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胸糞ショッキングすぎるけど、狂愛JKに共感しかない『君に愛されて痛かった』

こんにちは、マンガ新聞レビュー部です。

マンガを読んでレビューを書くのがレビュー部の使命(?)なのですが、ショッキングな名作はレビュアー殺しです。

衝撃的なまでに感情を揺さぶられると、語彙が出てこない!

今回は、そんな名作『君に愛されて痛かった』をご紹介します。

読み手をズタズタにしてくる「最底辺の恋愛マンガ」

『君に愛されて痛かった』は、恋愛マンガです。

 

ただ、一貫して「承認欲求」がテーマです。

 

好きな人に、友人に、とにかく誰でも何でもいいから、認めてほしい。

常に登場人物の悲痛な叫びが聞こえてきます。

(聞こえてこない日常パートはいかにここから奈落に落とされるかヒヤヒヤする)

もうそれが炸裂しすぎて暴力、凌辱、殺傷に至り……。

 

正直あまりいい気分がしないと思われる方もいる作品であることは間違いありませんが、これがまた「共感を呼ぶ」作品でもあるとのこと。

特に女性読者に強いファンが多いということで、あらすじを抑えつつ、見どころをご紹介していきたいと思います。

 

中学時代に遭ったいじめがトラウマで、同級生の顔色ばかりを気にする女子高生・かなえは、援助交際で承認欲求を満たす日々を過ごしていた。ある時、カラオケ合コンで知り合った他校の男子・寛に援助交際の現場を目撃される。それでも優しく接してくれる寛にかなえは恋をする。その想いが悲劇の幕を開くことに――。愛に飢え過ぎた少女の、小さな願いが辿り着く結末は?
(電子版書誌情報より)
 
 
ちなみに作者の知るかバカうどん先生、東方Projectのキャラを愛ゆえにボコる同人誌を出したところ、即売会でお客さんにめちゃくちゃ怒られたというエピソードだけでも、凄まじさを感じさせます。
 
 

共感ポイント1「性的承認欲求」

「承認欲求」の物語では、そもそも登場人物が「自分は何を欲しているのか」それ自体をしっかり把握していないことがままあります。

 

援助交際で満たされていたはずのかなえ。

でもどん底にいるかなえからしたら、眩しいくらいの寛君に恋をすることによって、それがかりそめだと気付いてしまいます。

 

というか、気付いていたけど、耐えられなくなってしまいます。

 

援助交際のまさに真っ最中に、寛君から連絡が来てしまうことによって、ヒビが入ります。

男側(これがいかにもセックス下手そうなラノベ作家という描写なんですよね……)は業者や美人局なんじゃないかとか気にし始めます。

一方かなえは、これまで苦でなかったはずの援助交際、というか男の存在そのものに違和感を覚え、それがどんどんと増幅……。

 

『何してるんだろう』

『何でここに居るんだろう』

『気持ち悪い』

『気持ち悪い』『気持ち悪い』「違う」

『気持ち悪い』『気持ち悪い』『気持ち悪い』「違う…」

『気持ち悪い』『気持ち悪い』『気持ち悪い』『気持ち悪い』

 

「お前じゃない〜〜〜ッ!!!!!!」

 

かなえは絶叫し、男の元を去ります。

 

このシーン、共感の気持ちに満ち満ちすぎて、思わず語彙を失いました。

というか、実際似たようなことをしたことがあるので(援交ではないです)まじでリアルな作品だと感じました。

 

しかも、さらにエグいのは、かなえにはいつも自分の話を聞いてくれる鳴海という少年がいるんですよね。

この少年もなかなかハードな境遇で、かなえに「男として認めてもらいたい」と願っているのですが、かなえにとって鳴海は「恋愛対象外」なので、鳴海の想いに気付くどころか、寛君への恋心を確認するようなことさえします。

 

このクソビッチな振る舞いが、後々彼女の束の間の幸せを奪っていくとは、思いもせず……。

 

「愛された実感が無いが故に、他人からの好意に気付かない」

これもまたすごくリアルで、刺さりまくりました。

 

共感ポイント2「女の友情」

「女の友情は会話一つとっても常にマウンティングの取り合い」

 

こちらも見事に描かれます。

クラスにおけるヒエラルキーやグループ内のパワーバランス。

常にこれを気にしているかなえ。グループのみんなに合わせようと努力します。

 

