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不安と悩みに押しつぶされ、なぜ生きるのかが見えない貴方への一冊『ここは今から倫理です。』
ここは今から倫理です。 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
著者:雨瀬シオリ
出版社:集英社
販売日:2017-11-22
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学ばなくても将来困ることがない学問「倫理」。数学のような汎用性もなく、英語のような実用性もない。生活のなかで登場することもなければ、仕事で直接役立つこともない。それが「倫理」。

 

『ここは今から倫理です。』は、答えのない永遠とも思える暗闇の中で生きている高校生に対し、倫理の授業、倫理観、そして過去の偉人の教えを通じて、子どもたちに一筋の光を見つけるきっかけを与える漫画だ。

 

 

嫌われたくなく、周囲が笑顔になるからと、男性に身体を与え続ける女子学生。校内でレイプされかけたとき、助けてくれたのは教師高柳。襲う男子学生と襲われる女子学生に問うたのは合意であるのか。そして、

 

本当に深く愛し合っての・・・切羽詰まっての逢瀬なら、場所と時間についての注意だけに止めます

 

そして合意でないことを確認すると、男子学生に殴られながらも、その身体を止める。そして男子学生に語りかける。

 

やめなさい。私は貴方を殴れない。異性の生徒に至っては、落ち着くようにと背をさすってやる事もできません。セクハラになってしまう。お願いします。暴力はやめて下さい。

 

救われた女子学生に対して教師高柳が伝えた言葉はマックス・シェーラー。

 

愛こそ貧しい知識から豊かな知識への架け橋である。

 

勉強が苦手で自暴自棄になっている生徒ばかりではない。学校の図書館にある書籍を読みつくすほど知識を持つ女学生は、同級生、異性、大人がくだらなく感じる。実親も同じだ。だからこそ、同姓の同級生の見方も辛らつだ。

 

彼氏ができたことに浮かれる同級生が自殺を試みるほどのつらい思いをして、屋上の柵の向こう側に立っていた時、衝動的に出た言葉は「バカじゃないの!?そっ、そんなの・・・死ぬ事に・・・命の重さに比べたらちっちゃい事じゃないか!!

 

自殺を試みる女学生を見ながら、教師高柳は彼女の言葉を否定する。恋も、いじめも、就職の失敗も、仕事の不具合も、資金がなくても、退屈でも、どんな理由であっても、命に換わる重い絶望になり得ることとともに。

 

そして、フランシス・ベーコンの言葉を二人に添える。

 

いじめに絶望する子どもも、退屈に支配され生きることの意味を喪失した子どもも、人間を信じられなくなり対物性愛を持つ子どもも、誰もが等しく“よりよく生きよう”としていることを信じ、解のない悩みに対して言葉を紡いでいく。

 

常日頃から「教養」を大切にされているひとで、次の社会を担う子どもたちにそれを伝えている、伝えたいと願っているのであれば、『ここは今から倫理です。』は大いなる参考書になる。

 

そして、年代を問わず、いままさに「生きること」「幸せになること」「ありたい自分であること」に興味や悩みを持っているひとにとって、『ここは今から倫理です。』は、何度も読み直したい座右の漫画になるのではないだろうか。