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数字+感性で挫折から這い上がれ!異色の料理マンガ『フェルマーの料理』をもっとオススメする3つのポイント

 

2020年1月に開催された「マンガ新聞大賞」

こちらで8位になった作品が『フェルマーの料理』(小林 有吾)。

 

センスや感性、芸術性といった唯一性がうたわれることの多い料理マンガのなかにあって、数学による再現性料理環境の工夫によるクオリティアップなど、これまでにない料理の世界を提示した作品だ。

(大賞の発表日、私が登壇し、作品の魅力を語らせていただいた)

 

 

「第3回マンガ新聞大賞授賞式」にて佐渡島庸平さん(左)と熱弁する私(右)

 

 

コピーには「俺たちは、料理を以て神に挑む」とあるが、第1巻はそこに至るまでの導入であり、エピソード0的な立ち位置だ。

 

そこで、本筋の第2巻発売前に、本作品の魅力を3つにわけてご紹介。

2019年の実績をもってマンガ新聞大賞8位の実力を披露したわけだが、さらに2020年も引き続き『フェルマーの料理』に注目してほしい。

 

 

フェルマーの料理(1) (KCデラックス)
著者:小林 有吾
出版社:講談社
販売日:2019-06-28

1:夢に挫折した主人公が、別の場所で費やした月日を活かす熱い展開

主人公・岳は幼いころから夢見た数学者の道を断念してしまう。

自分には、人生全てを注ぎ込める熱さはない。ただ、数学が好きなだけだったのだ、と。

 

しかし、料理と天才シェフ・海(かい)との出会いで、捨てたはずの「夢」が新たなステージで躍動し始めていく。

自信なさげに作り上げた岳の料理が、ゲストを驚愕させるシーンは必見だ。

 

挫折からの再生は、少年マンガでは鉄板展開。

しかし、料理というスタイリッシュな印象の強いジャンルでは珍しい泥臭さを醸し出す。

 

「綿密な計算と理論をもって一品にむかう 数学と料理のマリアージュ」。

組み合わせが生み出す新たな可能性。

一気読み請け合いだ。

 

2:「積み重ねの尊さを感じさせる物語」

本作後半のエピソードで、岳は数学的発想で料理を作ろうとする。

しかし、数字という絶対的存在を前提にした発想は、目新しさを生み出すことはなかった。

 

タイムリミットが迫る中、愕然とする岳の脳裏に宿ったのは、“数学者への夢”を誰よりも応援してくれた、父の料理「お茶漬け」だった。

過去の自分を作り出してくれた料理が、岳に斬新な発想を吹き込んでいく。

 

過去を否定しても、手放さなければどこかで活きてくる。

ベタな展開ではあるが、胸を熱くさせるシーンだ。

 

3:「大事なのは「主観」と「客観」」

数学を料理に取り入れる、というコンセプトを打ち出しながら、本作はそれが全てではないと言い切る。

数字化できない主観こそ、未知への扉を開くカギになる。

「あなたが~」「自分は~」から始まる主観的目線や「楽しい」「おいしい」といった主観的感覚は、物事を生み出すことに不可欠なのだ。

その主観と客観とのバランスから、新しいものが生み出させる。

 

仕事や日々の生活の中で、私たちは「数字化」を求められることが増えた。

でも、「数字化」したことで、本来あったものを排除してはいないか。

 

もし、日々の生活が味気ないものであるなら、岳がたどりついた「解」はそれを変えるヒントになるかもしれない。

 

物語はまだ始まったばかり。

次巻以降は文字通り「神に挑む」戦いが始まるのだろう。

その前に1巻未読の方は、是非手に取ってほしい。