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マンガのように恐い話をベテランの恐怖漫画家が描いた『憂国のラスプーチン』

※この記事は2014年2月22日にマンガHONZ(運営:株式会社マンガ新聞)にて掲載した記事の転載になります。
レビュアー:角野 信彦

憂国のラスプーチン 1 (ビッグコミックス)
作者:佐藤 優
出版社:小学館
発売日:2010-12-25
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またマスコミに発言をつまみ食いされてニュースになってますが、僕、森元総理って嫌いじゃないんですよね。

元総理のお父さんの森茂喜さんは日ソの交流を推進されてロシアにお墓もある。そうすれば息子はロシアに墓参りに来ることになり、日ソ友好の架け橋になってくれるという考えだったようです。

そのことを、森元総理がプーチンと話して、自分も父と同じお墓に入るから、死んだらあなたと同じロシアの土地に眠ることになると言ったら、プーチンは涙を流して感激していたという話。彼は失言が多いと言われるけれども、このように対人関係の機微をとらえる天才、ファンタジスタです。

実はこんなプチ情報をどこで知ったかというと、この『憂国のラスプーチン』に出てくる佐藤優さん、鈴木宗男さんとの森元総理の対談で知りました。マンガHONZ代表の堀江と佐藤優さんの対談も載っていたりします。この対談もマンガと同じくらい面白くてお得感満載です。

『憂国のラスプーチン』は原作が佐藤優、脚本が長崎尚志、画が伊藤潤二で、もちろん国策捜査という言葉を有名にした『国家の罠』のストーリーに基づいています。脚本の長崎尚志さんは『20世紀少年』や『ビリーバット』を浦沢直樹さんとストーリーの共同制作をしていて、伊藤潤二さんは『うずまき』などの恐怖マンガの名作があります。

『国家の罠』を読んだ人なら何となく分かるかもしれないのですが、伊藤潤二さんの画がピッタリの恐怖ファンタジーだと思えてくるストーリー展開で、何の罪も犯していない人間が国策捜査によって罪を負わされる怖さが彼の描く人物で更に倍加されています。

さらに、外務省がどうやって裏金をつくっていたのかなどの『国家の罠』になかったネタなども追加されていて、『国家の罠』を読んだ人でも興味深く読めるようになっています。検察は村木さんの事件などで、この事件の後、大変な痛手を被るわけですが、その問題の根っこがもうここにあったんだということを知るのは有意義だと思います。

今回はネットがなければ、森元総理の発言も誤解されて伝わったままだったろうし、怖いのは、そういう誤解が世間で共通認識になってしまって、公訴提起の権限を独占している検察がその誤解を判断基準にして行動することがあるということですね。

『憂国のラスプーチン』では非常に誤解を受けやすかった鈴木宗男さんが、とてもいい人に描かれています。いい人に描きすぎだろうという人もいますが、僕はそうは思いません。鈴木宗男さんは、ムネオハウスのイベントにMCとして参加してくれるくらい、ユーモアのあるいい人なんです。皆さんも『憂国のラスプーチン』を読んで鈴木宗男さんが本当はどういう人なのか、自分の頭で考えるきっかけにしてみてください。


こちらがかの有名な「MUNEO HOUSE」。エバーグリーンな名曲。

伊藤潤二傑作集5脱走兵のいる家 (あさひコミックス)
作者:伊藤潤二
出版社:朝日新聞出版
発売日:2011-03-18
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 伊藤潤二の恐怖漫画を楽しむのであれば、画面の大きいあさひコミックスがオススメ。『うずまき』もすごいが、まずはこちらの初期作品をどうぞ。

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)
作者:佐藤 優
出版社:新潮社
発売日:2007-10-30
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 マンガとともにこちらのノンフィクションもどうぞ。アメリカからの出張の帰りの飛行機で読み始めたら眠れなくなって一気に読んでしまった。止まらない面白さ。

クロコーチ(1) (ニチブンコミックス)
作者:リチャード・ウー
出版社:日本文芸社
発売日:2013-10-07
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脚本の長崎尚志さんが、リチャード・ウー名義で原作を書いている3億円事件もののマンガ。主人公の偽悪者ぶりが痛快。