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NHK朝ドラで話題の『いつもポケットにショパン』って、どんな作品?→「傑作です」

NHKの朝ドラ「半分、青い。」でくらもちふさこさんの作品が登場しますね。
ファンからするともう震えが止まらないくらい嬉しいです。

 

いつもポケットにショパン 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
著者:くらもちふさこ
出版社:集英社
販売日:2014-08-08
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『いつもポケットにショパン』は、音楽学校に通うピアニストの娘・麻子の物語です。小学生のころ、麻子のあとをくっついて歩いていた少年・季晋(としくに、あだ名はきしんちゃん)。一見、泣き虫で甘えん坊に見えるきしんちゃんの真の姿を知っているのは麻子だけ、と2人は深い信頼と友情で結ばれていました。このあたりもめっちゃ萌えですよ!

きしんちゃんのおかあさんはふっくらしていてとても優しくて、ロクに口も聞いてくれない麻子のおかあさんとは大違い。麻子はむしろきしんちゃんのおかあさんになついていたほどです。

 

ところが中学に上がるとき、きしんちゃんはドイツ(西ドイツ!)に留学してしまいます。そうしてネットもない80年代のこと、すっかり音信不通になってしまうんです。きしんちゃんはどうして麻子に連絡をくれないのだろう?

 

麻子が高校に上がると「麻子のことはなんでも知っている」イケメンの上邑さんが麻子の通う音楽学校に転入してきます。どうして彼は麻子のことをこんなにも知っているの? 

 

1巻はその後の展開の種まきで、もう謎の嵐です。きしんちゃんと麻子の関係や、上邑さんの葛藤や、謎だったこと、ちょっとした会話、すべてが綺麗に回収されていきます。

 

くらもちさんの作品の魅力は「生活の隣にある物語」を描くところです。世界的なピアニストを母親に持つ麻子は、そのプレッシャーに苛まれて生きています。若いうちは自分の拠り所がわからなくて、誰かのマネをしてみたり、自分にないものに憧れてみたり、どうしても自分自身が持つ輝きに目がいかないものです。そういう苦しさを知っている人は、音楽に取り組んだことがなくても、きっと麻子に共感できるはずです。

 

そして、自分が見ていた幸せなものが、実は見たままではなく悪意に満ちていたとしたら……? 仲良しに陰で悪口を言われていることがわかったり、付き合っている彼に浮気をされていたり、結婚していた夫がよそで子どもを作ったなんて話も周囲からボロボロ聞くなあ。そういう、信じていたものが目の前でガラガラと崩れ去るときってありますよね。どうしてこんなに嫌な目にばかり遭うんだろう、何もかも捨ててしまいたい……。

 

麻子はまた自分の母親ともうまくいきません。冷たくて、愛情がなくて、冷徹な母親。人を見る目は、経験でしか養えないんですよね。自分のキャパシティが小さければ、その範囲でしか人を理解できない。麻子が母親を冷徹な人だと思うのは、麻子が未熟だったからです。音楽と向きあうことで少しずつ扉を開けていく麻子は、見えるものすべての色が変わって見えるようになるんです。 母親がどんな人なのかは、麻子が成長するにつれわかっていきます。

 

2巻以降はずぅっと喉の奥が熱くて苦しくて、ボロボロ泣いちゃうんですよ。読むたびに毎回!

 

単なるスポ根(音楽ものだから音根?)ものじゃない、単なる片想いや失恋の物語でもない。登場するのは、ひたすら不器用で、葛藤していて、悩んでいる人たちなんです。でも別に重くないの。ああ、自分もこんなに不器用だけど、それでいいのかな、みたいな気になります。ホントに『いつもポケットにショパン』はどこを取っても文句のつけようがない作品です。

 

Youtubeに「いつもポケットにショパン」セットリストがいくつもあるので、聴きながら読むといっそう臨場感たっぷり!

 

そしてくらもち作品のもう1つの魅力。登場する男子がめっちゃくちゃかっこいいんですよ。手首や肘、鎖骨や指の関節といった男性らしい骨っぽさを表現するのがとてもうまい。いつも冷静で、キレがよくて、ユーモアのセンスが抜群にある。でもふとした弱さも持っている……かっこいいに決まってるじゃないですか! で、主人公に別に甘くないんですよね。クール男子の元祖を描いたのはくらもちさんだという話ですよ。

 

少女マンガは、心の機微だとか言葉の裏だとか、コミュニケーションをテーマにしたものが多いです。だから少女マンガをたくさん読む男子はモテるんです(当社調べ)。女がどんなことを考えているのか、女の視点でリアルに語られてるのだから、女心がちょっとわかるようになるようです。少女マンガをたくさん読んでる男子とは話しやすいんですよね。

 

ちなみに、『A-Girl』という、作中にいわゆる読者が好きそうな男子がひとりも出てこない作品があります。

 

A-Girl 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
著者:くらもちふさこ
出版社:集英社
販売日:2013-11-08
  • Amazon

 

なんの悩みもトラウマもない単なる遊び人のイケメンと、卑屈ですぐ暴力振るう(当時はDVなんて言葉はなかったんです)クソ男。それにひたすら尽くす女子。犬のような年下系が好きな和久井には、キャラにイマイチのめり込めない作品なのですが、ある意味、男性に読ませたら喜ぶ作品かもなあ。