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おんな城主直虎 ロスに効く!?マンガ『センゴク外伝 桶狭間戦記』で今川家の凄さを味わおう

まー「おんな城主直虎」が面白いです!

NHKの大河ドラマ「おんな城主直虎」の放送が、最終回までラスト1回と迫ってまいりました。

昨年の真田丸同様、Twitterなどでは、多くのファンから、強烈に惜しまれながらも最終回を迎えるにいたりました。
 

ハッシュタグ「#おんな城主直虎」は、様々に込められた脚本のメッセージを紐解いてみたり、登場人物、出演者の好きなところを叫んでみたり、まさにSNSの上でみんなで作品を楽しむファンが大量に。さながら、いつか見たジャンプ発売日翌日の学校の教室のようになっています。

今年のおんな城主直虎の特徴は、昨年の真田丸と良い意味で比較している人の多さです。
 

ちょうど直虎が終わる時代、本能寺の変前後と言うタイミングが、真田丸の第1話の主題、武田家滅亡のタイミングと近かったこともあり、共通の登場人物も後半に近づくほど増え、最早大河ドラマ名物(?)ともなった徳川家メンバーの伊賀越えシーンや、アナ雪なるニックネームを拝命した穴山梅雪の顛末など、お約束と新解釈が入り乱れるところに、筆者を含めて多くの大河ファンが身悶えするところでした。
 

去年、真田丸の放送が終わり、その喪失感に絶望していた頃には、翌年、マイナーな女性主人公の戦国時代の作品が始まることに、多くの人が不安視していました。実は私もそうでした。

しかしながら、2017年も蓋を開け、1年間この尻上がりな物語について行ってわかったことは、ともかく直虎は最高だったこと。脚本の森下佳子さんも最高、そして出てくる人出てくる人、大物役から脇役まで、とにかくみんな最高だったということです。
 

昨年の大河最終回では、大坂夏の陣にて徳川-井伊家の軍勢と豊臣-真田家の軍勢が対面し、主人公真田信繁をして「あちらにも、あちらの物語があったことであろう」と言わしめました。今年の最終回はそれをどう受けるか?

そして、来年の「西郷どん」こと明治維新史においては、おそらく冒頭近くに、井伊直弼暗殺と言う歴史変転のトリガーが描かれると推測されます。3年連続で井伊家がキーとなるということで、ひこにゃんと彦根市は稼ぎどきが続くと言えましょう(笑)

 

直虎の魅力と言えば、どこを書けば良いか本当に迷うところですが、話題になったのが各回のタイトルです。名作のパロディをもじっていて、後半の「信長、浜松行くってよ」「本能寺が変」あたりは秀逸の声が高かったです。以下は私のお気に入りデスノート回です。これもマンガ好きにはたまりません。

 

そして良く話題とされたのが、駿河(現静岡県)を拠点とし、主人公井伊家の主家にもあたる、今川家の出演機会や描写が色濃いことでした。

今川家と言えば、「何やら大きな国だったようだけど、桶狭間の戦いでは油断して織田信長に敗れ、後継ぎは蹴鞠と和歌しか才能もなく、桶狭間後はすぐにでもなくなってしまう」と、多くの物語の中では、言わばやられ役でした。

しかし、森下佳子さんの脚本にかかると、バカ息子氏真も、戦国の世に不戦を貫こうとしたり、歴史的転換点に、直虎ともども意外な関りを持ったりと、不思議な魅力をまとう人物に大出世。お見事です。
 

負け組とし消えていったはずの今川家&息子氏真をここまで丁寧に描いた作品は、映像作品としてはまさにレアもの。増してや、主人公側が「桶狭間の戦い」で負ける大河ドラマは史上初でしたでしょう。上品な顔立ちで、キレてみたりニコニコしたりと尾上松也さんの怪演も光りました。

