TOP > ギャグ・コメディ > ギャグ?エロ?是が非でも女の股をくぐるための奮闘記『アザラシの武田くん』

ギャグ?エロ?是が非でも女の股をくぐるための奮闘記『アザラシの武田くん』
レビュー執筆者:miyamo

ギャグ漫画『アザラシの武田くん』

本日は、実業之日本社「COMICリュエル」で配信された『アザラシの武田くん』をご紹介。

 

高校生男子・山無くんが転校初日に通学路でぶつかった相手、それは自分が入るクラスの同級生だった。何やら古式ゆかしいトキメキ展開の幕開けみたいなシチュで始まる本作だが、その同級生がひと癖もふた癖もある。

 

なんといっても、アザラシなのだ。いや、アザラシに似ている人だとかアダ名などではない。生物学的に、海棲哺乳類のアザラシそのものなのである。

 

アザラシの名前は武田くんという。アザラシだけどイスに座って授業を受け、アザラシだけど部活に所属し(よりにもよって陸上部)、アザラシだけど筆談でコミュニケーションをとる彼は、まわりの生徒からも先生からも好かれる人気者。えっ、おかしいと思うこっちがおかしいの!?

 

混乱の極みに陥った山無くんだが、さらなる驚きが待っていた。

 

じつは武田くん、本来は人間なのだという。かつてアザラシが落っこちた泉で溺れたことによりアザラシに変身する体質に……『らんま1/2』かよ! と思わず山無くんがツッコむ境遇の武田くんには、ひとつの秘密があった。

 

彼はクシャミによって人間からアザラシになるのだが、逆にアザラシから人間へ戻るためにはある特殊な条件を満たさないといけない。その条件とは……女のひとの股の間をくぐること! 知られたらドン引きされる情報なので秘密にしているわけだ。

 

そして、とあるアクシデントでそれを知ってしまった山無くん。彼のほうにも秘密があった。長身で体格ガッチリ、筋肉マンな山無くんだが、趣味がえらく乙女チックで無類のかわいいもの好きなのだ。過去にはそれを知られて男のくせにとからかわれ、苦しんだこともある。

 

2人はおたがいの秘密を守ることを誓い、さらに山無くんは武田くんが人間の姿に戻りたい時に協力するよう要求される。

 

いや、でも女の股をくぐるんだよね? 山無くんは男の子。どうするの? 答えは簡単、女装すればいいじゃない! いいのか!?

 

なかば無理やり女物のスカート服を着せられた山無くんのガチムチな脚と脚の間へ突進し、スポーンとくぐり抜ける武田くん。結果やいかに!?

 

……と、ここで単行本第2巻の表紙を見ていただきたい。

 

 

 

 

アザラシの肉体にほっそりしたヒトの手足がついた妖怪変化。なんだこれ。いや妖怪ではなく武田くんだ。女装した山無くんの心が女でないぶん、変身解除が中途半端になってしまったのだ。でもまあ跳んだり走ったりできるから、これはこれで!

 

そんな根性たくましい武田くんにふりまわされ、山無くんの波乱に満ちた日常は続く……。

 

そんな具合に、動物ネタ+変身ネタで仕立てた1となっている。ポンポンと弾むような言動のテンポが小気味よい笑いを生み、まずはそれを楽しめばいいのだが、その笑いの底に敷かれているセンシティブかつハートフルな味付けにも注目しておきたい。

 

本作の終盤、第16話で、女の子の人形をほしがり親に止められた幼い男児の悲しみを山無くんが宥めるくだりがある。人間に変身するアザラシが人気者になれる学校にいるのだ。趣味のことで男や女のらしさに悩んでる場合ではないじゃないか。

 

ある時、武田くんはこう言った。

「山無くんが思ってるほど深刻なことじゃない それに人と違ったり変だったりすることって ちょっと楽しいと思うんだ」

自分や友達の“変”をあたりまえとして受け入れる、ひじょうに誠実な人間観、青春観がそこにはある。学校に通うアザラシという、出オチになりかねない絵ヅラからこういう深いところへもってくるのか〜、といたく感心できる運びになっているのだった。

 

なお本作のWeb配信はその16話までで、最終回は2019年12月20日発売の完結巻、単行本第3巻に収録されている。

 

上で述べた男の子を励ますエピソードから今度は山無くん自身がかつて趣味を否定された相手に直面する、大きな試練の訪れがどう着地するのか。アザラシのクラスメイトを笑顔で受け容れる学校の仲間たちを信じて見届けよう。

 

 

アザラシの武田くん1 (リュエルコミックス)
無料試し読み
著者:えびぽ
出版社:実業之日本社
販売日:2018-11-16

 

 

こちらの記事は、記事提供元のマンガの宇宙を旅するためのWebマガジン「コミスペ!」でも読むことができます。