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漫画賞審査員長に聞いてみた!時代を代表する漫画家への道のりは「賞への応募?」「持ち込み?」「ネット投稿?」(第一部)

多くの人の夢であり目標である職業の中の一つ、漫画家。近年、時代の変化につれて「漫画家への道のり」も多種多様に変化してきました。
本日は、1980年~2000年代にかけて『うる星やつら』『タッチ』『ラーメン発見伝』などの人気作品を手がけてきたベテラン編集者に、当時の話をお聞きしつつ、現代の漫画家を目指す人々に向けたインタビュー記事を、全三部に分けてお届けします。

 

漫画賞審査員長に聞いてみた!時代を代表する漫画家への道のりは「賞への応募?」「持ち込み?」「ネット投稿?」

 

>>第一部:あだち充、高橋留美子、作家の独創性が多くの読者を惹きつけた時代とは

>>第二部:娯楽から情報を得るものへ、時代の変化に合わせた「漫画」の作り方(8月23日15:00公開予定)

>>第三部:紙からネットの世界へ、発表する場が増えた「漫画」の未来はどうなる?(8月24日15:00公開予定)

 

インタビューさせていただいたのは、小学館の有藤氏です。

 

 

有藤 智文(ありとう ともふみ)
1983年、株式会社小学館に入社。「週刊少年サンデー」「ビッグコミックオリジナル」「ビッグコミックスピリッツ」などいくつもの編集部を経験し、「ビッグコミックスペリオール」編集長を務める。現在は小学館漫画賞の運営に携わっている。過去には高橋留美子先生、あだち充先生など有名作家を担当。数多くの人気作を担当したベテラン編集者。
2018年9月16日(日)に「京都国際マンガ・アニメフェア2018(通称・京まふ)」内にて、授賞式が開催される「京都国際漫画賞」審査員長。

 


 

当時の担当替えは1年に1回、2作品ずつ。

小学館の有名な少年誌・青年誌をほぼ経験されてきた有藤さんですが、一度経歴を整理させてください。

 

有藤 1983年に入社してすぐ週刊少年サンデーで高橋留美子先生の『うる星やつら』を担当しました。3年目であだち充先生の『タッチ』ですかね。

 

いきなりビッグタイトルですね。連載開始からの立ち上げに関わったんですか?

 

有藤 いえ、僕が入社したころは、すでにその2作はサンデーの看板作品でした。その後、1986年にビッグコミックオリジナルに移って、5年間で『釣りバカ日誌』『浮浪雲』『三丁目の夕日』とか、当時の作品は大体担当してましたね。

 

そんなに短期間で担当が変わるんですか?

 

有藤 そのころの小学館は1年に1回大幅な担当替えをしてました。ビッグコミックオリジナルは読者年齢も高くて、ベテラン作家ばかりだったので短い期間で回してたっていうのもあるんですかね。大体2作品ずつで、最後にまた『釣りバカ日誌』に戻ってきたりして(笑)

 

先生もまたお前か、ってなりそうですね(笑)その後は週刊ビックコミックスピリッツですか?

 

有藤 はい。スピリッツは長くて、8年くらいいました。その後またオリジナルに戻って、次に週刊ヤングサンデー。『海猿』とかが人気でしたね。

その後ビッグコミック(本誌)、また一度週刊ヤングサンデーに戻ってきて、最後にビッグコミックスペリオールです。

 

ようやく追いつきました。スペリオールは一番長かったんですか?

 

有藤 大体6~7年だったと思います。うち4年間編集長でしたね。

 

2007年というと、スペリオールでは『医龍-Team Medical Dragon-』の人気絶頂期でしょうか。

 

有藤 そうですね。他には『あずみ』『覇-LORD-』『味いちもんめ』『ラーメン発見伝』とか。色々ありました。

 

ありがとうございます。ここまでの中で、有藤さんは時代の節目に一風変わった新しい漫画に携わられてきたと思います。

週刊少年サンデー、週刊ビッグコミックスピリッツ、ビッグコミックスペリオールの3誌の時代に注目して、最後に現代の漫画についてをお聞かせください。
 

『タッチ』は少女漫画×スポーツ漫画のかけ合わせ

80年代前半、サンデーで連載されていた『うる星やつら』や『タッチ』は、それまでの少年・青年漫画にはなかった新しいラブコメの形を生み出した時代の変わり目だと思っています。
そのことはのちの2007年に連載が始まった『アオイホノオ』でも一部描かれていました。

 

▼その後、しばらく経つと▼ 

 

その頃、いったい何が起きたのでしょうか?

 

有藤 僕はどちらかというと、マガジンやスポ根とか読んで育ってきたんですよね。実は、サンデーは唯一ほとんど読んだことがなかった漫画雑誌でした。

 

そうなんですか(笑)

 

有藤 そして1983年に小学館に入社して、サンデーを読んでみてもやっぱり面白くないわけですよ。要するにスポ根、『ドカベン』の水島新司先生や『巨人の星』の梶原一騎節、みたいなものがずーっと染み付いてるわけですから。
あだち先生の作品だと、そういう(スポ根)要素をごっそり抜いた作品なので、なかなか最初は馴染めなかったですね。

 

画面の色も白いですしね。

 

有藤 高橋留美子先生も一話完結のとても洒落たコメディという、自分のなかには全然ないジャンルだったので「(入社当時は)これが主流なのか」って驚きました。線も太くて汗や血、涙が飛び散るような漫画とは真逆の作風だったので。なぜ絵柄がそう変化したかは僕も謎の部分があります。

 

なるほどです。では作家に注目してみると、あだち充先生や高橋留美子先生はどうやって出現したのでしょうか?

