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『信長の野望』をやりつくしたものだけが最後にたどり着くあの楽しさを「読む」!『淡海乃海』

これだけ異世界転生の物語が増えてくると、どんな異世界転生が最高かという妄想もはかどります。

最強の魔剣とともに、隠密行動から大合戦まで、寄らば斬るぞと大活躍の勇者や魔法剣士か、
大賢者のスキルをベースに、あらゆる知識を縦横無尽に活かす最強の魔法使いとなるのか、
はたまた、料理の経験を活かして、転生先の世界に新しい味を広める伝道師となるのか。

これらの妄想こそ、異世界転生ものを2度美味しくいただく醍醐味と言えましょう。

 

わたしは異世界も好きですが、歴史オタクの戦国時代スキーでもあります。

歴史転生と言えば、医療もの『JIN』、料理もの『信長のシェフ』、高校生もの?『信長協奏曲』、『群青戦記』など面白い作品は沢山あります。

 

そんな中で、最近出会って「その手があったか!」と刮目したのが『淡海乃海 水面が揺れる時』です。

 

 

淡海乃海 水面が揺れる時 第1巻 (コロナ・コミックス)
著者:もとむらえり,イスラーフィール,碧風羽
出版社:TOブックス
販売日:2019-03-25

 

 

主人公は、あの朽木元綱(基綱)です。

え、知らない?

『信長の野望』にも近江地方の武将として出てきますよ?

統率・武力が50前後、知力・政治が60くらい。ゲーム後半は後方の内政要員ですね。

有名な「朽木越え」の元網ですよ?

信長が朝倉攻めの最中に浅井に裏切られ、わずかな家臣団を引き連れ逃げ延びる有名なエピソードです。
大河ドラマ『麒麟がくる』では、吉田鋼太郎さん演じる松永久秀の見せ場となること受け合いです。

 

『淡海乃海』の主人公は現世では50歳まで生きました。
ずっと独身の働き詰めで、人生後半に歴史小説でも書いて余生も楽しもうかと考えるような落ち着いた大人です。

 

スタート時点からちょっと変わってるのですが、そんな主人公が転生したのは戦国時代の初期、まだ信長の桶狭間も起きてない頃です。

 

良い位置にいる朽木家に転生した歴史オタク

朽木家の領地は北近江の西の端、今でいう滋賀県の琵琶湖西側です。京都とは鞍馬山から北上した先にあるという立地です。

そんな地の嫡男として生まれるところからやり直した彼が3歳の時、父が戦死し家督を継ぐこととなります。

 

歴史小説を書こうとしていた彼のこと、この状況で何をどう振舞えば良いかは心得たものです。

朽木家は小さな一地方の国人なのですが、少し面白い立場にあります。

 

  1. 京都に近いため、何かあると落ち延びる足利将軍家をかくまう立場。
  2. 将軍家との付き合いで、しょっちゅう京都に上京する後の上杉謙信との付き合い。
  3. 琵琶湖はもちろん、若狭湾はじめ北陸からの交通の要所となる場所での、殖産や交易としての立場。
  4. 信長が台頭する前の琵琶湖湾岸南北戦争、六角VS浅井朝倉のはざまにいる立場。

 

これらの状況を正確に分析し、当主になるなり産業を振興し、関所を廃し、富国強兵よろしく兵農分離政策まで取る徹底のしよう。

 

そして成長した朽木家が躊躇なく行ったのは、本来歴史上そこでは死なない重要人物を、有名な合戦で、朽木家のためにあっさり仕留めるのです。
これはなかなか無い展開、そのあたりからもかなり面白くなってきます。

 

本来は右往左往する立場の弱小国人が、気が付けば10万石の立派な戦国大名になり、戦国の重要国にまでのし上がっていきます。

そう、歴史の知識を持って、ユニークな立場の大名の嫡男として生まれる。
新しいパターンのチートです。

朽木が10万石の大名になるとか、ちょっと考えにくいですわね。

 

この展開、上手い。上手すぎる。十万石饅頭。(先日観た『翔んで埼玉』で久々に聞きました)

 

 

信長の野望をやりこんだものだけが見られる世界

この作品には、強い既視感がありました。

そうこれは、『信長の野望』で島津や織田のイージー大名からはじめ、真田や津軽などの中難度を経て、姉小路とか小田氏治とかでプレイしちゃうやりこんだ末のあれです。

 

本来勝てる要素などないはずの弱小大名で、積み上げたゲーム技術だけを頼りに、最後は武田や上杉、北条などの大大名も下してしまおうと言う、ベテランプレーヤーのお楽しみです。

 

今でこそゲーム動画という手軽なものがありますが、一昔前まで、コンシュマーのシミュレーションゲームを上手にプレイするひとさまのプレイを見られる機会はなかなかありませんでした。

 

古くは30年前の「コンプティーク」なんかでは、そうした記事もありました。
最近だと、まぁ最近でもないのですが、やまもといちろう氏のこの記事は、私の中では崇拝の対象です。(氏はゲームが本当に上手いと思います。文章もプレイもですね。)

 

 

【山本一郎】「信長の野望・創造 with パワーアップキット」プレイレポート――輝け! 魂の姉小路家!~怒涛の勢力拡大篇~

 

こうした、歴史やゲームを知り尽くしたうえで、弱者が強者を凌駕するゲームと歴史IFの楽しさを、本作は久々に思い出させてくれました。

 

週末は久々にPS3を引っ張り出して「信長の野望・創造 戦国立志伝」やろうっと。

 

現在、マンガは第3巻までですが、小説は第7巻まで出ています。ちょっと待ちきれないので、最近は小説を読み始めました。

コミックも原作ラノベ版も第1巻はkindleアンリミテッドで読み放題になっていますよ。

 

 

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