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感覚ではない、ロジックとしてのラーメン漫画『らーめん才遊記』

『らーめん才遊記』は、『ラーメン発見伝』の外伝的続編だ。これを聞いただけで、読むことを止めてしまうのはもったいない。世界には、「前作」を知らなくても楽しめる「続編」があるのだ。 これもご多分に漏れず、続きといってもラーメン屋が舞台ということと、一部のキャラ登場しているくらいで『らーめん才遊記』から読んでも全く問題ない。むしろ、この『らーめん才遊記』から読んだほうが、ある意味ラーメンオタの常識にとらわれず、スムーズに世界に入り込めるくらいだ。

 

ラーメンになんのこだわりも持っていない、私が言うくらいだから本当だ。

 

これだけマンガのあふれる昨今、興味のないジャンルは知らずのうちにパスしてしまう。実際そういうこともあるだろう。だからこそ、こういったマンガをレビューするサイトが存在し、あまねく世界の面白いマンガを紹介している。

実際、私は、ラーメンにこだわりが無いせいか、このマンガを”15年間 31冊”にわたり、まるっとスルーしていた。知ったきっかけは、ネット番組で岡田斗司夫さんが取り上げて、初めて興味を持ったに他ならない。それまでのこの面白さにも気づいていなかったのだ。てっきり私は、『食戟のソーマ』といった食バトル漫画か、『美味しんぼ』といった薀蓄マンガのラーメン版であると思い込んでいた。

恐る恐る試しに読んだ、第一話でもう虜になっていた。


◀あらすじ▶

就活生・汐見ゆとりは、行列店ラーメン清流房で食べたラーメンが、イマイチだとつぶやく。その一言に驚く店長の芹沢、疑問を聞こうとすると、彼女は慌ただしく去って行った。

 

そのラーメン屋の二階で店長芹沢は、フード・コンサルティング会社社長も兼ねていた。そこに、入社希望で来た女性は先程の女性。驚愕の再会をする二人。芹沢は、さきほどの理由を問いただすべく、「イマイチのラーメンを美味しくしてみよ!」と問いかける。汐見ゆとりは、大量のベーコンと玉ねぎを買い込み、慣れた手つきで刻み始め、サッと茹でた麺の加水率を言い当て、寸胴鍋に仕込まれた嫌がらせすら簡単に見抜く。

 

天然ボケのような言動とは裏腹に彼女の非凡なる料理センスに、驚きを隠せない一同。

―そして彼女は言う、ラーメンを初めて食べたのは、半年前だ。…と。


(C)河合単・久部緑郎/小学館

 

なんとなく絵柄が苦手というだけでこの漫画を読んでいなかったのだ。

ーー結果、ロジックと理屈バカの私には、ピッタリのマンガだった。

 

ラーメンと言うと、体育会系で黒Tシャツを着て、腕組みして居丈高な印象で、湯切りパフォーマンスが派手な、自らの感覚だけで商売をしているといった印象が拭えなかった。ところが、このマンガにあったものは、ひたすら緻密な論理だった。

主人公・汐見ゆとりの視点を通して学ぶ、飲食店のコンサルティング。素人の目から見ることができる、繁盛している店と駄目な店の違い、その疑問に汐見ゆとりが試行錯誤して、一から繁盛する論理を教え込む、ビルドゥング・ロマンだったのだ。これで男の主人公だったら、真面目一本槍で読んでいるこっちもキツくなってしまう。ある意味で男版は「美味しんぼの山岡士郎」がやっている。

 

しかし、汐見ゆとりは天才的な味覚と料理の腕を持ちながら、アホの子でどこか抜けている女の子。 時折みせるあざとさと空気を読まない発言が、作品にメリハリをつけ絶妙なサジ加減で読者を引きつける。また、『ラーメン発見伝』では悪役だったライバルキャラだった芹沢が、今回はラーメンの素人、汐見ゆとりを厳しく指導するコンサル会社の社長として登場する。 そのラーメン店にあったコンサルを、アクの強いキャラと相まって、より現実的な提案をすることで、困っている人をほっとけない素人 汐見ゆとりと全く異なる視点で、読者に斬新な気付きを見せていく。

そして河合単先生が描くラーメンは、目で感じるグルメだ。モノクロなのに風味や美味しさが伝わってくるのだ。

 

 

この漫画はラーメンを好きになるとかよりも、ラーメンのコンサルティングという立場を通じて流行り、生き残りをかけた飲食店のあり方や、世間で美味しいラーメンといわれる論理と売れる店作り、立地条件や集客理論など、

コンサルと知識と論理が身につく一石二鳥ならぬ一石三鳥のマンガなのだ。

 

これはラーメンだけでなくて、感覚だけで生きている人や、自分の論理を見直したい人にも、「気付き」を与えてくれると思う。

(C)河合単・久部緑郎/小学館

これを読んだ後、きっとラーメン屋が好きになる。

 

 

試し読みはコチラでできます。

 

☆こんな人におすすめ☆

【理屈・論理が好きな人、感覚的な商売ではなく商売のロジックを知りたい人、ラーメンの美味しさがいまいちわからない人、飲食店を始めようとしている人、飲食店で苦境に立っている人、ラーメンが好きな人】

 

らーめん才遊記(1) (ビッグコミックス)
著者:河合単・久部緑郎 出版社:小学館 販売日:2013-06-06
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>>最終巻『らーめん才遊記』11巻 

らーめん才遊記(11) (ビッグコミックス)
著者:河合単・久部緑郎 出版社:小学館 販売日:2014-07-14
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