TOP > マンガ新聞レビュー部 > ロシアW杯、注目はスペイン代表イニエスタ。寡黙で静かな天才プレイヤーが日本にも。自己紹介をお願いします。『ボクは岬太郎』。

ロシアW杯、注目はスペイン代表イニエスタ。寡黙で静かな天才プレイヤーが日本にも。自己紹介をお願いします。『ボクは岬太郎』。
ボクは岬太郎 高橋陽一短編集 (ジャンプコミックスDIGITAL)
著者:高橋陽一
出版社:集英社
販売日:2017-09-01
  • Amazon
  • Amazon

 

世界中のサッカーファンがその去就を注目していた。FCバルセロナのアンドレア・イニエスタ選手の行先だ。クリスティアーノ・ロナウドやメッシ、ネイマールのように、サッカーファンでなくても知られたスーパースターではないかもしれない。

 

彼らが名を連ねるヨーロッパ年間最優秀選手の称号「バロンドール」にふさわしい未受賞者を選べと言われたら、イニエスタをあげる人間は世界中にいるだろう。派手なゴールやパフォーマンスではないかもしれないが、そのプレーはサッカーファンの憧れであり、サッカープレイヤーの目標でもある。

 

そのイニエスタがロシアW杯後、Jリーグのヴィッセル神戸に来るというニュースは、日本のサッカーファンだけでなく、普段サッカーに興味のないひとたちにも知られることになった。YouTubeで「イニエスタ」を検索したひとも少なくないはずだ。

 

寡黙で静かな天才プレイヤーは、サッカー選手の模範でもあり、マネーフットボールと呼ばれるほどチームとの契約でのもめごとがここかしこであるなか、彼は一度たりともチームともめたことがなく、ライバルチームのレアル・マドリードの選手とトラブルを起こしたこともない。

 

最も主将らしくないと言われた男。イニエスタが体現する“バルサらしさ”。

 

真意は定かではないが、そのイニエスタが日本を選んだ理由のひとつに、日本が世界に誇るサッカー漫画『キャプテン翼』の存在があったことが大きく報道されている。イニエスタに限らず、『キャプテン翼』ほど世界中のサッカープレイヤー愛された漫画はないだろう。

 

そんなロシアW杯でも注目されるイニエスタに迫る天才プレイヤーが日本にも存在するのはご存知だろうか。名前を紹介しよう。『ボクは岬太郎』。

 

岬太郎(以下、岬くん)は、両親の離婚により画家の父親と子ひとりの父子家庭で育つ。日本中を旅する父親につき、転向を繰り返す。仲良くなってもすぐに別れが来てしまう岬くんの傍にあるのがサッカーボールだ。「ボールはともだち!」であり、ボールがあればどこでも、誰とでもともだちになれる。

 

キャプテン翼』の主人公、大空翼(以下、翼くん)のいる南葛小学校に転向してきた岬くんは、天才的なドリブルと、翼くんと息の合ったコンビネーション(ゴールデンコンビと言われる)で全国を制する。

 

自分で局面を打開してゴールを決めるより、ゴールにつながる決定的なパス(アシスト)を繰り出す岬くんに、自身のプレイスタイルを重ねたひとは多いのではないだろうか。私も岬くんに魅せられたひとりだ(三杉くんも好き)。

 

しかし、岬くんはシュートを打たないアシストだけの男ではない。いざというときはしっかりとシュートを決めることで、シュートが打てるから警戒した相手にアシストを決めることができ、アシストがあると思った相手を出し抜いてゴールを決められる。まさにイニエスタのようだ。

 

『ボクは岬太郎』は、全国大会優勝を飾った後、日本最高の山である富士山にチャレンジしようとした画家の父親(岬一郎)が、まだ富士山を描くには実力が足りないとの理由で、次の場所への転向することになる、岬くんの「その後」を追ったストーリーだ。

 

新しい場所でも、岬くんは仲間とサッカーボールでつながっている。誰からも愛される性格と、サッカーを愛する誰をも尊重する性格とプレイスタイルは健在だ。11人しかいないサッカーチームに岬くんが入ったことで、教育ママゴンのもとで塾や模擬試験で練習を休まざるを得ない、サッカーが下手なミツルくんは排除される。

 

「今までは人数がたりないからいれてやってたけど、たまにしか練習にこないミツルはもう用なしなんだよ」

 

というチームメイトの冷たい言葉。そこに現れる教育ママゴン。

 

「いいからきなさい。サッカーなんてしてても、将来なんの役にもたたないのよ」

 

邪魔者がいなくなったと練習再開しようとするチームメイトを横目に、ミツルくんを心配する岬くんは、やはり優しい男なのだ。

 

岬くんの父親には、彼の才能を評価するひとたちがいる。それが下成さんや山村さんだ。日本中を旅して、いつか富士山にチャレンジしようとする父親に、彼らは芸術の都フランスに向かうことを後押しする。

 

最初は一人息子である岬くんのために断ったが、そこにひとりの女性が現れる。11年前に離れ離れとなった母親、山岡由美子だ。そして父親がフランスに渡る間、5年前に再婚した母親が引き取るというのだ。

 

心優しい岬くんは、これまでも父親に気を使いながら、勉強とサッカーを頑張ってきた。そして、父親が涙ながらに語った言葉にショックを受ける。

 

「太郎、ワシはおまえといっしょにいても、おまえになにも・・・なにも・・・してやることはできないんだ。本当になにも・・・・・・」

 

その気持ちを汲んでしまう岬くんは、横浜に住んでいる母親に会いにいくことを決断する。

 

話は変わって、岬くんが転向した西峰小学校と松浦小学校の試合。岬くんの活躍で前半終了時点で3対0。そのベンチにミツルがいた。自分の西峰小サッカー部の一員であるからと塾を休み、ベンチで応援していることを笑顔で受け入れていた。

 

後半開始、誰もが松浦小に勝ちたい。そして交代は嫌だという。そこで岬くんが手を挙げる。自分が変わるからミツルくんを出してあげようと。みんなが反対するなか、コージが変わることを申し出る。そしてミツルはピッチに立つ。

 

うまくプレーできないミツルに対して味方は落胆する。しかし、そこは岬くんだ。ミツルの圧倒的パスミスに追いつき、ナイスパスにしてします。そしてピンポイントのセンタリングに、ミツルは眼鏡を飛ばしながら(眼鏡の着用は認められてません)頭から飛び込むダイビングヘッドでゴールを決める。喜ぶミツルを見てほほえむ岬くん。素晴らしシーンだ。

 

夜行列車、横浜に向かう父親と座席で眠る岬くん。そして一枚の写真のなかだけで見てきた母親の姿を見た岬くんは、父親に言う。

 

「いこう とうさん」

 

「もういい いこう」

 

「ボクもフランスへいくよ」

 

「だって・・・だって ボクは岬太郎だもん。山岡太郎じゃない」

 

「『ボクは岬太郎』だもん」

 

ほほをつたう涙と笑顔の岬くん。19××年夏、岬くんはフランスへわたる。

 

キャプテン翼』ファンであれば、その後、フランスでの岬くんの活躍、その後の彼のサッカー人生はご存知のことだろう。

 

イニエスタと岬くん、二人はいつまでも私のヒーローだ。