TOP > マンガ新聞レビュー部 > もつ鍋を食べたらヒトの歯が出てきたときの恐怖『うなぎ鬼』

怖いって何だろう?
面白いって何だろう?は、何度となく編集者として自問自答していた。
でも、怖いって何だろう?は、したことがなかった。
『うなぎ鬼』は、とにかく怖い。
『闇金ウシジマくん』の日本の闇社会って怖いよね、という怖さとも全く違うし、『アイアムアヒーロー』とも違う。
あえて言うなら『ドラゴンヘッド』を読んでいた時に感じたゾクゾク感とちょっと似ている。
本は、一人で読んで、思索に耽るのもいいが、その内容について誰かと気軽に雑談をするのも楽しい。
このようなレビューではなく、マンガについて語り合う場を作ろうと思って、僕は「マンバ」というサービスを始めた。
エンジニア達が、サービスを作りながら、自分たちでもマンガについて会話をしている。
『うなぎ鬼』がとにかく怖いと、みんな言っているのだけど、どう怖いかを教えてくれなくて、僕も作品を読みたくなってしまった。
で、読んだら本当に怖かった。
世の中には怖いことはたくさんある。
戦争もテロも殺人も強盗も怖いけど、それをただただ描いただけど、その怖さは伝わってこない。
どれだけ、本当にあることなんだよと説明されても、全部が他人事で、怖さにはつながらない。
妄想を止めることができなくなると、怖さを止めることができなくなる。
すべてが自分の妄想を補強する情報に見えてしまって、どんどん妄想が膨らんでいく。
この箱の中にはいっているのは、「うなぎ」ではなく、人間の死体なのではないか?
この妄想から主人公の倉見たちは、逃れることができない。
「死体なんて自分には関係ないと思ってるでしょ?
死体はもともと人間なんですよ
人間がいればその数だけ死体が出るんだ
それぐらい日常的なものなんですよ」
恐怖を感じている町でもつ鍋を食べているとなぜか人間の歯が出てくる。
そのことを言うと、その店の客は、みんな黙ってこちらを見てくる。
本当に牛のモツなのか、人間の内蔵ではないのか?
主人公だけでなく、読者もそんな妄想をしはじめ、一緒に恐怖を味わう。
この作品を読むと、しばらくはもつとうなぎを食べる気にはならないはずだ。
本作は全3巻で完結している。
3巻で救いがある感じになっていき、気持ちよく読み終えることができたかと思うと、最後の数ページで、ザワザワとする恐怖へと突き落とされる。
読後感も最悪である。
でも、この怖さ、味わってほしい。
そして、『うなぎ鬼』は原作付きなので、原作の小説も読んでみたくなった。
すごくリアリティがあったので、どこかを取材して書いたのかと思ったのだけど、すべて想像だという。
でも、豊かになった日本でも、このような社会はまだ残っていそうで、フィクションだよねで片付けられないから、恐ろしい。
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