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『幸色のワンルーム』が投げかけたもの

放送中止にすべきだった?

twitterやPixivでの連載当初から話題と物議を呼び、今またドラマ化から一転放送中止、更に関西では中止せず予定通り放送することになってまた様々な意見が飛び交っている作品。それがこの『幸色のワンルーム』だ。

 

 

はくり『幸色のワンルーム』

 

知らない人に簡単にあらすじを説明すると、

親から虐待され、友達にはいじめられ、学校の先生からも強制わいせつをされていた少女。

だが、ある日そんな彼女のストーカーだった青年が彼女を誘拐したことで、ふたりの世界は大きく動き出した。

小さなワンルームは少女と青年にとっての幸せなハコニワとなるのか…それとも?

といった、なかなかにヘビーな内容になっている。

 

なぜこの作品が問題になっているのかと言えば、ちょうどこの作品が初めて発表された頃に実際に発生した少女誘拐監禁事件がモチーフになっていて、

監禁されていた少女が逃げようと思えば逃げられたはずなのにそうしなかったことから、

彼女は監禁されていたのではなく自分の意志でその部屋に逗まっていたんじゃないか…というような意見も出ていた中でのこの作品が、誘拐や監禁を是としているという認識をひろめかねないから、という点だ。

 

今ドラマ化と放送中止の騒動でも、犯罪を肯定するような意識や、実際に誘拐や監禁の被害にあった被害経験者に辛い記憶を想起させるだけではなく、ある意味「被害にあった責任」も問われかねないような内容を、公共の電波を使って流すことが問題視されている。

 

虐待被害者を誘拐して心を通わせていくという話だと、2010年の大ヒットドラマ『Mother』や、ちょうど先日カンヌでパルムドールを受賞した『万引き家族』も近しいテーマだと思うが、なぜ他の作品は絶賛されている中、この作品だけこんなにも叩かれるのか。

…そんな社会的な考察はしません(笑)

そういった考察や、色々な意見、議論を戦わせている人たちはたくさんいるので、僕はそれについては一切気にせずに、ただシンプルにこのマンガを読んで感じた感想だけを書きたいと思います(笑)

 

もうね、なにせ幸ちゃんの境遇が報われなさすぎる…!

 

親からは手錠で繋がれて体中傷と痣だらけになるほどの暴力を受け、食事だって床にぶちまけられたものを食べさせられる。

学校でもクラスメイトたちからのいじめがとどまることを知らない。さらに教師からも強制わいせつを強いられ続ける。

 

そんな地獄が世の中にあるのかと、怒りを越えて絶望させられるような中にいたら、人の優しさや生きることさえ諦めてしまうと思うんです。

 

実際、もう死んでしまおうと思った時に、その手を取ってくれたのが青年だったワケで。

死なれるくらいなら君を誘拐しようと思う

きっとこの言葉は幸にとって、死ぬ以外で自分の世界を変えてくれる希望の言葉に聞こえたんでしょうね。

 

そんな幸を誘拐した青年『お兄さん』も、幸のストーカーというかなりセンセーショナルな出だしでしたが、なぜ幸をストーキングするようになったのかが語られる回では彼の深い闇が垣間見えますし、

何よりなぜどんな時もマスクを外さず、名前も偽名で、偽の身分証もたくさん持ちながらひとりで生きているのかといった謎はまだまだ深まるばかり。

だからこそ、幸とのこれからの時間がどう続いていくのか、終わっていくのかが全然想像できません。

 

ただ、幸を幸せにすると言うお兄さんと、お兄さんの存在を希望にしている幸の、相思相愛の恋愛関係とは違う歪な関係が、どうか幸せな結末に繋がって欲しいと願ってやまないんですよね。

 

だって、お兄さんにとっても幸にとっても、ふたりのワンルーム以外の世界があまりにも辛くて悲しい色だから。

 

色々とこの作品について議論をしている人たちには、もっとこの作品を読み込んで、お兄さんと幸というふたりのこと、ふたりの心、ふたりの世界をちゃんと見てあげて欲しいなと思います。

 

そうじゃないと、結局どんなことだって本質は見えないし、盲目な評論家の言葉なんて誰にも響きませんから。

 

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著者:はくり
出版社:スクウェア・エニックス
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