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『じみへん』中崎タツヤとのたった一度の打ち合わせ場所は◯◯◯だった。

マンガの打ち合わせは、様々なところで行われる。

『宇宙兄弟』の場合は、NASAの食堂や、無重力を経験するためにいった名古屋の飛行場でも行ったことがある。

どんなことでもマンガのテーマになりえるから、当然といえば当然だ。

 

でもやっぱり、ほとんどの打ち合わせは、喫茶店か事務所で行われる。

はじめて会うときは、尚更だ。

 

 

じみへん(1) (スピリッツじみコミックス)
著者:中崎タツヤ
出版社:小学館
販売日:2015-07-10
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先日、スピリッツでの長期連載が終了した『じみへん』の中崎タツヤさんと一度だけ打ち合わせをしたことがある。

 

新人編集者の時代に、学生時代から大好きだった中崎さんに手紙を書いて、打ち合わせをお願いしたのだ。

作品に引っ越し好きと出ているから、都内でないことは予想していたが、提示された場所は、完全に予想外だった。

 

「岡山の競輪場でなら会うよ」

 

そう言われて、僕は岡山の競輪場で中崎さんに会った。ちょっとだけ僕も賭けたと思うのだが、結果はどうだったかは覚えていない。

 

中崎さんは、作品のイメージ通りの方で、作品の話をどれだけしても

「早く仕事を辞めたい、のんびりしたい、新しい仕事はしたくない」というばかりで、仕事を頼むことはできなかった。

 

『じみへん』の魅力は何か?と聞かれたら、答えるのが難しいのだけど、その適当感とどーでもよさが、僕は大好きだ。

だから仕事をどれだけしたくないかをだらだらと語られても、作品通りすぎて、逆に気持ちよかった。

 

 

スピリッツの黄金期は、面白いストーリーマンガがたくさんあったが、同時にギャグマンガも冴えていた。

吉田戦車さんの『伝染るんです。』や、中川いさみさんの『大人袋』と『じみへん』があった時が、まさに黄金期だったように思う。

 

吉田さんと中川さんの作品は、シュールなギャグへの挑戦といったものを感じたが、その中でも『じみへん』は何も頑張らない、脱力したどうでもいい感じがあり、それが僕は何とも好きだった。

 

『じみへん』は、本気で読むというより、トイレで読んだり、あまりにも疲れすぎていて、何も読みたくない時に読むのにぴったりだ。

でも、同時に発想が自由なので、ハッとさせられるときもある。

 

僕は、「信頼」という言葉を、『じみへん』を思い出さずに読むことができない。

 

トイレでお尻を拭いた時に、トイレットペーパーを確認しない人のことを、勇気ある人と言いたい。

ウォッシュレットを使った後に、トイレットペーパーを確認しない人のことを、信頼する人と言いたい。

 

というようなことを、登場人物が、急に言う回があった。

確かに、どちらも勇気と信頼がありすぎだと思う。(笑)

 

 

今回、この話を見つけようと思って、『じみへん』を読み直していたのだけど、途中からなかなか見つけれず、必死になって探していた。

それで、必死に『じみへん』を読むのは、なんか間違っている気がして、探すのはやめた。

 

だから、信頼のエピソードは、僕の記憶違いかもしれないけど、あった気がする。

本棚にあるとなんか心が休まる、そんな作品だ。

 

 

20世紀のじみへん (小学館文庫 なF 1)
著者:中崎 タツヤ
出版社:小学館
販売日:2012-06-15