が、それは主人公のかなえだけではなく、かなえを見下し馬鹿にした側の女子たちも必死であることが分かります。

 

一歩身の振り方を間違えれば、下層に落ちてしまい軽蔑やいじめの対象となる狭く厳しい社会、それが学校。

その中でひたすら自分の居場所をキープしようともがく姿に、共感する人も多いのではないでしょうか。

 

共感ポイント3「存在自体の承認欲求」

最新刊の4巻では、性的・友情とはまた異なった、さらに深い「承認欲求」が出て来ます。

 

いくら努力をしても寛君には追いつけず、心から野球を楽しめていない、寛君と同じ野球部の越智君の内面が描かれます。

 

越智君はこれまたかなり歪さをはらんでいて、親に厳しく野球を指導され、野球そのものをエンジョイしている寛君よりも、ストイックで強い理想主義者です。

 

そんな越智君にとって、寛君は「自分の理想の野球選手」であると同時に「かけがえのない理解者」であったはずなのですが、ある事件がきっかけで、寛君の肩の調子が悪くなります。

 

また、寛君がかなえと仲良くなるに従って野球への集中力が逸れてしまっている(ように見える)ため、越智君は

 

「寛は野球が大事だからお前は身を引け」

 

みたいなことを、わざわざかなえに言ってのけるのです。

 

4巻に来るまで相当「承認欲求」による悲劇の連鎖が続いていたので、硬派だと思われていた越智君までもこんなことしちゃうと

 

「みんな、そんなに他人に過度に思い入れない方がいいよ……」

 

という気がしないでもないですが、それくらい越智君は野球と寛君が、自分の存在意義と癒着していたんでしょうね。

 

しかし、越智君の半ば脅しのような態度にも、かなえは屈しません。

そこからのかなえの絶叫がまた「自己を認めてもらいたい女の子の心からの叫び」って感じでアツいです。

 

暴力性と残酷さをリアルに感じさせるワケ

まだ連載は終わっていないのですが、単行本4巻まで読んで、同じ作家さんが「かなえがいじめられていた女への残酷な復讐」と「野球一筋の越智君の感情」を描ききれるのはすごいと思いました。

 

そして、背景や、キャラクター造詣なども、非常に細かく描写されているのですね。

 

知るかバカうどん先生の「リアリティへのこだわり」は、鳴海の生い立ちや、かなえや鳴海が住んでいる団地の描写からも感じられます。

大阪府ご出身とのことですが、越智君が野球(と寛君)に懸ける想いも、強豪校が多い地域だなと納得してしまう……!

 

最後に、それこそ細かいところですが、共感ポイントをもう一つ。

 

3巻・第18話。かなえが夜どこにも行き場所がなく、ショッピングモールのフードコートでぼーっとしながら、そこで

 

ある日突然大量殺人鬼か何かが来て

片っ端から包丁でみんなぶっ殺していって(お年寄りと子供は除く)

さっきまで友達の悪気地で盛り上がってたくせに友達見捨てちゃったりして

「ごめんなさい」

とか何とか泣きながら命乞いなんかしちゃって

 

と想像するシーン。

これ絶対一定の層の人は考えたことあると思うんですよね。しかもフードコートみたいな、人はたくさんいるけど、ちょっと落ち着けるところで。

殺人鬼が殺すシーンではなく、こういう想像をするシーン自体に、リアリティがある。

 

そんなリアリティをもって描いているからこそ、こんなハードな激情が破裂するストーリーに、「親しみ」を覚えられるのだと思います。

 

 

しかし、かなえがショッピングモール内を歩き回ってフードコートに来た経緯を考えると

「まじで自己中だし、こんなことを考えているのって滅茶苦茶おぞましい……」って思うんですが、その胸糞の悪さも魅力です。

きっとオチにつながるのでしょう。

 

 

そういえばこの作品、第1話の冒頭でもう結末がチラ見せされてるんですよね。

絶対幸せにならないと分かっている『君に愛されて痛かった』。

分かっていても、ハラハラしながら、続きを待っております!

 

 

試し読みはこちらから

 

 

 

君に愛されて痛かった (BUNCH COMICS)
無料試し読み
著者:知るかバカうどん
出版社:新潮社
販売日:2018-06-09