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豊かな女にブランドバッグなんていらない『凪のお暇』
凪のお暇 3 (A.L.C.DX)
著者:コナリミサト
出版社:秋田書店
販売日:2018-01-16
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夜逃げ同然、人生のリセット

主人公は大島凪28歳。都内でOLとして働いていたが、場の空気を読みすぎる性格で、他人に合わせて無理をした結果、過呼吸で倒れ、退職する。

 

「しばしお暇いただきます」

 

その言葉通り、彼女は三軒茶屋の2LDKのマンションを引き払い、家財道具および、おしゃれな通勤服や靴・バッグなどの一切を断捨離すると、郊外の6畳一間で新しい生活を始める。

 

無理矢理話を合わせていた同僚とは連絡を断った。同僚に凪のことをこっぴどく言いふらしていたキラキラ系の彼氏ともすっぱり別れた。

そして部屋着で趣味の節約をしながらマイペースに暮らしはじめる。たった100万円ほどの貯金を元手に。

 

新しいアパートの住人たちがまた魅力的だ。

 

上の階にいるモンペのおばさんは映画マニアで、ワンルームをホームシアター仕様にして映画鑑賞を楽しんでいる。

左隣には、美人だが男前に仕事をこなす母と大人びた美人小学生の母娘。

右隣には、タトゥーの入ったロン毛の怪しげな、しかし奇妙なほどに優しい青年が住んでいる。

 

そんな環境で、たった一人の凪はすこしずつ、すこしずつ、自分の心を回復させていく。

自分のコンプレックスのひどい癖毛を受け入れ、小さなことから、イヤなことをイヤといえるようになっていく。

そもそも自分をがんじがらめにしていたのが「みんなの価値観」だということを、彼女は痛いほどわかっていた。

仕事も恋人もおしゃれな立地のマンションも、すべてを捨てた今、彼女の幸せは彼女だけが基準だ。

 

空気を読まず、思ったことだけを口にして生きていけたら幸せだ。それはみんながわかっている。

でもそんな生き方は一部の天才にしか許されない。

だからこそ、怯えを克服して、小さくとも言いたいことを一つずつ口にしていく凪の姿は、痛快で心地よく映る。

 

モラハラ男か、優しいジゴロか…究極の選択

もう一つ、この漫画の大きな軸が、二人の相反する男性と凪との恋愛模様だ。

 

一人は、かつてこっぴどい言葉で凪を過呼吸に追い込んだにもかかわらずしつこく凪を追ってくる元彼・慎二。

もう一人は、まさかの怪しげな隣人・ゴン。

 

長所も欠点もすべて対照的な二人の間で揺れる凪。

慎二は仕事においては超優秀だが、モラハラの気配があり、ゴンは職業こそ不透明だが、誰にでも優しく、その優しさ故にたくさんの女を寄りつける。

2人の恋人候補のあまりの乖離ぶりには、究極の選択をみるようで、とても読み応えがある。

一方、何かをあきらめないと、何も手に入らないという厳しい現実が、その恋愛のむこうにちらつく。

 

痛快なだけじゃ終わらない。

暖かいけど、少しビターな独特の読み口が、本作の魅力だ。

 

before/afterで凪の哲学は彼女のバッグに象徴されているように思う。

 

OL時代は、ブランドもののバッグを。

ドロップアウトしてからは、パーカーを折りたたんでカバンに(詳細なやり方は3巻参照)。

 

寒くなったらカバンをといて、着て帰ってきてしまうという発想が、なんとも身軽ですてきだ。

ジゴロはともかくとして、モラハラ男ですら夢中になってしまうのもなんとなくうなずける。

 

かくも好感度の高い主人公・凪にいい恋愛があらんことを、そして彼女にこころ豊かな生活が続かんことをついつい全力で応援してしまうのである。

 

凪のお暇(2)(A.L.C.DX)
著者:コナリ ミサト
出版社:秋田書店
販売日:2017-11-16
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凪のお暇 1 (A.L.C. DX)
著者:コナリミサト
出版社:秋田書店
販売日:2017-06-16
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まとめ

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