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電子書籍ができること『重版出来!』11巻

遂に電子書籍の話がキター!!!!

 

僕はいつもレビューを書く時、必ずシリーズの第1巻をオススメして、できる限り第1巻の話の内容とコマだけを使用して書くようにしてるんですよ。

 

だって、せっかくレビューを読んでくださったキトクな方には、新しい本に出会って欲しいじゃないですか?

 

そこであんまりネタバレされるより、第1巻の内容で面白いと思って読んでたら、どんどん新しい展開が出てきてワクワクドキドキする方が楽しいと思うんですよね。

 

でもね、今回だけはゴメンナサイ!

 

まさかの11巻目をオススメさせていただきます!

 

だって電子書籍の存在意義とか、電子書店の叶えたいことが全て描かれてるんですもの!

 

 

 

 

この作品を知らない方のために簡単に説明しますと、出版社のマンガ編集部に新卒で入った新人の黒沢心を主人公に、マンガ家・編集者・営業・宣伝・製版・印刷・デザイナー・取次・書店員といったマンガに関わる人たちの熱い努力で、マンガって出来てるんだよっていうマンガ業界の全てが詰まった(?)お話で、2016年にはTVドラマにもなった名作です。

 

ちなみに「重版出来(じゅうはんしゅったい)」というのは、初回販売時に刷られた部数を超えて追加で刷られることを指す言葉で、それは人気があったり読者に支持された作品だという証明や栄誉であり、出版業界に関わる人はみんな大好きな言葉です(笑)

 

僕も昔は紙の書店にいたので、オススメの本がたくさん売れて重版がかかると、自分のことのように嬉しかった記憶があります。

 

ただ、当然どの作品も全て重版出来の栄誉を受けられるワケではなく、単行本が売れなければ作品が打ち切られ、重版がかからない以上市場に出ている部数しかその本を読める人がいなくなり、更には絶版になる作品も世の中には多数存在します。

 

※ちなみに絶版とは重版予定がないだけでなく、出版社が版権も放棄したものを指します。

 

なので絶版になると一般市場では流通しなくなりますし、将来的に人気が出たとしても後から重版がかかることもありません。

 

但し、著者などが出版権を買い取っていれば、自費出版や別の出版社から出ることもあります。

 

電子書籍ができること

 

基本的にこの作品では紙の本(雑誌・単行本)と紙の書店を中心に描かれているんですが、第11巻では電子書籍の話が大きく取り上げられています。

 

マンガ家府川悠はデビュー2作目で描いた『あに丸ジャンクション』の売上が厳しく、2巻で打ち切りになってしまったことで自信を無くしてしまい、新しい作品が描けなくなってしまった。

 

そんなある日、とある電子書店が特集を組むために選んだ10作品の中に『あに丸ジャンクション』が選ばれ、さらに絵力があることで特集を推すためのバナーにもコマが使われることになる。

 

その結果、今まで紙では読んでいなかった新しいユーザーが面白さに気付き、SNSで話題になることで他の電子書店も追随してバナーや特集でどんどんプッシュされ、一気に人気作品になった『あに丸ジャンクション』は遂に紙でも重版されることになった。

 

このことが府川の自信にも繋がり、遂に府川はスランプを抜けて新しい作品を描き始めた…

 

 

これこそ!これこそが僕が電子書店に移った理由なんですよ!

 

マンガや書籍はものすごい数が日々出版されるので、書店員ですら全部を読むことができません。

 

さらに、紙の店舗には物理的に置ける量に制限もあるし、部数に限りがある分当然全ての本を入れたり、売れると思っても山積みにできるほど入れられる作品なんてほんの一握りなワケで、本当にその作品を面白いと思ってくれるユーザーさんに知ってもらう前に作品が打ち切られてしまうことが本当に多かったんです。

 

でも、電子書店ならそれこそ全ての本を置いておけるし、在庫量も無限に持てるし、古い作品だって打ち切りになった作品だっていくらでも推せるんです。

 

しかも、紙の書店はどうしてもその店に来れるユーザーさんにしか訴求できないですが、電子書店はネットさえ繋がっていれば全国のユーザーさんに届けることができる。

 

紙の書店と電子書店では売り方も全然違うので、見せ方ひとつで今までその作品を知らなかったユーザーさんに知ってもらうこともできる。

 

モチロン紙の書店が持つ意味や価値を否定するつもりもないですし、むしろ僕は未だに紙の書店にもしょっちゅう通っています。

 

まだまだ電子書店が紙の書店に負けているなと思うこと、紙の書店ができることが電子書店ではできないというジレンマもたくさん抱えています。

 

でも、電子書店だからこそできることの可能性と、その先に叶えたいことが、この11巻に全て描かれていて、読んでて泣きそうになりました。

 

全ては作家と作品のために

 

書店員でいると、当然普通の人よりはたくさんの本を読むワケで、本当に面白い作品は過去にもたくさんあるし、さらに日々新しくたくさん生まれてきているのを肌で感じます。

 

でも、どの雑誌や媒体に載っていたとかいつ載っていたとか、環境やいろんな要因で埋もれている作品もたくさんあります。

 

だからこそ、全ての本を並べられていることに意味があると思うし、あらゆるユーザーさんにアプローチできることには、とても大きな価値があると思います。

 

打ち切りになろうが作家さん自身の自費出版だろうが、売り続けられさえいればその作品は作家さんの血肉になり、作品を生み出し続けるモチベーションの糧になる。

 

まだまだ作品の連載が続くかどうかは紙の部数で判断される状況ですが、このまま電子書籍がもっと伸びていけば、紙だけじゃなく電子の販売部数によって連載継続にできるようになるハズ。

 

そう信じて、僕ら電子書店員は今日も売り場作りに精を出しています。

 

もしまだ電子書籍を読んだことがない方がいたら、ぜひ一度そんな書店員の作る売り場にも足を運んでみてもらえたら、とっても幸せです。

 

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重版出来! (11) (ビッグコミックス)
著者:松田 奈緒子
出版社:小学館
販売日:2018-05-11