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【インタビュー】大島薫『男の娘どうし恋愛中。』~ひとつの愛の記録として読んでほしい物語~

みなさんは「大島薫」さんをご存知だろうか?現在フリーで活動している、元セクシー女優の男性タレントだ。

女優で男性、二つの相反する言葉に戸惑う人も多いだろう。大島さんはいわゆる「男の娘」で、ホルモン投与も手術も行っていないなか、女装を嗜む。男性であるにも関わらず、時には女性よりも可愛い、と噂されるほど人々を魅了している大島薫さん。

 

今回は、フォロワーが22万人を超えるSNSでの活動についてや、2017年12月に大島さんが作家として発売したコミックエッセイ『男の娘どうし恋愛中。』(著者:大島薫・作画:ふみふみこ/宝島社)について、インタビューさせていただいた。

 


 

大島薫さんTOP画像

SNSは宣伝ツールであり、人生論を整理する場

ーー大島さんといえば、Twitterでの活動が印象的です。中でも最近、質問コーナーをされてますよね。

 

そうですね、質問コーナーは人の悩みに向き合うことで、自分の中の人生論みたいなものを再構築してまとめたいという想いでやってます。

 

ーー記憶に残っている質問はありますか?

 

特にこれといった印象的なものというよりは、同じことに悩まれてる方が多いなと。「人を好きになる気持ちがわかりません」とか「人から好意を向けられることが気持ち悪く感じてしまうんです」とか。
Twitterは若い世代が多いので、あえてそういった普遍的な悩みをチョイスして答えることにしています。
現代は、セクシャリティ(性自認や性嗜好)について色んなタイプが居るんだと浸透してきているので、「自分がおかしいのかな?」と悩んでいる人たちにとっては、同じような悩みを持っている人がこれだけいるんだよとまずは気づくことが大事だと思うんです。

 

ーーそこまで考えられてるんですね。ではそういった方々の悩みを解決することを意識して、SNS運営をされているんですか?

 

そういうわけではないです。元々は性知識ツイートが中心でしたが、最近はあまりやってなくて、自己啓発に近い内容を呟いています。
心境の変化があったわけではなくて、SNSは自分の宣伝ツールでもあるので、フォロワーやRTが伸び悩んだ時にふと手法を変えようかと思い、性知識だけでなく普遍的な悩みや幼少期の想い出に触れるようになりました。

 

ーー確かにそうですね。昔から大島さんのツイートはとても勉強になることばかりでした。特にこのツイートなどは、一体どこまでの知識を持っていらっしゃるのかと驚きました。

もともと、色々と調べるのが好きで。自身のジェンダーについて昔から悩みはあったので、例えば「人を好きになる気持ちってどうなんだろう?」と思った時、何かしら自分の中で定義付けていきたいと考えたんですよね。その時、歴史のことが思い浮かびました。昔の男色は厳密に言うと同世代同士ではないことが多くて、いわゆる”少年愛”というか。
そういった男色は、現代の「恋愛」と一緒なのか?などを掘り下げて考え始めると、本当の部分は想像するしかありませんが、人を好きになる気持ちに種類分けや区分分けは必要ないのかなと思ったりして。
自分のなかで、そういった出来事を解釈付けるために、過去の事例であったりを調べることが、SNSでの歴史の話につながっていきました。
当然延長線上に性愛も含まれてくるので、セックスであったり「生殖と結びつかない恋愛、同性愛とはどうなのか」という部分まで、考えが飛躍していったり…結構調べている部分が多いですね。

「受が8割、攻が2割は本当なのか?」ロジカルな考え方

ーー「人を好きになるとは」という質問から、歴史上の男色の恋愛観~生殖と結びつかない恋愛まで考え始めるなんて、大島さんはとても思慮深いですね。どうやって調べているんですか? 

