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待ち受けるは永遠の孤独エンド?『阿・吽』最新11巻が衝撃展開すぎる!!!

アニメ『コードギアス 叛逆のルルーシュ』監督の谷口悟朗氏は、かつてこんなコメントを残していた。

 

「下着を洗いあえるのが、真の男の友情」

 

見た目や言葉、印象ではなく、見られたくない(自分でも気付いていない)ことすらさらけ出し、触れることができる。

それこそが“ホンモノ”の関係。

 

最澄と空海を描く『阿・吽』最新11巻では、最澄と空海が(お互いが)お互いの“ホンモノ”を露わにする衝撃展開。

史実では最澄の空海への弟子入りから二人の不仲がはじまるのだが、まさかこんな流れになるとは……

 

 

阿・吽 (11) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
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著者:おかざき 真里,阿吽社
出版社:小学館
販売日:2020-03-12

見てしまった、本当の願いと姿

 

以前、ぼくは『阿・吽』のレビューにて二人はお互いの“誰にも理解されない一隅”を照らし合う仲、と表したが、どうやら著者であるおかざき真理先生が考える二人の関係は、そんな穏やかなものではなかったらしい。

 

→過去レビュー「一隅を照らし合った二人―比叡山延暦寺大書院『阿・吽』複製原画パネル展示レポート(後編)」

 

空海に弟子入りを願った最澄。

待ち望んでいた空海は早速に灌頂(正統な継承者とするための儀式)を始めようと言い始める。

そして空海は、荘厳な雰囲気の中でお互いの道が重なることを確信していた。

最澄は誰よりも自分と同じ高みにいて、誰よりも自分と一緒にある存在だと思っていた。

 

だが、儀式の中で肉体をすり抜けた魂のシンクロにおいて、その確信は揺らぐ。

 

最初の灌頂で、空海は根幹の望みを暴かれた。

満たされて、応えきったその先に己が願っていたのが「死」であるということ。

そして、最澄は自分と同じ道を歩むことはないという真実を。

 

すると、次の灌頂で空海は最澄の“本心を妨げる”壁をたたき壊し、根幹を露わにする。

使命と責任という大きな舫(もやい)に包み込んでいた、押し殺してきた求道への思いが現れ、(見たことのない)最澄の高笑いを引き出していく。

 

表現されているのは精神世界の光景だが、まるでノーガードボクシングのような攻防に、読んでいて呆然とさせられた。

 

二人は、本当の「阿」「吽」と言い合える場所への入り口に立った。

そして、入ってもゴールが違うことを、知ってしまったのだ。

 

この展開に対し(一見サイドストーリーに見えて)現世で“ホンモノ”に巡り会えない存在として登場する藤原冬嗣が見逃せない存在になっている。


冬嗣は見た目でしか自分を見ない人間へ愛想を尽かし、真実を知っている「亡霊の」田村麻呂との会話で、自らという存在を確認する。

 

ちょっと薄気味悪いホラー展開なのだが、その冬嗣が誰よりも空海の本質を理解している、というのが超人・冬嗣の優秀さと孤独さを引き立てている。

 

待ち受ける離別のとき

『阿・吽』において、最澄は報われないポジションだった。

努力しても、言葉を尽くしても、“きれい事”は実現せず、奈良仏教との対立で苦悩する日々。

弟子は大成せず次々と自分の元を離れ、己の肉体は悲鳴をあげ続けていた。

 

作品上、最澄よりも若く、密教の奥義を得て、才覚で奈良仏教とも友好関係を築いた空海のさわやか超人ぶりをみてしまうと、地味で幸薄めだ。

 

ところが、この第11巻で空海が見た最澄の内面は、豊かさを湛えた、大きく力強いものだった。

 

「最澄は、足下の冷たさを抱えたままゆっくり歩んだ。それが彼の優しさであり強さになっている」

 

空海をして「大きい!」と言わしめたこのシーンは、人知れず努力してきた人全ての希望になる、感動の一幕だ

 

後年、最澄の教えは体系化され、多くの新流派を生み出す土壌となっていく。

(彼がその光景をみることはなかったが)今巻で示された描写は積み重ねたものは報われていく、ということを暗示しているように思う。

 

これに対し、ここまで順風満風に進んできた空海には、輝きの陰りを予期させるシーンが多かった。

(前巻で暗示された空海の不幸フラグが、つながっているシーンもあった)

 

特に空海の最期を考えると、彼は、悟りを開くために行き続けているのではなく、望みを果たせないから生き続ける、という文脈すらみえてくる。

「これで、また生きねばいけなくなったか。今度は永遠か、空海」

 

これ、永遠の孤独フラグではないか……。

 

最澄の享年を考えると、残された時間はあと僅か。

“二人にしかわからない”結末が近づいているような気がする。

 

 

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