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最高の青春群像劇には、キャラクターたちのドデカイ化学反応が生まれる!モラトリアムファンタジー漫画『テンプリズム』~大人になりきれないあなたに捧ぐ!少年少女たちの濃密な世界。~

精神的な面で子供から大人へと変わる時期。それは人それぞれ違うと思います。

かくいう僕は、22歳で絶賛モラトリアム中でござる!

今回、そんな僕が紹介するのは、曽田正人の『テンプリズム』という作品。

 

 

テンプリズム[オールカラー版]1
著者:曽田正人・瑞木奏加 出版社:コルク 販売日:2014-08-29
 

 

本作は、デビューして25年以上経つベテラン漫画家の作品とは思えないほど、若い気持ちの宿った作品だ。

(僕の人生よりも曽田さんの漫画家人生の方が長いのに!)

まだまだ大人になりきれていない人や、自己形成に苦労した方にぜひとも読んでいただきたい。

 

ファンタジーであり青春群像劇である

主人公の十(ツナシ)は、亡国の王子であり、大きな謎の力を秘めている。そして、ツナシが骨(ぐう)の国というテクノロジーの力を持った大国と戦い世界を救うというのがだいたいのあらすじ。

 

しかし、この戦いの渦中にいるメインキャラクターたちは全員10代!

若いにもかかわらず、大きな力と権力を持った少年少女たちがそれぞれ葛藤を持ち、ぶつかりあってドラマが生まれていく。

お互いの言葉で感情や人生が揺れ動いていく彼らの姿を見ていて、モラトリアムの僕は猛烈に苦し楽しい気持ちになってくる。

本作は、文明と文明のぶつかり合いなど、大きなテーマを持っているが、それよりも僕は、魅力的なキャラクターを知ってもらえれば、読みたくなるに違いないと思う!

 

 

©曽田正人・瑞木奏加/コルク
 

 

今回ご紹介するのは、上記イラストの右側にいる3人の少年少女です!

 

1. 自他共に認める中身が空っぽの王子・ツナシ(主人公)

 

まず、本作の主人公ツナシは、潔い空っぽさなんです!

 

 

©曽田正人・瑞木奏加/コルク
 
©曽田正人・瑞木奏加/コルク
 

 

こんな空っぽな彼は、亡国の王子であり、とんでもない力を秘めています。

しかし、大きな力を持つゆえに、周りからの期待も高くなります。そして、大きな力は彼に葛藤を生み出すのです。

 

 

©曽田正人・瑞木奏加/コルク
 
©曽田正人・瑞木奏加/コルク
 

 

自分の目指すべきものがわからないにもかかわらず、誰にも止めることのできないような巨大な力を持った彼は、この力をどう活用していくのかーー。

 

ツナシにも、物事の考え方というものはもちろんありますが、目指すべきものが定まらないゆえに、他人の言葉に揺れ動かされ、人生に摩擦が生まれていきます。

これから彼がなにを目指していくのか、どういう答えにたどり着くのかすごく楽しみです!

 

2. 達成したいことがあるのに、実現する力がない無力な脇役アップン

 

アップンは、骨の国の脱走兵であり、育ての親と両親を骨の国に殺されています。

復讐をしたいと思っていますが、大国の力を前に何もできずに立ち止まっているのです。

 

 

©曽田正人・瑞木奏加/コルク
 
©曽田正人・瑞木奏加/コルク
 

 

しかし、ツナシの物事の考え方や大きな力に触れることで、次第に戦うことを決意していきます。これぞ群像劇の醍醐味!

それぞれに葛藤を持ったキャラクターたちにより、生まれる化学反応。

 

今後、無力な脇役アップンがどういう成長を遂げるのか。持たざる者がどういうふうにして成長していくのかーー。

特に僕はアップンが大好きなので、彼の活躍を待ちたいと思う。

 

3. 圧倒的な力を前に、今までの努力が否定される美少女ニキ

 

ニキは骨の国で天才少女と呼ばれる存在です。

しかし、天才と呼ばれているにもかかわらず、彼女は過酷な生活をこなしていくことで、確実に力を身につけていきます。

努力をする真面目な女の子です。

 

 

©曽田正人・瑞木奏加/コルク
 
©曽田正人・瑞木奏加/コルク
 

 

努力とはなにか?成果はでたが、その本当の要因とはなにか?彼女は自分自身をどう分析していくのか。

その考え方の違いで、ツナシ勢力たちと摩擦が生まれていきます。

 

ニキは、自分自身とどう向き合っていくのか。ツナシやアップンとまったく違う考え方を持つニキがたどり着くものとは?

とにかくニキがかわいいから、彼女の動向がすごく気になっちゃいます!

 

葛藤を抱えた少年少女たちがたどり着くものとはーー。

 

このように『テンプリズム』では、様々なキャラクターたちが大きな渦の中で、それぞれの立場から抱えた葛藤が描かれていきます。

そして、彼らの葛藤が複雑に交差するとき、化学反応が生まれるのです。

 

その反応とは一体どのようなものなのか。

ファンタジーという巨大な世界観の中で描かれるリアルな少年少女の生き様は、確実に僕の人生の糧になる作品になっていく気がします。

僕もそろそろ社会人としての自覚を持たないといけないと思うのですが、まだまだ時間はかかりそうです。

 

ちなみにこの作品は、モラトリアムな人以外にも、腐女子の方も王道ファンタジーが好きな方も楽しめて、守備範囲が広い作品となっていますので、ぜひ!

 

(レビュアー:有馬)

 

 

テンプリズム[オールカラー版]1
著者:曽田正人・瑞木奏加 出版社:コルク 販売日:2014-08-29