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艶めかしい三蔵法師に口枷とは!クリエイター魂がほとばしる『西遊奇伝 大猿王』がアツい!

鬼化した女子に口枷といったら……『鬼滅の刃』だが、色っぽい三蔵法師に口枷をして、目隠し&後ろ手に縛って、それを猿が連れまわすという、いかつい初期コンセプトの漫画が1995年(平成7年)に始まった。

 

寺田克也先生の『西遊奇伝 大猿王』だ。

 

1995年といえばいかつい洋画がヒットした年だった。

 

  • 神にかわって連続殺人鬼が人々を罰する『セブン』。
  • 人類を救うため、罪人をタイムスリップさせる『12モンキーズ』。
  • 見えないBOSSからの仕事でワルたちが翻弄される『ユージュアル・サスペクツ』。

 

どれもいまだに語り草になっているいかつい作品たちであるが、そんな作品たちが生まれた1995年に本作も爆誕した。

 

まず、悟空だが欲望と本能のままに生きている化け物で、暴力と自己顕示欲の塊そのものとなっている。

 

面相がもう凶悪なことこの上ない。

 

正義なんて微塵もなく、現れる妖魔との闘いもどっちが「悪」といった判定ができないため弱肉強食のサバイバル戦を観戦しているような心持ちになる。

 

そこには「正義」や「友情」といった戦いを正当化するような概念はなく、

「気にいらないから倒す」

「やってきたから倒す」

というむき出しの闘争本能のみが燃えさかっている。

 

まさに存在証明のための戦いを続けていて、挙句の果てにおシャカ様すら存在をゆるさないという恐ろしいもので。

 

「オレの王はオレだっ」

「てめぇの力でもねェのにハシャギやがってバカヤロウ!!!」

「そんなんでくだらねー世界を手にいれて嬉しいか オラ!!!」

 

……もう吐き出す言葉がめちゃめちゃ格好いい……!!!

大猿王語録ですな。

 

そんなところから寺田克也先生が描く悟空は、なにかクリエイター魂がほとばしっているなぁ、とも感じられるのです。

悟空自体が自己を証明するクリエイティブのど真ん中にいるような勇ましさに惚れ惚れします。

 

その悟空が連れまわす三蔵法師はというと口枷に目隠し、後ろ手縛りといった拘束状態にあり、どちらかというと捕虜のようになっていまして。

『ドラゴンボール』の悟空がブルマをその状態で連れまわしていたらと思うと……しゅみましぇん、脱線しました。

 

おまけにこの口枷をとると本当にヤバイんです、これが。

呪詛みたいなものを唱え始めて、猿の頭をぎゅうぎゅうしめつけるのはお約束ですが、キスをした相手の背中から仏像のような肉の塊を生やさせて殺すという……もう文字で表現しようとすると、なんのことやらですね。

 

ぜひ、三蔵法師から口枷をとったときの危険性(ヤバさ)を単行本でご確認いただきたい。

 

全編カラーでどのコマも寺田先生のアート作品として堪能できる生唾ものの作品なので、強めのお酒のおともにいかがでしょう。

 

また、作風が気に入った方はぜひ『ラクダが笑う』もどうぞ。

やはりこの作品も正義や友情などを微塵も感じさせないストーリーで、欲望と本能のままに生きている主人公をハードボイルドに料理している一品です。

 

 

西遊奇伝・大猿王 1 (愛蔵版コミックス)
著者:寺田 克也
出版社:集英社
販売日:1998-12-18
ラクダが笑う~ファイナル・カット~ (リュウコミックス)
著者:寺田 克也
出版社:徳間書店
販売日:2010-06-11