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もし高校で「手始めに四十八手を全て暗記しますね」と言う彼女ができたら?『僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件』
僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件(1) (角川コミックス・エース)
著者:松本ナミル
出版社:KADOKAWA / 角川書店
販売日:2016-04-09
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2017年秋にアニメ化された『僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件』。出版元であるKADOKAWA社内でも日々「処女ビッチ」「処女ビッチ」と連呼されているのかと思うと、何とも言えない不思議な気持ちになります。

 

しかし「処女ビッチ」という単語があまりにも言の葉として強過ぎたためか、世界に偏在する大いなる意志の力によって「しょびっち」へと改変され、『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』と改題されての放映となるようです。

 

初連載・初単行本にしてこの物議を醸すタイトルを押し通した松本ナミル先生、ただ者ではありません。ひしひしと攻めの姿勢が伝わってきます。そして、本作は中身も決してタイトル負けしておらずアグレッシブです。

 

何の変哲もない高校二年生である主人公の篠崎遥は、成績優秀でスポーツも万能なクラス委員の優等生・香坂秋穂に憧れを抱き、ダメで元々と告白します。が、何と意外にもあっさりとOKが出て晴れて付き合うことに。しかし、そこで秋穂が「良い彼女になれる様頑張らなくては…」と言いながら次に放ったのは「手始めに四十八手を全て暗記しますね」という爆弾発言!

真面目過ぎる委員長は男女関係にたいしてもあまりにも真面目過ぎるが故に偏った情報を真に受け続け、その後も「どんな性癖をお持ちですか?」「こんな時のためにオカズ用の写メを自撮りしておきました」などと遥を驚かせる言動を連発します。

 

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©Namiru MATSUMOTO 2016

あんなにクールビューティな委員長が実は……というギャップはグッとくるものがありますが、ここまで突き抜けられると何ともはや。

 

ちなみに処女ビッチというと外見はいかにも遊んでいそうなものの、中身はウブな女の子を指すことが多いのではいかと思っております(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』の安城鳴子や、『シンデレラガールズ』の城ヶ崎美嘉などが典型的な例ですね)。それ故、有識者の皆様の中には「秋穂は処女ビッチとは違うのではないか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、見た目は普通の女の子でありながらも性知識が豊富で積極的な秋穂もまた、立派な処女ビッチと言えるのではないでしょうか。

 

そんな秋穂の魅力は、性方面に関して奔放過ぎる発言をする一方で、根底には遥への純真な想いがあるところです。

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©Namiru MATSUMOTO 2016

学校に精力ドリンクや鞭とロウソクを持ち込むことには何のためらいもなくとも、遥との相合傘には純情な戸惑いを見せる秋穂。そのアンバランスさが良い味を出しています。この辺は処女ビッチの面目躍如といったところでしょうか。感極まると思わず遥の服を握りめたりパンパンと叩いたりしてしまう動作もかわいらしく、第一話ラスト後の幕間にコミックスで加筆されたおまけマンガなども彼女の魅力を増幅していて良いです。

魅力的な脇役たち

また、本作は秋穂以外のサブヒロインたちも曲者ぞろいです。

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©Namiru MATSUMOTO 2016

遥の一つ年上の幼馴染で、遥をからかうことに快感を覚える「姉ちゃん」こと有山雫。初登場時から校内でパンティを脱いだり、食べかけでドロドロの「遥のミルク(飴)」を掌に出して見せたりするなど、強烈なインパクトを与えてくれます。しかし、そんな雫もまた猥雑な言動を繰り返しながらも意外とウブな所もあるキャラクターとして描かれていきます。「ハルは上より下になって戯れるのが好き」など、傍で聞いていれば勘違いをされても仕方のない雫の言動に嫉妬心をもよおす秋穂も良いです。

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©Namiru MATSUMOTO 2016

超お嬢様高校の城金学園から転校してきた西城梨奈もまた、一筋縄ではいかないキャラクターです。女性とばかり触れ合ってきたことで、秋穂を始めとする女性キャラを見る目が他と違います。趣味は毛むくじゃらの男性と戯れる事、もとい愛犬、バターとマーガリンと戯れること。「松葉崩し」や「テクノブレイク」など、勘違いによる単語の誤用がお茶目なお嬢様です。ただ、まともに友人ができなかった秋穂にとっては貴重な級友となります。

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©Namiru MATSUMOTO 2016

この娘にしてこの母あり。秋穂の母親である冬美も、秋穂同様に真面目な性格でありながら性の方面に対しては著しい勘違いを多発しており暴走を繰り返します。美人で優しい奥さんと娘を持つという意味では秋穂の父親が羨ましくもありますが、父の日に「あんなモノ」をプレゼントされるこの母娘と普段から接し続けることを思うと大変そうだなぁ、とも。一巻巻末のオマケマンガには、そんな冬美のツッコミどころ満載の言動がふんだんに描かれており必読です。

 

この他にも、兄の遥のことが大好きで自信過剰な妹の奏多、遥を危ない眼差しで見つめるモテ男の星川などなどクセの強い人物たちが続々と登場し、賑やかな学園群像劇が描かれていきます。

 

基本的に下方面のネタに関しては容赦なく限界を攻めていきますが、根底には遥と秋穂の健気な両思いがあるせいか、タイトルやネタのどぎつさとは裏腹に微笑ましく読めるラブコメ作品です。アニメでは若手実力派声優である悠木碧さんによって、秋穂がどう演じられていくのかも楽しみです。

 

僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件(2) (角川コミックス・エース)
著者:松本ナミル
出版社:KADOKAWA / 角川書店
販売日:2016-10-26
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僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件(3) (角川コミックス・エース)
著者:松本ナミル
出版社:KADOKAWA / 角川書店
販売日:2017-03-25
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僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件(4) (角川コミックス・エース)
著者:松本ナミル
出版社:KADOKAWA / 角川書店
販売日:2017-08-10
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僕の彼女がマジメ過ぎる処女ビッチな件(5) (角川コミックス・エース)
著者:松本ナミル
出版社:KADOKAWA / 角川書店
販売日:2017-10-10
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※引用画像はすべて編集部の許可を得て使用しております。

※この記事は2017年9月11日に「マンガHONZ」で掲載された記事の再掲載です。

文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