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80歳からの多動力。口だけ達者な若者は『傘寿まり子』を読んでくれ!

少し前に2017年の流行語大賞が発表されていた。そこにはノミネートすらされてなかったけど、個人的には「多動力」を推したい。

この言葉の意味は、2017年5月に発売された堀江貴文さんの『多動力』で定義されている。いくつもの異なることを同時にこなす力のことだ。

多動力 (NewsPicks Book)
著者:堀江貴文
出版社:幻冬舎
販売日:2017-05-26
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ひとつの何かを継続することは、それだけで肯定される。でも、その逆だって肯定されていい。飽きっぽい自分は、それを力、つまりパワーであると定義した本書には共感するところ大なのだ。

今回紹介するのは、そんな多動力をもつ人物が主人公の物語『傘寿まり子』だ。

 

傘寿まり子(1) (BE・LOVEコミックス)
著者:おざわゆき
出版社:講談社
販売日:2016-11-18
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80歳で持ち家から「家出」

そのタイトル通り、主人公のまり子は傘寿、つまり80歳である。孫はもちろん、曾孫までいる、大おばあちゃんである。
とはいえ、一般的にイメージされるヨボヨボおばあちゃんではない。夫を亡くしてしまっているが、作家業と年金で収入を得、持ち家で暮らしている。

そんなまり子はある日、息子以下同居している家族が、まり子をよそに、家の建て替えの相談をしていたことを知る。

家の中だって中心はどんどんずれていく。譲っていかないと次がつかえる。だけどここは私の終の棲家じゃなかったの…?

「自分の居場所はこの家にはない」
ショックを受けたまり子は、「家出」を決意する


80歳の老人が家から出たら、悲惨な結果が想像される。しかしまり子はそれを、持ち前の多動力で覆す。

お金はある。だから滞在場所はホテルやネットカフェ。まり子の仕事にはそれで問題ない。原稿は机があれば書けるし、担当編集者とは電話やメールで連絡が取れる。

加えて散歩に出た先で出逢った猫を拾って飼い始めたり、ネットゲームで出逢った人に会いに行ってしまったり、妻を亡くしたかつての憧れの人(同じく80歳)の自宅に転がり込んで同棲を始めてしまったりもする。家族の心配をよそに(最低限の気は回しているが)、家出ライフを楽しんでいる。

好きだけど気を使わざるを得ない、という家族のもとを飛び出して、自分の興味やワクワクの赴くままに生きる。まさに多動力だ。
80歳のまり子がそれを実践(フィクションだが)している姿は、現実を生きる僕らがいかに「縛られているか」を逆説的に示しているように思う。

最後に、多動力は比較的若い世代のための概念であると思うかもしれない。しかし『多動力』の中で堀江さんはこう言っている。

いつまでも若々しい60代がいる一方で、老人のような20代もいる。人間は加齢ではなく、新しいものに興味がなくなった瞬間に老いが始まるのだ。

『傘寿まり子』を読んだあとは、この言葉がもつ重みが違ってくるだろう。

傘寿まり子(1) (BE・LOVEコミックス)
著者:おざわゆき
出版社:講談社
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