TOP > マンガ新聞レビュー部 > 漫画『ランウェイで笑って』デザイナーとモデル、それぞれの夢を追う姿に号泣!

夢はなにか、と聞かれて、私はすぐに答えられませんでした。
子どもの頃は「お花屋さん」「幼稚園の先生」とか、いろんな夢があってキラキラしていたと思います。
でも歳を取るごとに、学力・生活環境・才能・世界の厳しさを少しずつ知り、軽々しく言葉にできなくなりました。
最後に夢として人に話したのは「漫画の編集者」
マンガ学部がある美大に入るため、高校時代通っていた画塾では、自分より絵がうまくておもしろい漫画を描く人たちがたくさん居て、悔しい思いをしました。
いろんな漫画家・編集者のインタビュー記事を読んで、漫画関係の職に就くにはいろんな経験が必要だったり、学力も大事なんだと知って、当時の私はこう思いました。
「私なんかになれるわけない」
美大に通うも、学費が高いので最初の1~2年は1ヵ月に100時間以上バイトしなければ生活が成り立たなかったし、家に帰っても膨大な量の課題をこなして、通学には往復3時間。寝る時間も遊ぶ時間もほとんどありませんでした。
そんなとき、親の仕送りでバイトせず、大学の近くに住んで、課題も締切日に提出しない同級生を見て、正直憎くてたまらなかったです。
「あなたの時間があれば、私ならもっといろんなことができるのに。なんでしないの?」
そんなことばかりを思っていたころ、ふと気がつきました。
"私は自分が努力しないことの言い訳を、他人にぶつけているだけだ"
何かを見つけては何かを諦める人生でした。他人と自分を比べては、自分は恵まれないと泣く人生でした。
今思うと本当に恥ずかしく、馬鹿らしい時間を過ごしていたと思います。
それでも私は美大のマンガ学部に通って、マンガ関係の職に就きました。振り返ると色んなことがあったけど、夢を諦めていたようで、諦めきれていない自分がそこにはいました。
そんな私が読んで泣いた漫画『ランウェイで笑って』を紹介したいと思います。
漫画『ランウェイで笑って』あらすじ
ショーモデル
主にファッションショーを
活躍の場とするモデルのことこれは
わたし 藤戸千雪が
トップモデルに至るまでの物語そして―――
都村育人が
トップデザイナーに至るまでの物語
この漫画に出てくる主人公は2人。
藤戸千雪(ふじとちゆき)は、父親が経営するモデル事務所「ミルネージュ」でパリ・コレクションを目指す高校3年生。
パリコレに出られる最低身長は175cm。
小学4年生の時に、すでに158cmを越え、ルックスも良かった千雪は希望に満ち溢れていた。
しかし、現実は厳しく、158cmからその後1cmも身長が伸びることなく、高校3年生を迎えた。
進路希望は「ハイパーモデル」夢は叶うものじゃなくて叶えるもの。
高校1年生のとき、事務所の社長でもある父親から「クビ」を言い渡されるも、諦め続けない彼女は、同じクラスのおかっぱ男子・都村育人(つむらいくと)に出会い、人生が変わる。
育人の出した進路希望は「就職」
彼は服を作ることが好きな、真面目で素直な男の子だった。
4人兄妹の長男。父親はおらず、母親は「働きすぎ」で倒れ、入院していた。
極貧の家庭で、妹たちの服を作り、ひとりぼっちの手芸部で古着をばらして新しい服を作る日々。
手芸部で、彼の作った服を見た千雪は、軽々しくこう口にした。
「ファッションデザイナーになればいいのに」
「え…や…僕なんてなれないですよ…!
それに なりたいとも思ってないですし」
「え そうなの?
だって書いてあったじゃん
東京デザイナー専門学校って
消してたみたいだけど」
「ふ…藤戸さん
高卒でもファッションデザイナーになれると思いますか…?」
「どうなんだろ?無理なんじゃないの」
幼いころから、モデル・アパレル業界にいた彼女はそのとき、単純に思ったことを口にしただけだった。
「無理なんじゃないの」
その言葉は、低身長でパリコレを目指す千雪が、周囲から何度も何度も言われ続けていた言葉だった。
育人を否定することは、自分で自分を否定することと同じになってしまう。
千雪は、育人に「わたしが一番魅力的に着れる服作って!!」と願い出る。
その服を着て、オーディションに出た千雪を見た審査員はその歩き姿に、一瞬世界(パリ)を見た。
2人の少年少女の出会いが、人生を変える!
『ランウェイで笑って』は、モデル・デザイナー、夢を諦めないことの大変さと、素晴らしさを描いた漫画です!
なぜこの漫画がこれほど泣けるのか?感想まとめ
私はこの漫画の一番の見どころは、
・環境(家庭)に恵まれ、才能(身長)に恵まれなかった千雪と、才能(センス)に恵まれ、環境(家庭)に恵まれない育人の対比
・苦悩を乗り越え、2人が成長する姿
この2つだと思います。
作中では、千雪の低身長がいかにモデル界で致命的であるかが描かれており、大人たちの反応や観客の反応も見ていてつらいものがあります。
育人の家庭環境も、守らなければならない家族、病状が悪化してしまう母親など、こんなに彼はがんばっているのにここまで追い詰められる必要があるのか!?と、思わず叫びたくなるような出来事ばかりです。
多くの人が抱く夢、それを邪魔する障害は夢や人によって様々です。
同じ境遇でなくても、つらい、苦しいという気持ちは、夢を持つ人なら誰でも共感できてしまうのではないでしょうか。
だからこそ、2人が人に認められたときはぐっと込み上げてくるものがあります。
そしてその裏に隠された2人の努力は、尊敬に値します。
モデル体型を維持するために、家でもヒールを履き、徹底的な食事管理をする千雪。
家族や着る人のためを考え、服を作り続けてきた育人。
この努力を真似できるかと言われれば、難しい。でもその努力をしてきた2人だからこそ、多くの人に認められてほしい!
そう思わずにはいられない漫画です。
私はこの漫画を読んで、昔を思い出し、改めて自分の今の夢とはなにかを考えました。
夢は叶うものじゃなくて叶えるもの。
私の夢は、漫画をもっと多くの人に広めること。多分「漫画家」とか「編集者」とか言ってたものの、今思うと本質は「売ること・広めること」だったように思います。
なのでがんばろう、努力しよう、叶えよう。
今、そんな気持ちでこの漫画をおすすめしています。
『ランウェイで笑って』最新刊6巻の見どころ
2018年8月17日(金)『ランウェイで笑って』の最新刊6巻が発売されました!
6巻では、有名デザイナーの孫であり、服飾芸華大学でずば抜けた成績を誇る綾野遠(あやのとお)の出自や、育人の窮地が描かれています。
なんで――
みんなしてそうやって――
僕の大事なものと大事なものを
天秤にかけて奪おうとするんだ
そんないっぱいいっぱいの彼に訪れる激熱な展開を、ぜひご覧ください!
駒村(@koma_ja)
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>>他人の夢に「無理」って言うとき、自分の夢も否定してない?『ランウェイで笑って』
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