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今の日本の状況を予言していたとしか思えない!未知のウイルス感染を描いた『エマージング』が怖すぎる

こんにちは、マンガ新聞レビュー部です。

「事実は小説より奇なり」といいますが、時にフィクションが現実を超えてしまうことがあります。

 

今回は現在の日本のパニック状態を予言したかのような作品をご紹介します。

その名も『エマージング』

日本で未知のウイルスが突如発生、蔓延するという物語です。

 

作者は予言者!?コロナ騒ぎに当てはまりすぎてて怖い……

まず先にお断りしておきたいのが、『エマージング』は2004年に単行本第1巻が発売された全2巻の完結作品です。
「感染症を描いたマンガ」という以外、今回の新型コロナウイルスとの直接の関係はありません。

 

なのですが、作者の外薗 昌也先生のTwitterを覗いてみると……

 

 

(現在はこの状態は打破されたそうです、よかった!)

 

ですが、本作を読んだ方々が「本当に現状に当てはまる!」という感想をアップされているのです。

 

それにしても、新型コロナウイルスの出現の16年前に発表された作品が「コロナに関するコンテンツの配信」と言われてしまうくらいの内容って、外薗先生が予言者なのか、それとも……?

 

ということで気になる内容のご紹介です。

 

『人類がこれまで遭遇したことのないウイルス』……治療法もマニュアルもない!

『エマージング』では、冒頭の方から、男性が道端で血を噴いて倒れるというショッキングな「発症シーン」が展開します。

 

これが所謂「クラスター」になるのですが、そこで感染した人々が医師たちの予想を超えて広がっていきます。

医師たちは見たこともない症状の対処に戸惑います。

 

そして、症状が出るのが早い患者の対応をしている間に、感染者が爆発的に増えてしまうのです。

医師や研究者の努力だけでは、新型ウイルスの感染力にとても追いつかないのです。

 

第2巻の途中で、国立伝染病研究所の森室長(ざっくり言うと日本トップクラスの細菌研究者)が、厚生労働省の役人・平山に「強制隔離・交通遮断による封じ込めをするのか」と尋ねます。

 

ウイルスに対して熱狂的なまでの研究者である森室長は、当然このウイルスの凶暴性を誰よりも分かっているので、この質問は当然です。

 

しかし、平山から帰ってきた言葉に、言葉を失います。

 

 

「日本で しかも東京都内で 未知の伝染病がアウトブレイクした!
あなたならどうやって封じ込めます?」

 

「そ……それは……」

 

「グローバリゼーションのもとに世界中に張り巡らされた交通網 流通網
複雑化した政治経済システム
そして巨大な情報ネットワーク……
人やモノの流れが そのまま 感染経路なんですよ!
日常生活そのものを誰がどこで どうやって止めるんですか?

我々には…………
海外から侵入する感染症を水際で食い止めるマニュアルはあっても
国内で発生しアウトブレイクした感染症のマニュアルはないのです」

(『エマージング』第2巻より)

 

 

平山の説明が、見事に私たちの今の日常を物語っています。

海外ではロックダウンされた都市もある中、日本では自粛要請という状況。

法律やルールを決めながらウイルスに振り回されている状態です。

 

『エマージング』の世界でも、報道で人々は不安を煽られ、パニックになり、行政の対応が遅れる間に感染者は増えていき……。

そう、『エマージング』でもっとも「今の状況に似ている」のは

 

ウイルスに対する人々の反応です。

 

「空気感染」という言葉をチラッと関係者が聞いただけで、確証も得ずに情報が漏えいしてパニックになるところ。

 

薬局にマスクを求めて人々が並ぶ姿は、まさに2020年の今の日本を見てきて書いたかのようです。

 

ちなみに第2巻の巻末に、医学博士の中原英臣先生の解説がついており、ペストの流行や当時の様子を描いたルネッサンス期の小説『デカメロン』にも触れられています。

 

ペストと『デカメロン』はつい最近テレビでも取り上げられており、この解説さえも「予言」じみていたので、引用させていただきます。

 

『エマージング』は現代文明を享受している人類への警告の書であり、未来に不安を感じない人々への予言書でもある。今世紀のいつの日か(中略)疫病が起きたとき、『エマージング』は21世紀の『デカメロン』となり、外薗昌也は予言者となるかもしれない。

 

……ゾッとします。

 

しかし、ここまで「予言じみた」作品があったということは、現実の私達の世界でも、「ある程度の想定」はできたのではないか……と考えさせされます。

 

外薗先生のクリエイティビティが「予言」を可能にしたともいえますが、逆に未知とのウイルスとの遭遇は「想像しうる世界」でもあったのではないか、と思わずにはいられません。

 

「現実」に立ち向かうということ。

『エマージング』では、ウイルスがめちゃくちゃ猛威を振るい、特にその症状が凄まじいです。

 

血が飛び散ったり皮膚がずるりと剥がれたりする描写があるので、苦手な人は避けた方が良いかもしれません。

 

ウイルスの脅威に対して、臨床医の主人公は怯え、厚生省の役人は怒り、人々は彷徨います。

 

それでも、医師の使命、行政の判断、そして患者さんの周囲にいる人たちの力、つまり人間の英知によって、「目の前の現実」に立ち向かっていきます。

 

しかし、『エマージング』は、当たり前ですが、これはフィクションなのです。

全2巻の単行本にまとまる起承転結があるのは、物語だからです。

 

『エマージング』で見つかる希望が、果たして今私達が生きている現実に見つかるのかは、分かりません。

 

「事実は小説より奇なり」となってしまわないことを祈るばかりです。

 

 

試し読みはこちらから

 

 

エマージング(1) (モーニング KC)
無料試し読み
著者:外薗 昌也
出版社:講談社
販売日:2004-09-22