 

たとえば「ドライオーガズム」という言葉があって、射精せずにイクっていう。でも厳密に言うと、射精してないのにイッてるってどういうことだ?ってなりますよね。

 

ーーそうですね、私は女性なのでなおさらピンときません。

 

「ドライオーガズム」の存在は、医学的に証明しようがないんですけど、その存在があるよって言ってる人が実際どれだけ居るかを文献だけで調べても仕方がないので、ネットの体験談を調べたり、データがなければ自分で作ったりもします。

 

ーーデータを自分で作るんですか!?

 

大島薫さんpic1

 

例えば以前自分が調べたのは、よくゲイ業界では「※1受が8割※2攻が2割」だと言われがちなんですけど、その発言は本人たちの体感でしかないので、実際はどうなんだろう?と思って。
正確性は別として、ネット上で同性愛、特にゲイの方が書き込む掲示板や相手を探すアプリを使って、検索フォームに特定のキーワードを入れて受と攻の割合を出しました。
実際に調べてみるとそんなに差はありませんでしたね。

※1…受とは、主に性行為時、受け入れる側を行う方を指す。※2…攻とは、主に性行為時、挿入する側を行う方を指す。

 

ーーすごい実行力ですね(笑)

 

そうなってくると、段々「この割合は日本特有なのか?」って気になり始めるので、今度は外国の方々が利用するサイトでもキーワードを入れて受と攻の比率を出したりとかして。日本人ってリバ率が多いんですよね。

 

ーーリバ率…リバーシブル、つまり受も攻も両方できる、と?

 

はい、けど調べてみると日本も外国も大差はありませんでした。
その調査から、お国柄や性の捉え方による国ごとの違いはあんまり導き出せませんでしたが、実際の所、ゲイ業界で言われているほど受のほうが多いということはないんだなという印象でしたね。
もちろんこれは掲示板だからウソも付ける話なので、そんなにアテにはならないデータですけど、自分の中の何かを紐解くのに必要な情報なんです。

 

ーー大島さんはとても考え方がロジカルですね。

 

統計とか、外国もそうだけど日本は特に、性に関する調査とか進んでいないので。外国だったらセクシャルな話題も、国勢調査が行われたり、研究機関が大規模なアンケートを実施したりするんですけど。
日本はそのあたり、少しセンシティブに扱う傾向があるので、自分の中で足りないデータは自分でってところがありますね。

 

ーーありがとうございました。

本題『男の娘どうし恋愛中。』について

男の娘どうし恋愛中。
著者:大島 薫
出版社:宝島社
  • Amazon

 

ーー悩み相談から性知識まで、情報が盛りだくさんの大島さんのSNSですが、今回発売された『男の娘どうし恋愛中。』の本の内容でもある、同じ男の娘・ミシェルさんとのお付き合いに関しても、よく見かけました。お二人の関係をコミックにしようと思ったきっかけは何かあったのでしょうか?

 

もともと、ボク自身に編集の方からコミックエッセイのお話をいただいていました。「大島さんの半生を描いてほしいが、よければ今お付き合いしているミシェルさんとのエピソードも入れてほしい」と言われていて。最初の打合せでは、内容についてざっくり決めただけでしたね。
そのあと、作画を誰にするかという話があって。今回『男の娘どうし恋愛中。』の作画を担当してくれたふみふみこさんは、昔から男の娘漫画を執筆されていて、この世界ではとても有名な方だったので、彼女が受けてくれるならミシェルとの話にしようと思っていました。

 

ーー作家さんが大事だったんですね。

 

本作でも描いているんですけど、割とボクは小さい頃からあっけらかんとしていたんですよね。

 

©著者 大島薫・作画 ふみふみこ/宝島社

ボクを陽とすると、ミシェルの過去であったりトラウマであったりは陰だと思います。そういった"影の部分"を描ける人であれば、ミシェルとの話にしようと思っていました。
ふみふみこさんは影のある話を描くのがお上手な方で、ふみこさん自身、そういうテーマを描くのが好きなんだろうなという印象が作品からも見受けられたので、恋愛事情を描いたエッセイになりました。

 

ーー発売当初の反響はどうでしたか?