さて、そんな今川家ですが、直虎においても、駿河の国に、京都と見まごうばかりの小さな都を作り上げ、井伊谷の国人、小さな井伊家に対する権力も絶大なものでした。

甲斐の武田信玄、関東の北条氏康とは、戦国史上「奇跡の同盟」と呼ばれる甲相駿三国同盟(こうそうすんさんごくどうめい)を結び、かの有名な川中島合戦では、武田上杉と言う二大巨頭の仲裁役になるなど、かなりの有力国であったわけです。
 

桶狭間ではあっさり負けてしまったようには見えますが、そこまでの今川家は何が凄かったのか?知ってるようで良く知らない、元祖海道一の弓取り、今川家の生い立ちについて詳しく書かれているのが『センゴク外伝 桶狭間戦記』です。

 

センゴク外伝桶狭間戦記(1) (KCデラックス)
著者:宮下 英樹
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今川家が位置した、駿河・遠江(現静岡県)は、温暖な気候で食物にも恵まれ、このあたりを拠点にする大名はそもそも基礎国力が高いと考えられます。

そこに、氏真の父、今川義元が、名家なりの下克上を経て君主となりました。今川義元は、内政家として歴史に残る人物です。本作はそうした今川義元と、隣国尾張の織田信秀・織田信長親子の戦いを、作名通り「桶狭間の戦い」を結実点として、重層なテーマの元繰り広げられる抒情詩です。

そして、2人の主人公今川義元と織田信長に対して、その2人に陰に陽に影響を与えたのが、義元の教育係から軍師となった、黒衣の宰相こと田原雪斎です。この人物は先述の三国同盟をまとめるフィクサーだったり、実はこっそり幼少期の徳川家康の教育などもしてたりします。

その田原雪斎に支えられつつ、義元は父が作った当時の最先端の分国法(当時の法律)「今川仮名目録」を、義元自身で改訂し、様々な政治改革を実施。寄子親制度による、大量の兵隊動員まで可能としました。いかに今川家が力のある一族だったかがわかります。
 

本作において、度重るのが「小氷河期」と「銭」という言葉です。それまで、幕府朝廷を頂点に、守護代と国人の支配であった日本の体制が「戦国大名」という、それぞれが明確な国を持つような形にいかに改まったか?そして、米よりも銭を中心とした、織田信長→羽柴(豊臣)秀吉の世にいかになっていったのか?

本編センゴクシリーズにおいても、精力的な新解釈を作品化した宮下英樹さんによる桶狭間からの戦国時代の描き方は、躍動感と説得力にあふれる魅力的なものでした。
 

応仁の乱から戦国大名の誕生の経緯を咀嚼し、今川家がなぜ強大になり、そしてその強大な今川家を、当時まだ小さかった織田信長がいかに打ち破ったか?

今川家が、何を目指しいかに強くなったか?それに対抗する織田家が当時国政として最先端を走っていた今川家をいかにして超えて行ったのか?本作からは思う存分吸い尽くすことができます。
 

冬の夜長に、直虎ロスを慰める入り口として、『センゴク外伝 桶狭間戦記』の手ごろな全5巻を一先ず電子書籍でお試しあれ。もし面白かったら、未読であれば本編センゴクシリーズもお楽しみください。

 

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「これも学習マンガだ!」プロジェクトでも『センゴク』を選書&コメント入れさせていただきました。

 

現在の既刊本が以下です。最終シリーズがあと少しで終わるというところです。

センゴクシリーズ本編その1『センゴク』全15巻完結

 

センゴク(1) (ヤングマガジンコミックス)
著者:宮下英樹
出版社:講談社
販売日:2012-09-28
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センゴクシリーズ本編その2『センゴク天正記』全15巻完結

センゴク天正記(1) (ヤングマガジンコミックス)
著者:宮下英樹
出版社:講談社
販売日:2013-01-04
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センゴクシリーズ本編その3『センゴク一統記』全15巻完結

センゴク一統記(1) (ヤングマガジンコミックス)
著者:宮下英樹
出版社:講談社
販売日:2013-12-27
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センゴクシリーズ本編その4『センゴク権兵衛』現在連載中。

センゴク権兵衛 1-9巻セット
著者:宮下 英樹
出版社:講談社
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