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あなたの職場に最終学歴「中卒」の社員はいますか?真面目に3年働いても、大卒新入社員が上司になる現実『中卒労働者から始める高校生活』
中卒労働者から始める高校生活(1) (ニチブンコミックス)
著者:佐々木ミノル
出版社:日本文芸社
販売日:2013-05-29
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 高校進学率がほぼ100%(約97%)の日本において、最終学歴「中卒」者に門戸を開いている企業はどれくらいあるだろうか。実力があれば、技術があれば、情熱や根性があれば大卒も中卒も無関係かもしれない。では、実際にあなたの職場に最終学歴「中卒」の社員はいるだろうか。いるとすれば正規雇用者の何%くらいだろうか。

 

主人公の片桐真実(まこと)は、妹を養育するため中学卒業後、工場に就職した。母親を事故で亡くし、父親は刑務所。3年間真面目に働き、「指揮係」に昇進すると社長から告げられていた。学歴ではなく、自分の力でつかみかけたポジションだったが、大学を卒業したばかりの新入社員(社長の友達の息子)が指揮係を担うことになる。

 

ショックを受ける真実の耳に届いた言葉は、「まこ、中卒だしな」。

©佐々木ミノル/日本文芸社
©佐々木ミノル/日本文芸社

その頃、懸命に養育してきた妹の真彩が高校受験に失敗し、中学浪人になりかける。担任は真彩に通信制高校を進めた。パンフレットには「中卒者歓迎」の文字があり、真実は妹とともに東々第一高校通信制課程に入学する。

 

本書は、中卒労働者、心に傷を抱える令嬢、76歳のおじいちゃん、シングルマザー、いじめの経験を持つ男子と、多彩な登場人物一人ひとりが、私たちに“社会課題はここにある”と投げかけてくれる。

©佐々木ミノル/日本文芸社
©佐々木ミノル/日本文芸社

選べない成育環境、声に出せない性的被害、追い詰められたギリギリの生活、自らを守るために弱いものが弱いものを叩く心理。相互理解と支え合いによって維持される関係性は、私たちに「学びの場」の持つ力を示唆する。

©佐々木ミノル/日本文芸社
©佐々木ミノル/日本文芸社

中卒である自らを「底辺」と言い、そのコンプレックスに押しつぶされそうになりながらも、その一方で、学歴とは無関係の世界観のなかで解きほぐされている心、育まれていく友情、愛情。抱えたことを声にできず、関係性に消耗する自分に疲れたとき、そっと手に取ってほしい。