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ゲイビデオ出演を告白したおっさんを笑おうと思って読んでたのに気付いたら泣いてた『実録!父さん伝説』

きっかけはこのツイートだった。

 

「父さんな、ゲイビデオに出たことがあるんだ」

 

この投稿がTwitter上で2万近くのRT/favをつけ、多くのサイトでまとめられることになる。「この告白の破壊力がすごい2016」でも堂々トップにランクインするくらいの衝撃だ。「父さん ゲイビデオ」で検索すると、1ページ目の検索結果は見事にこの投稿がらみのブログで埋め尽くされている。

 

実録! 父さん伝説
著者:トミムラコタ
出版社:イースト・プレス
販売日:2016-11-17
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そんな、瞬間最大風速的な人気を記録した「父の告白」を描いたイラストレーターのトミムラコタさん(以下、コタさん)のエッセイマンガが、『実録!父さん伝説』である。

今回は、ゲイビデオに出演したお父さんのさまざまな珍エピソードをはじめ、コタさん一家の日常を赤裸々に描いた本作を紹介したい。

人間5人と動物10羽が暮らすのは、六畳一間、風呂なしアパート

このマンガで紹介されている家族構成を見てみよう。

父……刑事や船乗りなど、色々経て現タクシードライバー。ゲイビデオ出演経験あり。
母……タクシードライバー。夫のゲイビデオを容認する。(父とはいとこ同士)
兄……マジシャン。ワハハ本舗所属。妹に金持ちのドバイ人と結婚してほしいと願う。
義姉……マジシャン。兄とは舞台でも人生でもパートナー。
コタ……イラストレーター/デザイナー。平成生まれ、バツイチシングルマザー、バイセクシャル。
うさぎ1羽と鳩9羽……マジック用に飼育。

 

もうすでに普通じゃない。どこから突っ込めばいいか分からない。朝からお好み焼きとたこ焼きと白ご飯が食卓に並ぶくらいお腹いっぱいだ。家族構成でポーカーをやったら、タクシードライバー2名とマジシャン2名の2ペアはまぁまぁ強いところまでいきそうである。さらに、この家族構成で六畳一間の風呂なしアパートに6年間も暮らしていたという。ときは平成、21世紀の東京である。

 

沖縄から憧れの東京に出てきたのに、ボロアパートだった時の悲しさ

 

貧乏な暮らしをしていたからこそのゲイビデオ出演であったのだが、お父さん、実はゲイにめちゃくちゃモテるようだ。タクシーの乗客からは「触らせて」とおねだりされることが多く、新宿二丁目ではちょっとした人気者らしい。

 

決して商売にしてるわけではないが、「おさわり」交渉が頻繁に行われるタクシー車内

 

時に触らせたり、時に触らせなかったり。よく分からないがお父さんの中には判断する時の確固たる基準があるようだ。元警官だからか、それともただ頑固なだけなのか、こうしたお父さんのこだわりを感じられるエピソードは多い。印象的だったのが、後半に登場するヨミタンさんとのエピソードだ。

 

昔捕まえたドロボウのヨミタンさんにも慕われる人情派なお父さん

 

お父さんが警官時代に捕まえたドロボウ、ヨミタンさん。普通は捕まえられた警官なんて嫌いそうなもんだが、何故かお父さんはヨミタンさんから慕われる。一方、お父さん自身も何かと慕ってくるヨミタンさんの面倒を見始める。何度も裏切られ逃げられるのに、絶対に見捨てないお父さん。

 

ここにも強いこだわりを見せるのだが、ヨミタンさんとのエピソードは、ぜひマンガで読んでもらいたい。

おバカだけど憎めない、落語的要素を含んだ現代喜劇

このように、お父さんの行動には一本筋が通っている。その筋がちょっと普通の人とズレているためときどき理解しがたいこともあるのだが、お父さん的におかしいことは何もない。そのズレがおもしろく、「借金」や「貧乏」、「ゲイビデオ出演」といった類の話をしていても悲壮感なく、むしろ落語的な喜劇を見ているような感覚に陥る。それは、主役を演じるお父さん本人がいたって真面目だから。

 

正直ちょっと鬱陶しいと思うけど、こんな父さんがいる家庭はきっと明るい

 

このマンガはあくまで4コマなので、決してドラマティックな盛り上がりがあるわけでも、壮大な物語があるわけでもない。それでも、ジワジワくるエピソードが詰め込まれたゆる~い作品のはずなのに、読んだ後に豊かな気持ちにさせてくれる。

 

それは、お父さんのこだわりすべてが「家族のため」というシンプルな目的に帰結していることが伝わってくるからだ。

 

サラリと出てくるお父さんの名言に、不覚にもグッときた

 

「反社会的なことや犯罪以外なら父さんは家族のためになんでもやるぞ」

 

サラリとこんなことを言ってのけるお父さんに、ちょっとウルッときてしまった。あぁ、強いなぁ。そして、こんな調子のお父さんに育てられてきたコタさんである。彼女自身もかなり紆余曲折を経て漫画家になり、こうして家族のエピソードをあっけらかんと描く。彼女自身にも、作風にも、全然悲壮感はない。彼女の強さの裏にこの父あり、なのだろう。

 

最初は下らないギャグ4コママンガと思うかも知れないが、ぜひ最後まで読んでほしい。読み終えたころには、みんなきっとこのお父さんの虜になっているはずだから……。

 

※この記事は、画像使用について作者様の許可を頂いております。

(『実録! 父さん伝説』©トミムラコタ/イースト・プレス)

 

実録! 父さん伝説
著者:トミムラコタ
出版社:イースト・プレス
販売日:2016-11-17
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