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笑いと知恵袋の玉手箱や~!『通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキー』
レビュー執筆者:miyamo

ギャグ漫画『通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキー』

 

昔話に登場する人物のかたちで、“賢いよそ者”というのがある。たとえば旅のお坊さんがふらりと人里にあらわれ、困っている民に問題解決の助けとなる聡明な助言を与えてからまた何処へともなく去っていく……そんな造形である。

 

では、我々が暮らす社会を舞台にした現代劇でも、そういう知恵深いアウトサイダーを描くことはできるだろうか? と考えた時に一つの解として目に入るのが、本日ピックアップするこの作品。

 

Twitterとpixivで話題を呼び、商業では2019年2月から「ガンガンpixiv」で配信中の『通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキー』だ。

 

タイトルが指すメインキャラは、大きな体格・ビシッと染め固めた髪・刺すような鋭い目つき……とガラの悪いヤンキーそのものな外見のコワモテ青年、名を「桜井」さんという。

 

まず、街のどこかで誰かが桜井さんと遭遇した矢先うっかり身体や物をぶつけるなど、不慮の接触を起こして「シメられる!?」と怯える→しかし桜井さんは寛容な態度を見せたうえに、相手がそのとき必要としているアドバイスまでしてくれる→イカつい見た目と優しい言動のギャップに相手は思わずキュンとなる、という三段展開が(おもに序盤の)黄金パターン。

 

緊張から弛緩への切り替えをうまいこと活かしたシチュエーションコメディになっている。

 

幼い子供が持っていたアイスで自分のズボンを汚しても怒ることなくうまく宥めてやり、ハラハラして見守る母親には美味しい料理のコツを教える第1話を皮切りに、
電車内で桜井さんのヘッドフォンのコードにカバンをからませてしまった女子高生へ飼い猫とのコミュニケーションの取り方を提案したり、
サッカーボールを頭にぶつけてきた少年にユニフォームの泥汚れを落とす洗濯法を伝授したりと、
生活感と優しさにあふれた桜井さんの知恵袋っぷりは、まさに昔話の旅僧めいた徳を感じさせる立ち回り。

 

身にまとうのは粛々とした僧服ではなく派手なヤンキーファッションだが、俗世の規範の外に立つ存在としての役割衣装という機能を同じく備えている。

 

ただし、本作はさらにそこからもうひと工夫があるのも見落とすべきではないだろう。

 

具体的な話数では第4話以降、いちどアドバイスを受けた人が再登場して桜井さんの温かさを再確認しながら親交を深め・広める回が混ざりだし、面白さの質が変化してくる。

 

つまり桜井さんの見た目のコワさと内面の優しさの取り合わせが、周囲の人々にとって(そして読者にとっても)予想外なギャップだったところから期待される個性へとシフトしてより深い癒しをもたらすのだ。

 

簡単に言うと「こんな人だとは!?」から「そういうとこだよ!」への移行である。

 

序盤のパターンだけをずっと繰り返すことも可能だったかもしれないが、桜井さんというアウトサイダーをアウトサイダーのまま立ち去らせず人の輪のなかへと噛み合わせていく構造を選んだ本作は、昔話に属する人間モデルと現代の人間模様のモデルとの折衷として、とても良い塩梅を示しているように感じられる。

 

 

 

 

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