TOP > マンガ新聞レビュー部 > 柳楽優弥主演でドラマ化!受験生の我が子への"期待という名の狂気"が怖い『二月の勝者』

柳楽優弥主演でドラマ化!受験生の我が子への

私は昔、学歴コンプレックスが大変強くて病気のようでした。
短大卒だと受付とか事務しか求人がなくて、給料もずっと四大卒に敵わない。バカバカしいけど悔しい。

 

それで28歳のときに、社会人入試で早稲田大学に入りました。何が勉強したい、ということではなく、単純に学歴が欲しかった。

それでも、自費で学費を払うからには授業はほとんど出席したし、勉強はめちゃくちゃ楽しかったです。しかし何かを学ぶだけなら、大学じゃなくてもよかったはず。

 

そうして念願の「大学卒」という資格を手に入れて思うのは「早稲田にもバカはいる」ってことです。酔っぱらって噴水に入って警察沙汰になるとか、そういうバカってことじゃありません。

 

大学がゴールではなく手段だということがわからない人。そして周囲から「高学歴の人間は高飛車で嫌いだ」と言われて、損をしていることに気付かない人。

自分が少数のエリートだと思うなら、社会で触れ合う大多数は一般人ですよね。そこに嫌われるデメリットになぜ気付かないのでしょう。……紙のテストは解けるのに?

名門大学にはメリットがたくさんある。だけど……

大学受験の秘訣を描いたのが『ドラゴン桜』なら、中学受験のリアルを描いたのが『二月の勝者 ―絶対合格の教室―』(高瀬志帆)です。 

 

 

 

ここでは、すさまじいほどの受験戦争の様子が描かれています。

学校から帰ったあとに塾へ通い、春休みは特講、夏休みは合宿と、休む暇もなく子どもたちは勉強を続けます。
そして、テストの点数に一喜一憂する。

 

苦しくて泣く子もいれば、ストレスで髪を抜き出す子もいる。

まあ詳細は本編を読んでいただくとして「マジこんなに勉強ばっかりするのかよ、スゲー」って感じです。

 

私が猛烈に早稲田大学に憧れた理由は、いくつかあります。

まずみんな、めちゃくちゃ物知りなんですよね(そう見えただけ)。

NHKの大河ドラマから映画、小説、洋楽まで、いろんなことに詳しくて「ああ、この人たちは勉強ばっかりやってきたわけじゃないんだ、1日が36時間くらいあるに違いない」って思いました。

 

そして、毎日昼寝してゲームやってマンガ読んでた自分を、すっごく責めたんです。

 

名門大学のメリットは山ほどあります。
まず設備がいい。

 

私が現役で入ったのは女子短大でしたが、そこの総合図書館より、早稲田の学部図書館のほうが、数十倍大きかった。
短大では選択できる授業はほんの一部で、あとは全部クラス単位。

 

引き換え、早稲田は人数も多いから授業の選択肢も豊富だし、サークルや部活も充実しています。

学部が多ければ取れる授業も幅広いし、気が変わったら転部もできる。
全国から学生が集まるから、学生に多様性もある。

 

そして作中でも言ってましたが、大学を出たあとにさまざまな選択肢もある。

大手企業へ入りたければ入れるし、四大卒が科目免除になる資格もありますね。

かといってトラック運転手になった人もいるし、起業した人もいる。

 

可能性がぐんと広がるんです。

 

いい大学は結局、人生でお得なのか?

卒業してからOBに出会う人数も格段に違います。いつまでも早稲田を引きずるのはどうかと思うけど、やっぱり「おっ!」って思います。

人数が多ければ、その後出会う確率も高いから、話のタネにはなる。

 

中学受験で躍起になるのって、多分ですけど、「いい大学に入るため」ですよね。

 

それが東大京大、早慶なのだとしたら「ちっちぇえなあ」と思います。
このさき、ITの進化によって場所の垣根は取り払われ、少子化によって国内需要が見込めないので一層のグローバル化が進むでしょう。

 

そういう時代に、海外に行って「早稲田大学」なんて言っても、だーれにも通じません。むしろ外国人的にはなんとなく「日本大学」のほうが響きそうだし。

世界大学ランキングでも、トップの東大ですら36位。世界レベルで言ったらどうでもいいランクです。
そんなところ、目くじら立てて目指す価値があるかしら? 

