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レースで勝てなかった馬はどこへ行くの?本当に肉になるの?『元競走馬のオレっち』

競馬ファンとして20年生きてきました。強い馬はもちろん記憶に焼きつきます。

シンボリクリスエス、ディープインパクト、ウォッカ、オルフェーヴル。 しかし活躍する馬の影には、新馬戦、未勝利戦、いくらやっても勝てない馬たちがいます。
つまりそんなに稼げなかった馬たちですね。馬たちが「その後」どうなるのか、ちょっと知ることができる作品。それがおがわじゅりさんの『元競走馬のオレっち』です。本作品は馬の世界での『陰日向に咲く』ような作品です。 ほのぼのテイストでも経済動物としての馬の現実が惜しみなく描かれています。

 

元競走馬のオレっち
著者:おがわ じゅり
出版社:幻冬舎コミックス
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主人公/オレっち
サラブレッド/牡
父、母、兄弟ともにGⅠ馬。
超良血のエリート。鳴り物入りでデビューするも、フタを開けてみれば1勝もできないままひっそりと引退。根は素直だがイレ込みやすいところがたまにキズ。

 

うう・・・。プロフィールを読むだけでも心が痛い・・・。私も完全にオレっち側の人間だよ・・・。
物語はオレっちが一勝もできず、どこか別の場所へ連れて行かれるところから始まります。超良血馬なので、将来はダービー馬だなんて小さい頃から期待されていたオレっち。しかしまだ現状が変わっていることに気がついていませんでした。彼は乗馬クラブへ移送されていたのです。

 

(C)おがわじゅり/幻冬舎コミックス
(C)おがわじゅり/幻冬舎コミックス
(C)おがわじゅり/幻冬舎コミックス

(君の居場所はここじゃないとは・・・?)

 

馬というのはとても賢く、気位が高い生き物です。もちろん中にはぽわんとした性格の馬もいますが、元競走馬で良血馬のオレっちは、どうも現実がうまくわかっていないようです。
これは知り合いの乗馬主さんに聞いたのですが、その人の経験によると「馬というのはとても賢く、元サラブレットは自分のことをよくわかっていて低姿勢」「乗馬用に生まれてきた外国産馬は気位が高く、乗らせていただくという感」とおっしゃっていました。

 

速さを求めるのがサラブレッドの世界なら、乗馬の世界では品評会で競技会で成績をおさめられる馬になることか、乗馬初心者に乗りやすい馬になることが生きるために必要なこと。つまり「足の強さ・身体の丈夫さ」「気性の良さ」が大事となり、サラブレッド<乗馬用の品種の馬となるといえます。
『元競走馬のオレっち』ではサラブレッドだったオレっちが、自分のプライドとどう折り合いをつけて乗馬に適応していくかが物語の軸になります。

仕事ができなくなった馬はどうなるのか

『元競走馬のオレっち』では直接的ではないですが、馬がいなくなるシーンがあります。

(C)おがわじゅり/幻冬舎コミックス

これがどういうことを意味するのか、察しはつくとは思いますが、実際には情報が少ないので、競馬調教師の角居勝彦さんのインタビューを引用します。

 

日本で生まれる競走馬は年間約7000頭。華やかな冠レースの裏で、このうち約9割が勝てないことや、ケガなどで競争能力を喪失したことなどを理由に最終的に殺処分されるのは「業界の常識」だ。
JRAで言えば、原則3歳の秋までに1勝できなければ、競走馬は、地方競馬など別組織で活躍するなどのわずかな可能性を除くと、乗馬クラブなどに売却されていく。そこまでの流通経路は確実である。だが、日本の乗馬クラブの人口は正会員ベースでは10万人未満といわれる。一見のビジターも30万人ほどで、役割を終えた競走馬の「第2の人生」の職場としては、現状はあまりに小さすぎるのだ。

>>東洋経済オンライン「勝てない競走馬」はどうなるのか 日本一の調教師・角居師の「もう一つの挑戦」 より引用

 

サラブレッドとして生まれた馬の9割が殺処分となる現状を変えたくて、ホースセラピーを全国に広めるべく立ち上がった角居調教師の記事ですが、馬が経済動物だということを思い知らされます。とりわけ「速く走る」ことに特化して品種改良されたサラブレッドの足は細く、丈夫とはいえないものです。
名馬の血統を受け継ぐ牝馬ならば、その血統を活かして次の世代の子どもを生むために牧場に残れる可能性がありますが、勝てなかった牡馬の現実は、厳しいものです。
馬が乗馬クラブにもいられなくなるのも「カイバ代」を稼げなくなるからなのですが、物語のオレっちにも危機が訪れます。

(C)おがわじゅり/幻冬舎コミックス

(オレっちがどうなるかは読んでお確かめを)

 

ほのぼのタッチでのほほんと乗馬のお話をマンガ化されていると思いきや、現実を直視した話に引きこまれて一気に読みきってしまいます。

 

実は私がこの本と出会ったのは、乗馬クラブの体験乗馬待ちの時、待合室に置かれていたのがきっかけでした。何回も人の手で読まれてボロボロになったマンガに夢中になって、家に帰ってすぐに注文したのでした。
体験乗馬の時に「フサイチコンコルド」産駒の馬と出会って少し乗せてもらったのですが、乗馬クラブのスタッフさんによると「本当ははやく走れるから上級者用の馬として期待したんだけど、やる気がない」とのことでビジター用の馬になっているとのこと。「大丈夫かよ~」と、いまもちょっと心配になります。
 

馬を取り巻く環境は厳しいですが、それを支えている人たちは馬をこよなく愛している事に間違いはないので、馬の世界の光と影をあますことなく描く『元競走馬のオレっち』と作者のおがわじゅりさん。
毎年JRAの絵やグッズ制作に携わられていて、馬を身近なものになるように伝えられているので、これからも勝手に応援していきます!

 

オマケ→おがわじゅりの馬房

 

元競走馬のオレっち
著者:おがわ じゅり
出版社:幻冬舎コミックス
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馬のあるある4コマ。おちゃめで臆病でちょっとアホなお馬さんたちの日常です。

 

オレっち4コマ ~馬のあるある~ 元競走馬のオレっち (一般書籍)
著者:おがわじゅり
出版社:幻冬舎コミックス
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『元競走馬のオレっち』続き3作品です!

 

元競走馬のオレっち ~先輩はつらいよ!~編 (書籍扱いコミックス(レーベルなし))
著者:おがわじゅり
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元競走馬のオレっち ~ライバル現る?編~ (書籍扱いコミックス(レーベルなし))
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元競走馬のオレっち ~みんなの日常編~ (書籍扱いコミックス)
著者:おがわじゅり
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元競走馬のオレっち ~奮闘!誕生からデビュー編~ (書籍扱いコミックス(レーベルなし))
著者:おがわじゅり
出版社:幻冬舎コミックス
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