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ミシュラン本社の社食のメニューとは? どんな雰囲気で店にやって来る? ミシュラン調査員の生態に迫る『エマは星の夢を見る』。

 

エマは星の夢を見る (モーニングコミックス)
著者:高浜寛
出版社:講談社
販売日:2017-06-23
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「美味しいお店を知っていることは、編集者の財産なんだよ」

 20代半ばごろ、先輩編集者に言われた。自分の舌に大して自信がなく、そしてお店に関する知識のほとんどなかった私は、それから、レストランガイドをむさぼり読むようになった。そうなってはじめて、ミシュランガイドというレストランガイドの、重さを知った。ミシュランで星がついているかどうかは、時には他のガイドにも取り上げられるほど重要な情報だった。なんて信頼感だろう!かなり後発でガイドが発行された日本ですら特別な存在なのだから、本国のミシュランは、さぞ強い権威を持っているのだろう。果たして、そのガイドの調査員というのは、どれほどの舌を持っているのか……そんな好奇心から本書を手に取った。

 女には向かない職業

 主人公・エマがミシュラン本社に応募するところから、物語は始まる。エマはもともと、お酢のコレクターで、かなり食にこだわりの強い様子の女性だ。書類審査を経て、最終試験はおどろくべきことに実地試験。そこで求められる資質たるや…見ているだけでめまいがするほどハイレベルである。そして、そのあとに確認される項目にはまた別の厳しさがあった。

「営業マンが泊まるようなビジネスホテルでも大丈夫ですか?」

「あちこち出かけちゃんと食事を完食できますか?」

「子供や家庭を持つことは難しいでしょう 家にいないことが普通ですから」

 よく考えれば当たり前のことだが、ミシュラン調査員ともなれば、毎日のように距離を厭わず新しいレストランに出かけ、そこでかなりカロリーの高いコースを完食しなければならない。実はこの仕事を選ぶかぎり、人生設計のある部分が、かなり制限されてしまうようなのだ。

 ミシュラン調査員の生態

 入社試験をパスしたエマは、複数人の調査員の先輩について研修に入る。すると、仕事内容は画一的ながら、調査員一人一人のタイプはバラバラであることがわかってくる…。何をチェックしているのか、いったいどんなふるまいが調査員の特徴なのか…ここから先はぜひ本書を読んでお確かめいただきたい。

 一方で驚く情報も。ミシュラン本社の社食はきわめて普通のクオリティだそうです(ちょっと前に取材されていると思うので、もしかしたら改善しているかもしれませんが…)。

 記憶と戦う作業

 食に携わる人に話を聞いていつも感服するのは、味覚そのもの、というより、その記憶力の凄さだったりする。エマも先輩調査員たちも、やはりずばぬけた記憶力の持ち主のようである。食べたことのある味、嗅いだことのある香りを記憶から引き出して、レビューを書いていく。さらにミシュラン調査員が凄いのは、店員の前でメモをとらないことだ。すべてを記憶し、それを後から書きだしていく。

 下世話な気持ちで読み始めたのに、すっかり私は、ミシュラン調査員のすごさに感激してしまった。レストラン情報を気にするようになってそろそろ10年。自分なりのおいしいレストランリストは少しずつ増えつつあるけれど、凄腕の調査員が発掘・更新する名店リストは、これからも追いかけてみたいとあらためて思った。