 

大学を出たからといって、将来が約束されたわけでもない。

早稲田のサークル同期には、

 

逮捕されてミヤネ屋に出ちゃったヤツ。

「早稲田プライド」がいろんなことの邪魔をして、結局今、意に沿わないフリーターをしていて同窓会に来られないヤツ。

大企業に就職したけど病んじゃって自宅警備員のヤツ。

 

など、こういうのが一定数いるんです。名門校プライドが肥大化したまま大人になると、本当にやっかいだなと思います。

 

周囲に「すごいすごい」と言われてその気になってはみたけど、実は紙の問題を解く能力しかない。

卒業後、なんの実績も出していないし、出せない人なんていっぱいいます。

普段は隠し持ってて、奥の手として効果的な場面で使うのが最も効果的だと思います。

つまり、学歴は「目的ではなく手段」なんです。

 

受験勉強はスポ根だっ!

私は以前、テニスにバカはまりして草トーに出まくってました。

試合に出て弱点を浮き彫りにしたら、それをつぶすためにレッスンを受ける、という感じで、ハッキリ言って楽しんでやってた感じはないです。
なにやってんですかね、すでに社会人だったのに。

 

そしてその後、テニス誌のライターを始めたので、プロテニス選手とたくさん知り合いました。

 

小学校低学年から本格的に練習を始めて、日本中のトーナメントに出て人との優劣を競い、切磋琢磨しないと、プロへの道は開けません。

 

そうやって腕を磨いても、結局プロになれない子は山ほどいます。

ピークが小中学生で来てしまう子もいます。

プロ選手の道って、ものすっごく鋭利な三角形をしたヒエラルキーの世界なんです。で、裾野になると一気に広がる、まるでクリームの角のような形です。

 

それでも、テニスをガツガツやっていた頃は、子どもの頃に思いっきりテニスに打ち込める環境を作ってもらえた彼らが、めちゃくちゃ羨ましかった。

 

スポーツを熱心にすることも、勉強を熱心にすることも、「かるた」も、意味は同じだなあと思います。

子どものうちに、何かに邁進して努力をする経験は、目の前の結果が出なくても、決して無駄じゃない。

作者もそう思っているのか、空手やサッカーの例えがよく出てきます。

 

そう、つまり私は、子どもの頃になにかに熱中して「頑張った」といえる何かが欲しかったんですね。

 

恐ろしいのは、悪魔のような親たち

作品を読んでいて思いますが、親が子どもにかける期待がめっちゃ怖い。

 

有名大学に入って欲しくて大金をつぎ込み、偏差値で一喜一憂して子どもに勉強を強いて、得たかったのは子どもが逮捕されることでしょうか。

フリーターになって借金に追われることでしょうか。

学歴さえよければ、あとはなんでもいいと思えるでしょうか。

自分の期待のために子どもに年間100万以上費やして、何も結果を望まずにいられるんでしょうか。
親の価値観なんて年齢分だけ古いのに。

 

私は、自分の人生で後悔していること、夢や希望を子どもに押しつける親にだけはなりたくなかった。

そんなプレッシャーを背負わされた子どもが幸せだとは思えない。まずは自分自身に納得することだろうと思っていました。

そしたらいつまで経っても納得いかないので子どもを持たない人生になりそうですが、誰かを不幸にするよりはいいかと思っています。

 

親って、意識して自制しないと狂気に陥ってしまうんでしょうか。

なんて恐ろしい。
柳楽優弥と井上真央でドラマ化が決まったようですが、これを観て、頭が冷える親がいるといいなあと思っています。

 

作品が、どんな結論を導き出すのかは分かりません。
だけど個人的に思うのは、大学は大手のほうが断然いいけど、「イヤイヤ死ぬほど勉強して入る価値や将来の保障があるところでもない」ということです。

 

ホントに地頭のいい人は大学とかいらないですし。

ホリエモンも、猫組長も、スティーブ・ジョブズも、タモリもみんな中退。

早稲田大学は特に「中退するヤツほど活躍する」とか言われているし。

 

最後にひとつだけ、猛烈に言及しておきたいことがあります。
とりあえず主人公の務める塾の校長としてやって来た黒木先生が、とにかくかっこいいのです……。

 

彼は、右往左往する子どもや親を、心理学やコーチングの手法を使ってコロコロと思うように操っていきます。

これらを勉強したことがある人は「うぉっ! アレ使ってる!」と思うはず。

 

彼の言うことは、いちいち納得させられるんですよね。

「凡人こそ勉強するべき」

 

ほんとそうだな、と思います。
そして、ちょいちょい出てくる黒木先生の秘密におわせ……。

ああ、黒木先生に翻弄されたい……彼のトラウマを癒やしたい!!!

 

 

 

 

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