 

あちこちのレビューサイトにもありますが、よく「あとがきが本編」って言われています。
この本を書いてる最中もリアルタイムで付き合っているので、二人の恋愛関係には変化があって。
TwitterなどのSNS上で情報を発信してるだけに、(作中に描かれている)紆余曲折も垂れ流しになっているわけだから、あとがきでその部分は解決させないといけないなと思いました。

※あとがきには、本編のマンガとは別に12ページほど、大島さんの想いが綴られています。

 

大島薫さんpic2

 

※ここからはコミックのネタバレが含まれます※

 

あとがきで一番印象的だったのは、大島さんがミシェルさんに対して「大切なものを選ぶというのはどういうことか、知ってほしい」と願っていた部分です。大変申し上げづらいのですが……、お二人がお別れされたと聞きました。大島さんとお付き合いされている最中も、別の男性の元にいたミシェルさんですが、今回のことはミシェルさんが"彼"を選ばれた、ということなのでしょうか?

 

ではないと…ボクは思っています。だからこそ悲しい。あとがきにも書いていますが、ミシェルはボクがこの本の出版前にインターネットの動画で、彼女と男性の関係や経緯についてを配信したあと、ボクを選んでくれました。
その時、実は本編で描いてないんですけど…ボクの家に来た後に、一度男性の家に荷物を取りに帰るくだりがあったんです。そして荷物を取りに行って、ミシェルは帰るはずだったんですけど「やっぱり残る」って言い始めたんですよね。

 

ーー荷物を取りに帰る時は、一緒に行かれたんですか?

 

はい。「ひとりで大丈夫?手伝おうか?」と言ったら来てほしいと言われて。車の中でも一時間ぐらい悩んでました。
けどミシェルが「残る」と言ったので、自分の気持ちとしては「できることならこっちを選んでほしい」と思っていましたが基本的には何も言わず、「君が選んだら応援するから」という気持ちでした。ミシェル自身が自分で選ぶことが大事だと思っていたので。

ボクひとりを信じさせるだけの愛情を、ミシェルに信じさせてあげられなかった、ということもあるのかなと思います。

今はこの本を、"ひとつの愛の記録"として読んでほしい

ーー本作『男の娘どうし恋愛中。』は、いろいろな壁を乗り越え、ミシェルさんと前向きに生きていこうとするお二人の姿が描かれていましたが、現在改めて本作に思うことはありますか?

 

マンガの中にはウソはないです。ミシェルもボクも喜んで読ませてもらいましたし、ボクはとてもいい本だと思っています。ふみふみこさんもボクたちのことをすごくよく理解して描いてくださって、……ミシェルのように、親が離婚して恋愛に不信感がある人ってとても多くて、そういう方はやっぱり恋愛で少し苦労してたりする。

 

©著者 大島薫・作画 ふみふみこ/宝島社

当たり前のように「相手が自分のことずっと好きかどうかなんてわかんないし」って言うんですけど、親が離婚してなかったボクからするとそういった発想がなかったので、「それはそうだけどアタリマエのことじゃない?」って思っちゃうんですよね。
恋愛って絶対じゃないよな、って発想になりがちな人たちに向けて、ミシェルが少しずつ歩み出すことを選んだ物語として受け止めてほしいと思います。

 

そして、結果的に今別れてはしまいましたが、だから人が絶対に別れるということじゃなくて。
大事なのは歩み出す勇気で、自分自身としては歩み出す勇気を持った子に対して、もっと後押しできるような愛情を注いであげたかったなっていう想いがあります。

(読者の方に)そういう目で見てほしいとは思いつつ、人は別れるんだなと思ってもいい。作品は作品なので、ひとつの愛の記録として読んでいただけたらなと考えています。

ーーありがとうございました。

 


 

インタビュー時、こちらの質問に対して真摯に答えてくださった大島さん。

自身を含め、客観的視点から論理的に物事を考えている人だと印象を受けました。
作家・タレントとして、プロデューサーとして、多岐にわたる今後のご活躍を心より応援しております!

 

マンガ新聞編集部

 

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