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すえは、騎士か? 国王か? 究極のなろう系漫画『Landreaall(ランドリオール)』

さすがに現代世界にてトラックで轢かれて、何も取り柄のない主人公が転生するというテンプレは無いけれど、
この『Landreaall(ランドリオール)』の物語の進み方は、所謂なろう系のテンプレ通りの進み方だ。

 

主人公 DX が、恋人を救うため、その元凶の竜を退治するため、田舎を離れて冒険に出る。
途中困った人を助け、聖剣エクスカリバーよろしく選ばれた勇者のみが持てる剣の試練を受け、そして竜を退治する。

 

ここまでは、なろう系のテンプレ主人公。

――ただし違うのはここから。

 

主人公やサブキャラの何気ないセリフ、見落としてしまったコマ、見流してしまったキャラの動作。その全てに後の伏線となるものが明示されている。数巻と読み続けた先に、きっと思うだろう、あのシーンで主人が目配せをした意味がこれなのか!と。いわゆる一般的なファンタジーと一線画すのは、この伏線の張り方がキャラの魅力と相まって絶妙な塩梅なのだ。

 

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この物語の主人公は金髪長身の10代の若者 DX(ディーエックス)という。
別にラッパーの名ではない、あだ名である。(後にあだ名の理由で一悶着起きる)

 

主人公は、田舎に住むが高貴な貴族で初代領主で将軍の息子。
発想はクレバー、そして剣技はめっぽう強くタフ、しかも拳法の使い手でもある。

極度のブラコンでおてんばの妹、寡黙な忍者の末裔の子と、母は名うての傭兵とすでに家族構成がおかしい。
 

冒頭に記した、勇者的な冒険譚を経て、主人 DX は妹とともに王都に上京し、由緒正しき寄宿学校に行くことに。
ファンタジーに学校があるなんて、ここまでもテンプレか?と思ったりするが、ここからが『Landreaall』の本領発揮だ。
学校を舞台にしたことで、ふわふわしていたファンタジーがより現実的になり、お話がより地に足がついて進む。

 

 

 高貴な貴族子弟である彼は、王位継承者でもある。
 王位をめぐる貴族とのいざこざにまきこまれたり。
 校内の舞踏会にて出会う、運命の人。
 窮地に陥った留学生のルームメイトを助けるための隣国への殴り込み。
 主人公不在時に起こる寄宿学校へのモンスターの襲来。

 馬上槍試合。
 新しい国王の即位にまつわる、将軍である父が辺境にいった理由。

 

 などなど、このようなお腹いっぱなる話が巧みからみあって、物語を展開している。

 

 この『Landreaall』は、私が思うに三つのことが同時に進行している。
 まとめてしまえば全て主人公のことといえるが、
「友情・恋・王国の行く末」である。

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著者:おがき ちか
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まずは、「友情」

 

そう彼には、父が領主として作り上げた田舎で育ったため、同世代の友だちがいない。
学校で出会う、<金もうけ第一の豪商の子、芸術家、下町育ち、王家に連なる血筋の子弟、門閥貴族、海外からの留学生、騎士を目指す若者たち>などなど、
個性豊かな同級生たちが、DX に大きな驚きをもたらし、青春の荒波に放り込み揉んでいく。

 

そして、次第に気づくのだ。
彼らの中にある身分の壁、その背後にある国家としての厳格な身分制度に。

 

自分が高貴な貴族の子として生まれ、田舎で育ったばかりに意識することがなかった現実が立ちはだかる。
なによりも彼自身も王位継承者の一人なのだ。
ここで、冒頭に記した、恋人のための竜退治という冒険譚の伏線が効いてくる。
彼は田舎育ちでなにかと常識にとらわれない発言や行動力がある。
そんな彼に触発され影響された友だちは、現状の古い体制に満足せず、自分にも何かができるのではないか?と思い、甘い学生生活から現実を見据え変わっていく。

そして、「恋」

 

恋に無自覚で育った田舎少年が出会った、宮廷内の恋。
王族に連なる貴族の子ゆえに、数多のお見合いから逃げおおせ、いつしかこなし行く日々。

 

本当の恋に出会ったとき、それは禁忌の恋だっだ。しかし彼の中に芽生えた感情は、初々しい。
その恋への演出を、本編の漫画の中で小気味良いテンポで展開していく。
幾つかのエピソードをはさみながら、まさかの長期展開。

 

何しろ二人が出会ってから、恋になるまでに漫画の巻数でいうなら27冊もあるのだ。
それまでにお互いの気持ちを醸造するイベントが山盛りだ。
幾つかの障害をのりこえ、ついぞ、行き着いた結果はどうなる!?

最後に、「王国の行く末」

 

この『Landreaall』という物語は、本質は腐女子に受けそうな、若者が友情ごっこと恋で『キャッキャウフフ、』というだけではない。
その本質は政治だ。

 

現在は「国王なき王国」である。国王なき今の状況を作ったのは、実は主人公 DX の父なのだ。
そして事実上議会が国を運営している。
共和制も民主制もない世界、誰が新しき王となり、新しい国家を率いていくかという政治劇の要素が、左記記した冒険や、恋、友情の間に随所に入り込んでくる。
そして、主人公は王位継承権をもっている、これを捨て置く者がいないはずない。

 

彼を王へと推挙する推挙者と、戦乱の末に信頼を失った王国はどうなる?忠誠をすべき者をなくした騎士とは何か?など語らいは必見だ。
変わりゆく王国の体制と人々の意識の中で、彼は、王たる者がなになのか自覚をしていく。
あらゆる冒険や出来事は、きっと
「何者かになるため」の自分探しの旅でもあるのだ。

 

Landreaall 18巻 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
著者:おがき ちか
出版社:一迅社
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すでにお気づきであろう。この『Landreaall』は、実はなろう系などではなく、「友情・努力・勝利」の週刊少年ジャンプの流れを多大に含む漫画なのだ。

 

主人公 DX は、友と友情を育み、恋をして、なれない王国の常識や高位の人間たちに礼儀を学び、戦い努力する。
そして幾つかの冒険と戦いに勝利し成長する。

 

こういったことを書くと、ハードで凄惨な『ベルセルク』のようなダークファンタジー漫画と思い浮かべる方もいるだろう。
ところがそうではないのだ、物語に登場するキャラクターはユーモアを忘れない。
だから、一見するとハードに聞こえる内容もしっかりと落とし所のある物語として展開する。

 

もし歯ごたえのある、物語をお求めなら、『Landreaall』を読むと良いだろう。
もちろん、キャッキャ するキラキラ青春ものを望む人にもおすすめだし、少し風変わりなファンタジーが好きなら、それもまたありだ。
そして、読みごたえのある伏線回収をもとめる人がいるならばその人にはバッチリおすすめだ。
つまりだ、全員にお勧めであるというのが本音である。

 

 

☆この漫画のおすすめの人☆

【風変わりな中世的ファンタジー、若者の青春物、魅力あるキャラクターの掛け合い、政治・権力闘争、騎士物語、機知に富んだ会話、長期にわたる伏線回収】