 

有藤 実は、あだち先生は少年誌のサンデーで元々熱血漫画を連載されていたものの、なかなか芽が出なかったんです。それで一時期少女誌の方に行かれて。『ああ!青春の甲子園』や『夕陽よ昇れ!!』『陽あたり良好!』などを描いて、力をつけてから少年誌の方へ戻ってこられました。

 

 

何がきっかけで少女誌に行くことになったんですか?

 

有藤 少年誌の時の担当編集者が異動で少女誌へ行ったり、少年誌へ戻ってきたりされてたんですよね。人がいい担当だったので(なかなか芽が出なかった)あだち先生を使いたがったんです。それでその人に「少女漫画をやってみないか」と誘われて、移ったみたいですね。
その後、少年誌に戻って『ナイン』や、少女が主人公の『みゆき』で人気が一気に弾けて、『タッチ』を連載されました。

 

あだち充先生や担当編集者のお人柄が生んだ経歴だったわけですね。

 

有藤 少女漫画で培ったノウハウを少年誌のスポーツ漫画に取り入れて、凱旋をはたした形です。

 

「少女漫画×スポーツ漫画」という、あだち充先生が生み出した新しいジャンルの登場ですね。

 

誰もが認める天才漫画家・高橋留美子

高橋留美子先生も、当時からすると一風変わった漫画を描かれていましたよね。『うる星やつら』の内容や設定の斬新には驚きました。不思議な人と言いますか…。

 

有藤 高橋先生は大学生の時に『勝手なやつら』で小学館新人コミック大賞を受賞して、そのまま『うる星やつら』に形が変わって連載が始まりました。小学館の完全な秘蔵っ子というか。

 

生え抜きみたいな感じですね。鮮烈なデビューです。なぜ最初からあんな他にない漫画を書けたのでしょうか?

 

有藤 高橋先生は自分でも未だに中二病とか言ってるんですけど、オタク性というか…(笑)中・高とずっと漫画を描き続けてきたらしいんですね。友達や同級生にもプロの漫画家もたくさんいる。
そういう環境で、少女漫画よりは少年漫画をずっと読んできた人でした。

 

だからサンデーに応募されたんですね。

 

有藤 いや、サンデーは好きな雑誌だったみたいですけど、絶対にサンデーでという強い思いはなかったみたいです。自分でも自分が描いている漫画が「新しい」と思っていたとは思わなかったんじゃないかな。

 

なるほど。今は珍しくないですが、当時は少年漫画を読む女の子って珍しいですよね。

 

有藤 そうですね、女性漫画家で少年漫画を描いている人はあまりいませんでした。『うる星やつら』は今でいえばSFラブコメ、異星人と恋をするって、ジャンル的にはやっぱりオタクですよね。

 

高橋先生が色々と漫画を読んでたのはわかるんですが、なんのオマージュかと言われると思いつかないです。女の子は可愛いし、おしゃれというか格好いいと言うか。

 

 

有藤 とにかく高橋先生は可愛い女の子が好きなので、それを描きたい!というのが第一にあったんじゃないでしょうか。

 

女性作家としては珍しいですよね(笑)

 

有藤 男性キャラでいうと、単純なイケメンや二枚目は描いてないですからね。『犬夜叉』ぐらいからじゃないですか、顔も性格も格好いい男が出てきたのは。でも女の子はずーっと可愛い(笑)

 

作家のこだわりがにじみ出ているというか、高橋留美子先生は独創性が強い天才肌の作家だったんですね。

 

「週刊少年サンデー」のあと、有藤さんのキャリアでいうと「スピリッツ」や「スペリオール」などの青年誌に異動されたわけですが、時代的の流れ的にも当時は漫画=子どもが読むもの、ではなく大人も読むものへ変化してきたと思います。

次はその部分に注目して、お話を聞けたらと思います。

 

漫画賞審査委員長に聞いてみた!時代を代表する漫画家への道のりは「賞への応募?」「持ち込み?」「ネット投稿?」

 

>>第二部:娯楽から情報を得るものへ、時代の変化に合わせた「漫画」の作り方

>>第三部:紙からネットの世界へ、発表する場が増えた「漫画」の未来はどうなる?

 

(取材:菊池健/構成:駒村悠貴

 

 

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▼漫画家を目指すみなさまへ▼

京都国際マンガ・アニメフェア2018(通称:京まふ)内で開催される「マンガ出張編集部」に、ぜひご来場ください!

 

当イベントは、マンガ出版社の編集部を招き、マンガ家志望者が自分の作品を持ち込む機会を創出します。
※事前申込制・原稿持込者は入場無料

 

開催日時

2018年9月15日(土)11時~17時

 

会場

みやこめっせ(京都市勧業館)
京都市左京区岡崎成勝寺9-1

<電車>
・地下鉄東西線「東山駅」より徒歩約8分
・京阪電鉄「三条駅」・市営地下鉄「三条京阪駅」より徒歩約16分
<市バス>
・「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車徒歩約5分
・「東山二条・岡崎公園口」下車徒歩約3分
・「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車すぐ