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「ホリエモンは金の亡者」と未だに思ってる人はタイトルを音読して欲しい『ウシジマくんvs.ホリエモン 人生はカネじゃない!』
ウシジマくんvs.ホリエモン 人生はカネじゃない!
著者:堀江 貴文
出版社:小学館
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「男が老婆を毒で殺した」

 

これだけを書けば、男は悪人だとしか思われないだろう。

しかし、男が医者で、老婆は余命いくばくもない不治の病で耐え難い苦痛を抱えていて、主治医である彼に安楽死したいと伝えており、そしてこれが安楽死の許されている国で起こったことだとしたらどうだろうか。

仮に、嘘偽りを交えなかったとしても、事実の切り取り方・伝え方次第で印象はいくらでも操作できる。

 

特に年配の方と話すと、「ホリエモン?あの金の亡者か」という認識の方は未だに多い。こうしてレビューを載せているマンガ新聞が、ホリエモンの立ち上げた物だということを知ると苦い顔をする人もいる。

堀江さんは漫画が大好きであるということを言うと「え、本当ですか?」と返されることもしばしばある。

 

ただ、それは仕方のないことであるとも思う。マスコミによって作り上げれたイメージを覆すのはなかなか難しい。

そもそも、マスコミを通してしかその言動を知る術もない人も多い。となれば、マスコミがある人物を悪意を持って報じれば、大多数の人にはそのような人物として認識されてしまう現実がある。恐ろしいことだ。

 

『稼ぐが勝ち』という著書もあり(そのタイトルは本人が付けたものではないとのことだが)、私自身も報道でしか堀江さんを知らなかった頃は「そういう人」なのかなと思っていた。

しかし、実際に著作物を読んだり話を聞いてみたりしたら、全く印象は変わった。堀江さんは、本当に大事なのはやりたいことの方であって、カネというのはあくまでもそれを実現するための道具に過ぎないと繰り返し繰り返し主張してきている。

 

私自身、そうした誤解を修正してマンガ新聞に入ることを決めた一つのきっかけは、堀江さんの『キャディ愛』という漫画のレビューだった。

今では私はマンガコンシェルジュを名乗って活動しているが、恥ずかしながら『GOLFコミック』というゴルフ専門誌に載っているこの漫画の存在は知らなかった。

 

堀江さんはこの作品を読んで、泣いたとまで書いていた。実際に『キャディ愛』を買って読んでみたところ「これを読んで泣いて、人におすすめするような人が世間で言われているようなただの悪人だとは到底思えない」と感じた。

 

堀江さんに関しては、『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』という代表的な著作において、自身のルーツの深い部分まで踏み入りながら、思考と思想の成り立ちを丁寧に書いており、この一冊を読むだけでも誤解の多くは解けるのではないかと思う。

ただ、それでも本を読まない人は読まないし、日頃の率直な物言いだけを見て判断基準にする人は依然として多いだろう。

 

そこに来ての、この『ウシジマくんvs.ホリエモン 人生はカネじゃない!』だ。

 

「ホリエモン? 金の亡者か」という人は、このタイトルをしっかり読んで欲しい。
人生はカネじゃない!」である。

 

更に、あとがきの最後の一文を引用させてもらおう。

「人生はカネじゃない。カネなどに執着せず、やりたいことのために、大胆に生きよう

むしろ、この本の中では堀江さんはカネにグリップされてしまう思考や人生を強く批判している。カネにグリップされた人生はつまらない、とも。

 

その最たる例が、本書でも多くを割かれて書かれている『闇金ウシジマくん』の「フリーエージェントくん編」のモデルとなっている存在のネオヒルズ族、いわゆる与沢翼氏たちだ。彼らこそ、まさしく金を儲けることが主目的となったビジネスを展開していた。

 

以前、研究のために彼らのメルマガや動画にも触れてみたことがあるが、堀江さんが言ってきているように「インターネットを用いて様々な分野に革命をもたらす」や、「誰もが手軽に宇宙に行けるようにする」といった、聞いただけでわくわくするようなヴィジョンはそこになかった。

 

超高級タワーマンションに住んだり、フェラーリを乗り回したり、美女をはべらせたり、ドバイで豪遊したり、そうした解りやすい虚飾の"成功"を目指して、大金を集金するシステムをやり方を工夫して作っていたに過ぎなかった。

 

ネオヒルズ族と一緒にされては大変困るということで、徹底して距離を置き、語ることすらあまりしてこなかった堀江さんだが、この本の中ではついにその辺りのことについても書かれている。

実際にネオヒルズ族に取材して「フリーエージェントくん編」を書いた、真鍋昌平さんのネオヒルズ族論評も端的にして痛快で必読だ。

 

闇金ウシジマくん』は、現代日本を描いたノワール作品としては最高峰である。圧倒的な現実社会の暗黒面が綿密な取材を通してこれでもかと描かれる。普段、接することもないような世界の負の面を垣間見せて学ばせてくれるという意味で、大変貴重だ。今、日本社会に生きる人は必読とも言える。生半可なフィクションでは届きようもないほどの凄みが『ウシジマくん』にはある。そんな『ウシジマくん』の登場人物たちの閉塞感や、未来の見えない状況に共感を覚える人も多いだろう。

 

本書では、『ウシジマくん』に登場するような不条理な借金からは法的な救済策を活用するなどして真面目に付き合わず逃げていい、本当に困った時は人を頼るべき、などそうした人たちが真に追い詰められる前に読んでおいて欲しいことも沢山書かれている。

 

「人を限界まで追いやるような環境が、まともであるはずがない。いつでも飛び出せる勇気を持ってほしい。そのために外の情報は、たくさん採り入れておこう」

 

特にこの節は多くの人に、とりわけブラック企業で疲弊して自ら命を断つような選択をしてしまう前に読んで欲しいと思う。目の前の不条理に生真面目に付き合うことはなく、生きてさえいれば、諦めなければ、少しの意志と勇気を持って行動し続ければ 人生を好転させていくことは必ずできる。

堀江さんの本は、色々なモノに縛られて前に進み出せない人の背中を前に押してくれる。日々を漫然と生きながら、漠然とした不安にとらわれている人には、大いに刺激になる一冊だ。

 

以前行われた堀江さんと真鍋昌平先生との対談も非常に面白いので、あわせて読むことを強くおすすめしたい。

 

>>『闇金ウシジマくん』フリーエージェントくん編について、堀江貴文が聞く!真鍋昌平-堀江貴文対談 Vol.1

 

文:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

 

 

闇金ウシジマくん(1) (ビッグコミックス)
著者:真鍋昌平
出版社:小学館
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ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく
著者:堀江 貴文
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キャディ愛 1 (ヤングチャンピオン・コミックス)
著者:沼よしのぶ
出版社:秋田書店
販売日:2013-10-11
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