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『1518! イチゴーイチハチ!』―挫折を知ったものたちの青春群像。これが本当の生徒会リアル!?

 小、中、高と学校生活を営むなかで、生徒たちが何らかの役割担う仕組みの一つに、◯◯係、□□委員会があった。極めつけは生徒の代表が選挙で選ばれて活動を行う「生徒会」があった。私はこの手の活動を敬遠していた。やりたくなかったし、はっきりいうならば、活動自体を馬鹿にしていた。お飾りの生徒会、名ばかりの自治、教師たちの雑用と。

 

だから、こんなことに何の意味があるんだ!?と…。ずっとそんな風に思っていた。

 

ところが、この1518! イチゴーイチハチ!を読んで、あれほど嫌だった〈生徒会〉にこそ、自分が求めていた学生生活と青春があったことに気づいた。

 

1518! イチゴーイチハチ!は、怪我で野球を諦め<松武高校>に入学した、新入生<烏谷>と、女生徒会長<亘環>に誘われて生徒会を手伝うことになった新入生<丸山幸>の二人が主人公。
生徒会に縁もゆかりもない二人の学生生活をとおして、生徒会活動を体感する。べつに生徒会だからといって、ラノベやマンガにありがちな執行部に学校を支配する力があるわけではなく、特殊な力を持った者たちが集う場所ではない。ただただ、普通の学生たちが、西へ東へ右へ左へ動き回り生徒会を切り盛りする話。ひたすら地味な行動だけどそこがリアル、これが本当の意味での生徒会の(お仕事)実録マンガだと思う。
生徒たちをまとめ、面白い企画を作り、教師たちと折衝し、雑用を裏方でこなし、数々のイベントで学校を盛り上げる。そう、自らが動いて、楽しい学校生活を作り出す。高校生活というもっともかけがいのない時間を、楽しさ、切なさ、万感胸に迫る思いを抱きながら成長をしていく、その姿を優しい眼差しで見つめる青春群像劇、それが『1518! イチゴーイチハチ!』なのだ。

 

…あれ!?コレって俺が送りたかった高校生活なんですけど…。

 

テクノミュージシャン 電気グルーヴの石野卓球が、自身の高校生活を振り返って「懲役三年」だと言っていた。
この言葉のままの学生生活送っていた私にとっては、漫画とはいえ、キラキラしている『1518! イチゴーイチハチ!』の学生生活に軽く嫉妬を覚えた。
与えられたことだけを粛々と行い、管理されていた中で、自主性はなくなっていたし、それは、きっと高校生活が終わってから訪れるものだと勝手に思っていた。ひたすら漫画をよみあさり、ゲームをして、アニメをみて、勉強もせずに自分の世界に籠もりひねた学生生活を送っていた。何も行動を起こさなかった、だからこそ充実した学生生活を送ることなどできなきなかったのだ。

(そして、その反省から大学のキャンパスライフはこんな醜態を繰り返すまいと、いろんなサークルに入ったりした、まぁ結局オタクサークルに入るのだが…)

国のお墨付き!?

この作品の作者は、相田裕。イタリアでの架空テロ組織とサイボーグ少女との殺伐とした戦いを画風で描いた『GUNSLINGER GIRL』とは全く異なる作風。トーンワークを抑えモノクロで表現するシンプルだけど味のある構成。物語自体に大きな起伏をおさえゆったりと進む、きっと長く読めるマンガであることは間違いない。この創作力の原型は、氏の同人誌『バーサス・アンダースロー』が原型となっている。なんと!驚くことなかれ、この同人誌「第142010年 文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品」だったりするのだ。

楽しさで押し潰す。

主人公の<烏谷>は、才能のある野球選手、故障して二度とマウンドと立てず仕方なく松武高校に通うことに。短いとはいえ人生の全てをかけてきた野球を奪われアイデンティティを喪失する、しかし野球への未練を断ち切ることできない。なぜならば、この松武高校に来た理由も、強い野球部があるから。あわよくば怪我を治ったら野球をしたいのだ。
<丸山幸(以下、幸)>は、過去に野球で輝いていた烏谷の姿を過去に見ていた。傷ついた烏谷をなんとかしたい幸。そこに、幸の中学校時代の先輩にして現生徒会会長<亘環(以下、亘会長)>が現れる。亘会長は、中学まで男子に混じり野球をやっていたが、烏谷と中学のリトルリーグで対戦しボロ負け。それ以来男女の歴然たる差を知り、野球を辞めることに。そして烏谷を今ここで見つけ、再会する因縁。

 

やりたいことを諦め妥協して高校生活を送っていた亘会長は、烏谷の気持ちが痛いほどわかる。野球をすることができなくても人生は終わらない、そんな妥協や挫折を知ったものだけがわかる、前への進み方。それは、学校生活の楽しさで今を押し潰すこと。

ここなら、この学校なら、きっと楽しい、きっと変われる。亘会長は、そんな未練たらたらの烏谷に引導を渡ため、野球勝負をすることを提案する。

 

――負けたら生徒会に入れ!という条件で。

 

(c)相田裕/小学館・ビッグコミックスピリッツ

その後、しぶしぶ生徒会の活動に参加していた烏谷だが、次第にその活動が彼の荒んだ心を癒やし、仏頂面をだんだんとほぐしていく、そしてよく笑うようになる。まるでマシーンが人の心を取り戻したかのように。そして、生徒会活動自体を前向きに楽しむように変わっていく、自分の知らない異なる価値に触れたときに新たな扉を開くことの喜びを知ったのだ。

 

 

そう、――野球だけが全てではない。

 

(c)相田裕/小学館・ビッグコミックスピリッツ

そして、幸との関係も二人三脚でいい感じに初々しく変化していく姿が描かれていく。二人は積極的に新しいものに挑戦し経験する、その姿勢が十代の特権かもしれない。そういった若者を受け止める度量のある松武高校、この環境が人を変えることを知っていたこそ亘会長は、烏谷を誘ったのだ。諦めきれなかった、かつての自分がそうだったように。

 

この漫画を読み、ページをめくるたびに思う、彼らの青春に紛れて一緒に楽しい高校生活の日々を送っているような気分になると。

そして、生徒会とか、委員会とかやっておけばよかったと。…こんな青春送ってみてぇ~!と心の叫びがとまらない。

社会に出たら、彼らのやっている生徒会活動の行為は、ままコミュニケーションの上位集団に位置する勝ち組状態だ。そう彼らは生徒会活動をすることでリア充になっているのだ。

 

 

この主人公たちはまだ年生。彼らが年生、年生となって成長していく姿をこの上質な物語を見届けたくないですか?

<第一話試し読み>

http://yawaspi.com/1518/index.html

<作者Twitter>

https://twitter.com/aidayu02

 

☆こんな人におすすめ☆

【高校生活に不満あり、キラキラした青春が欲しい人、生徒会活動の実録、リアルな裏方、何かを挫折をした人、何かを諦め切れない人、甘酸っぱい一年生を体験したい人、リア充】

 

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