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美しすぎると怖くなる。心をざわつかせる『北北西に曇と往け』

珍しく東京で雪が降り、とても寒かった3月某日、大学の卒業旅行で行ったデンマークの曇った空とあるマンガを思い出しました。

入江亜季先生の『北北西に曇と往け』です。

北欧の国、アイスランドを舞台に、17歳の青年・御山慧が生活費のために探偵稼業をしながら暮らしていくのですが、この作品、とにかくとっっっっても「美しい」んです。

慧くんが美しい

元も子もないんですけど、私はこれでこのマンガを買いました。ジャケ買いです。

北北西に曇と往け 1巻 (ハルタコミックス)
著者:入江 亜季
出版社:KADOKAWA
販売日:2017-10-13

 

第1巻の表紙は、アイスランドの広大な荒野にまっすぐに走る道路と、それを背にすっくと立つ慧が印象的です。

 

スタイルの良さを存分に活かしたシンプルな服装。

片方だけアンニュイに見えている切れ長の目はどこか物憂げに遠くをまっすぐ見つめている。

 

そして帯を見ると「17歳」の文字。

えっ? これで17歳? 嘘でしょ?

 

読んでみると、慧は女の子が苦手で、何よりも肉が好き。

そして車を愛し、車と「会話」する、ちょっと不思議な、でもとても「男の子」らしい男の子です。

 

もう慧くんのイケメンっぷりを見ているだけで満足してしまいます。

 

しかし実はこのスタイルの良さ、フランス人の祖父・ジャック譲りのもので、女好きのジャックとの掛け合いも楽しみのひとつです。

 

装丁が美しい

もうこれはぜひとも、手に取って触ったりめくったりしまくってほしい「逸品」です。

 

既刊4巻すべてに統一された青い空を基調とした色使いは荒涼とした北欧の空を思わせますし、茶色のクラフト紙の少し堅い質感は植物の少ないツンドラの大地を彷彿とさせます。

 

そして、表紙と裏表紙の文字のデボス加工(凹加工)!

 

少しざらっとした紙の質感も相まって、いつまででも触っていられるような、クセになる質感です。

 

また、裏表紙には毎巻作中に登場するような小物の類いが描かれていて、クールな表紙とは対照的にあたたかみを感じさせてくれます。

 

まるで慧くんとアイスランドを象徴しているようです!

 

しかもページを開くと冒頭はカラー!!!

表紙だけでなく本編でも美しい色使いを見られるなんて贅沢ですね。

 

もちろん電子でもイケメン慧くんは堪能できるんですが、この作品に関してはぜひ紙の本を手に取ってほしいな…と思います。

 

風景が美しい

ここまで来てまだ作品の内容に触れていなくて大変恐縮なのですが、あとひとつ、美しいものの話をさせてください。

 

とにかくアイスランドの風景描写がめちゃくちゃ美しいんです。

 

慧が荒野を車で走るだけでもとても絵になるんですが、美しい風景が特に顕著なのが、第2巻で慧の小学校のときからの友人・清が日本から遊びに来る回。

(慧と清のでこぼこなようで、しっくりハマっている関係性もみどころです)

 

とにかくアイスランドのスケールのドデカい美しい景色を、存分に味わえる回になっています。

 

美しいけれど、どこか自分たちを脅かすような畏怖をも感じさせるような風景描写には、目を見張るものがあります。

ぜひともあの風景、劇場アニメとかで見てみたいものです……。

 

まるで清くんとアイスランド旅行をしているような気分になれる第2巻を読み終わる頃には、「アイスランド行きたい~~~!」と思うこと請け合いです。

 

アイスランド欲をあまりにかき立てるこの作品!!! なんと! 公式アイスランドツアーも企画されていたほど!

 

公式聖地巡礼ツアーは、近年だと『BANANA FISH』なんかでも行われていましたが、海外だとまた国内と違った感慨がありそうですよね。

 

昨今の厳しい状況のなか、なかなか旅行、しかも海外へ、というのは難しくなっているかと思います。

ただ、公式サイトでは美しいアイスランドの風景が、入江先生のおすすめコメントつきで紹介されております。

 

特別企画『北北西に曇と往け』アイスランドツアー

 

写真を見ながら北の大地に思いを馳せてみてはいかがでしょうか…!

(ちなみに私は以前ノルウェーでスキールを食べましたが、アイスランドのものだとは全然知りませんでした。)

 

また、希望する声が多ければもしかしたら続編が企画されるかも……?

私ももし次があったらぜひ行きたいものです。

 

美しい兄弟の謎

慧の探偵稼業には、慧の不思議な能力が使われていますが、弟の三知嵩にも不思議な能力があります。

 

慧と違って謎が多い三知嵩は、序盤から不思議な存在感を出していました。

 

精悍な兄とは違った繊細な美しさをもつ三知嵩は、どこか底知れない恐ろしさがあります。

 

美しすぎて怖い、というような感じです。

 

しかし、そんな三知嵩は兄の慧のことが大好きです。

 

慧や、自分を大切にしてくれる人のことは大事にしますが、それ以外との扱いの差が大きく、慧の知らないところでどうも何かをしている様子

 

美しくも恐ろしい三知嵩の謎に慧はたどり着けるのか……?

 

番外・かわいいハガキ

よく単行本のなかに「読者アンケート」のハガキがはさまっていることがありますよね。

 

このマンガにもそれがあるのですが、これがとてもかわいい先生の手書きデザインなんです。

 

もったいなくて出せなくなってしまいますね!

 

 

本作『北北西に曇と往け』の掲載誌「ハルタ」は、年10回の刊行で、最新4巻が今年の1月に出たばかりで、おそらく次巻の発売は来年の1月になります。

 

1年後というのはだいぶ先だな、と待ち遠しくなってしまいます。

 

でも、毎年寒い1月に出る、というのも、なんともこの作品らしい風情があるような気がします。

 

 

美しく雄大な自然と、美しい兄弟の謎が魅力のこの作品、ぜひ、実物を「手に取って」ほしいマンガです。

 

>>>第一話の無料試し読みはこちら(「ハルタ」/KADOKAWAページへ)

 

北北西に曇と往け 2巻 (ハルタコミックス)
著者:入江 亜季
出版社:KADOKAWA
販売日:2018-03-15
北北西に曇と往け 3 (ハルタコミックス)
著者:入江 亜季
出版社:KADOKAWA
販売日:2019-01-15
北北西に曇と往け 4 (ハルタコミックス)
著者:入江 亜季
出版社:KADOKAWA
販売日:2020-01-14