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「うちの猫は、世界一賢い!」は勘違い?『同居人はひざ、時々、頭のうえ』で、想いがかみ合わない「ヒト」と「ネコ」の幸せな一緒暮らしを感じよう!

突然ですが、私の実家にはチコという猫(3才)がいます。

 

両親は巣立ってしまった実の子どもたちよりも、チコに夢中です。「チコちゃん、よくできたね~!」「おうちの中で待っているなんて偉い!」「かわいいわ~」などなど。私自身も、チコの名前を呼んで「にゃーん」と初めて返事を聞いたときには、もう「世界一賢い!!天才!!」なーんて親バカすぎるよ!恥ずかしいよ!でも、かわいすぎるよ!!くそー!!と言いながら全身で悶えておりました。もはや一日の12時間を寝ていてもいい。ヤモリやセミを捕まえて誇らしげに玄関に置いていってもいい。何でも許しちゃう!!

 

とまあ、そんな感じで月日が過ぎていったのですが、同時に、私にはずっと考えている疑問があります。

 

ネコたちは、いったい何を考えているのだろうか??

 

ネコ好きにとって、自慢の飼いネコたちは苦楽をともにする家族同然。ちょっぴり気まぐれで、癒しを与えてくれるツンデレの恋人のような存在でもありますよね。が、果たして彼らも飼い主を同じように思ってくれているのか気になる!!チコちゃん!私のこと好きだよね!家族や恋人じゃなくて、下僕でもいい!だからどんなふうに考えているか教えてーーーー!!!!

 

・・・そんな私にとって、運命の一冊がここにありました。ご紹介します。

『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』です。

 

同居人はひざ、時々、頭のうえ。(1) (ポラリスCOMICS)
著者:みなつき
出版社:ほるぷ出版
販売日:2016-04-20
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主人公はミステリー作家・素晴(スバル)。担当編集者との打ち合わせも面倒で、寝食を忘れるくらい創作活動に没頭し、他人との距離感がつかめないタイプ。つまりヒトが苦手。

そして素晴に拾われたハチワレで(ちょっと目つきが悪い)世話好きの陽(ハル)。寝ても覚めても「ごはんはどこ!?」と探してしまうのは、元野良猫の性。

 

読書と創作活動に外出は邪魔だと引きこもりがちな素晴が、両親のお墓参りに出かけた際に、お刺身の匂いにつられて飛び出してきたハル。物語は彼らの出会いから始まります。

 

 "あの顔は、だいぶハラを空かせているな・・・"  "人間のくせにほっとけないんだから!” ーヒトとネコ、それぞれの目線で進む物語ー

 

この物語を魅力を語る上で欠かせない要素。それは、一つの出来事が、素晴編(ヒト目線)と、ハル編(ネコ目線)で描かれていることです。

 

例えば、第一話では、原稿締切前の素晴の元に、毎日のように自分のカリカリごはんを持ってくるハル。

 

この不可解な行動に、当初はハルの行動が小説のネタになると素晴が喜んだのも束の間、何度もカリカリごはんを廊下に撒き散らす状況に「関わるとろくなことがない」と感じるように。やはり素晴は拗らせている性格です。

 

一方、ハルの視点では、「ごはん食べないと死んじゃうんだから!」という野良猫時代の辛さがあるからこそ、素晴にごはんを食べさせないと!と、大好きなごはんを分けてあげるハルの気持ちに、「ハル姉さん・・・サイコーだよ!」とグッとくるんです、本当に。

 

第1話 PV

 

 

"誰かの存在に、言葉に振り回されて、一喜一憂することも僕には一生縁のない感情。そう思っていたのにいったい何が僕を変えたんだろう" 

 

そしてこの漫画のもう一つの、そして最大の魅力は、不器用で人付き合いを避けてきた素晴と、世話好きで義理人情に厚いがどこか人間を信じきれないハルが、少しずつ「家族」になっていく、本当に些細な日常の物語。

 

一般的な動物漫画の擬人化とは異なり、ハルは人間と話せません。それどころか、自分の名前を「ごはん」という意味だと勘違いしていたくらいなので、素晴の言葉の半分も理解していない様子です。一方の素晴も、誰かと一緒にいることが億劫という人間のため、ハルとすぐに順調に暮らせるというわけでもありません。

 

それでもハルと一緒に暮らすようになったことで素晴の日常は徐々に変化が生まれてきたのです。「たかが猫」とつぶやいた素晴に、「絶対言っては駄目。たとえ言葉がわからなくたって伝わってしまうよ」と静かに諌める担当編集者の河瀬さん。「大事なのは伝わるかどうかよりも、まず伝えようとする意思」と話すペットショップ店員の押守さん。ハルのごはんを作ってくれた春ちゃん。

 

彼らの言葉や行動は、素晴に、誰かと共に食卓を囲む喜びを、拒否への不安を乗り越えて一歩踏み出す勇気を、誰かのために何かをする幸せな気持ちを、そしてそんな自分の感情の変化に気づかせてくれたのです・・・!

 

どんなに話が進んでも、言葉が通じない素晴とハルは、完全にはかみ合っていません。もしかしたらこれを平行線と表現する人もいるかもしれませんが、よく考えると、こんなことは言葉が通じる人間同士だって起きうるわけで。素晴とハルが想い合う気持ちは、表情や触り方からちょっとずつ自然と伝わり、一人と一匹の気持ちはぴたりと寄り添ってきています。そう、きっと彼らの二つの線は寄り添うように走っているんだと思えるはず。

 

ネコを飼うというより、一緒に暮らす=同居人という言葉からスタートした関係。それがいつしかお互いが側にいないと寂しい存在になり、「家族」へとなっていく。まさに、一人と一匹の成長物語。素晴が一日中外出したときのハルの暴れっぷりは、なんともツンデレで可愛らしく癒されますよ。

 

1月25日に4巻が発売され、2018年も目が離せない『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』は、ネコ好き、動物好き、そして不器用な男子にオススメです!ぜひ手に取ってみてくださいね。

 

同居人はひざ、時々、頭のうえ。(4) (ポラリスCOMICS)
著者:みなつき
出版社:ほるぷ出版
販売日:2018-01-25
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