が死と向き合わなければならない立場になるということもリアリティを持って考えることが可能だ。

 

 

本書は看取る側が読むべき漫画だけではない。死が日常の延長線上にあるものだと認識するのであれば、本書は私たちの日常の読み物として手に持っておく。まさに死生観形成における最初の一冊となる良書である。