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ナイチンゲールが主役の熱すぎる人間賛歌!『黒博物館 ゴーストアンドレディ』

 

―――あなたが「ナイチンゲール」と言われて思い浮かべるものはなんですか?

クリミアの天使?

看護学校の設立者?

それとも『Fate/Grand Order』の婦長でしょうか?(宝具演出がめっちゃ好きです)

 

…すみません。多少コアなネタをぶち込んでしまいました。藤田和日郎先生が描く『黒博物館 ゴーストアンドレディ』は、「近代看護教育の母」とされるフローレンス・ナイチンゲールの生涯をベースにした伝記アクションとなっています。

非常に魅力的な内容の今作、中身をちょっとだけ紹介させていただければと思います。

 

 

どんな作品?

そもそも『黒博物館』とは何かというと、『うしおととら』等で有名な藤田和日郎先生によるシリーズ作品の名称で、19世紀イギリスの史実を基盤としたダークファンタジーのことです。(今回紹介する『ゴーストアンドレディ』とは別に『スプリンガルド』という作品も単行本でリリースされています。こちらも面白いので是非!)

「“物語の快楽”を圧縮・沸騰させた…」とマンガの帯にあるように、少ない巻数でもしっかり感動&興奮できる逸品であり、この充実感はなかなか目を見張るものがあります。

 

今作『ゴーストアンドレディ』は、王立劇場に出没する幽霊「グレイ」と、前述した「ナイチンゲール」の出会いから始まります。

「…お願いがあります。私を取り殺してください。」

開口一番、グレイにそう告げるナイチンゲール。彼女を取り巻く最初の「絶望」とは一体何なのか?

家族との軋轢を乗り越えて、看護の道を突き進む彼女を待ち受ける運命とは?

激動の人生を生き抜いたナイチンゲールとグレイの旅路を、是非その目で見届けていただきたいと思います。

 

『ゴーストアンドレディ』のここが好き

◆胸熱展開のオンパレード

この作品は歴史劇であると同時に、チャンバラやスーパーナチュラルを取り入れたファンタジーでもあります。ヒトの悪意が<生霊>として具現化したり、それらの霊がバトルを繰り広げたりもします。(ジョジョのスタンドバトル的なイメージです。)

霊たちのアクションももちろん見所ですが、それよりなにより私の胸を熱くさせてくれるのは、人間たちの意志の力。(これはまさに「人間賛歌」と呼ぶにふさわしいッッッ!!!) 

名家の子に生まれ、将来が約束されていたにも関わらず、当時忌避されていた看護の道を突き進むナイチンゲール。家族の反対に遭おうとも、決して絶望することなく、彼女は意志を貫き通します。

「人を助けることの、どこがくだらない望みなのですか!?」

「事実を知ろうとせず破廉恥で卑しいものと決めつけ、その努力を歯牙にもかけず食料品の一室に押し込めるのはどうなのですか!?」

「お二人の感情と私の選んだ道はなんの関係もありません!私は私の道を早く突き進むべきでした!」

 

家族の反対、劣悪な環境での看護、銃弾飛び交う戦場の移動等々、様々な困難にも「絶望」せず立ち向かうナイチンゲール。実際の有名演目からセリフが引用された熱い会話劇も多く、グイグイ引き込まれてしまいます。

 

◆表情、特に眼の力強さ

表情の描き方、特に眼の描写が凄まじいです。藤田先生の熱量を直に感じる気がします。

ここから先は、私がこの作品を手に取った経緯の話になってしまうのですが…。この「熱量」が番組で取り上げられたのが、2015年9月放送のNHK Eテレ『浦沢直樹の漫勉 藤田和日郎特集』(http://www.nhk.or.jp/manben/fujita/)でした。

この番組内で『ゴーストアンドレディ』の制作秘話が続々と公開されたわけです。それまで藤田先生の作品はアニメ版『うしおととら』くらいしか触れたことがなかったのですが、この番組で一気に興味を掻き立てられ、Amazonでポチってしまいました。

番組内で印象的だったのが、藤田先生の表情描写へのこだわりです。第24話3ページ目に現れる宿敵「デオン」の表情(特に眼)は、「化け物っぽさ」を最大限引き出す出すために〆切直前まで推敲がなされていました。藤田先生が粘りに粘って表現したその圧倒的狂気、ぜひ実際に読んで確かめていただきたい!

 

おわりに

いかがだったでしょうか?これを機に一人でも多くの方がこの作品を手に取ってくださったら嬉しいです!時期未定ではありますが、おそらく今年か来年あたりには藤田先生の名作『からくりサーカス』のアニメ化も決定しています。そちらも楽しみに待ちましょう! では今月はこんな感じで…。