TOP > マンガ新聞レビュー部 > 明るい未来を創るために『ひとりでしにたい』で最期のときを考える

明るい未来を創るために『ひとりでしにたい』で最期のときを考える

「老後資金2000万円」「孤独死」「老後破産」――

このところ、将来を不安にさせる話が相次ぎます。特に高齢化の進む日本ではもはや避けては通れない問題です。

「でも何からすれば」と焦る方は、カレー沢薫先生の『ひとりでしにたい』(講談社)からはじめてはいかがでしょうか。

最期を考えることが、明るい未来を創ることにつながります。

 

身近な孤独死が突き付ける「次は自分?」の危機感

物語の中心となる山口鳴海は美術館で働く学芸員。大企業で働いてきた伯母が孤独死し、独身で結婚の予定がない自分の将来について急に心配し始めます。

とりあえず婚活をとアプリサービスを使い始めますがうまくいくはずもなく。同じ職場の後輩の男性からの厳しい指摘をもとに自分のことを考え始めます。

 

 「ひとりの老後」を考えるとき、お金はもちろん重要ですが、山口さんが親や同僚とやり取りしながら学んでいくことはそれだけではありません。

「困ったときに適切に周りの人や公的機関に助けを求める」「仕事など収入減を大切にする」「常識や情報を更新する」など。

 

独りの最期を迎えなくても重要な考え方が、物語の中でテンポよく紹介されるため、知らない間に自分の中に浸透していきます。

 

孤独死は独り者だけの問題ではない

孤独死というと、独り者の問題だと思われがちです。もちろん法的な婚姻や事実婚、パートナーシップ制度などを利用してより強い関係のあるパートナーを持っている人に比べて、そうした関係のない独り者にとって、孤独死の可能性が高いのは事実。

自分以外、誰も考えてくれないわけですから、シミュレーションしておく必要があります。

 

しかし、今の段階でパートナーがいても最期のときまで一緒にいられる保証はありません。

 

死は誰にでも共通に突然訪れるもので、パートナーをなくして一人になることは十分ありえます。

たとえ子供がいても、物理的・金銭的に親世代をサポートできないこともあるでしょう。

 

さらにカレー沢先生も「あとがき」で指摘されているように「死んだ後のことは考えない」というタイプの人も、死に至るまでの苦しみを回避するためには準備が必要です。

 

かといって、最期まで「自分は大丈夫か」と日々悩みながら生きていくのもしんどいもの。明るい未来につなげるためにも、最期をきちんと考えておくのは新しい常識なのかもしれません。

 

個人的な経験からは、先を不安に思うタイプの人ほど一度立ち止まって考え抜き、最低限のことをしておくことをお勧めします。

この最低限の土台が固まると、いろいろな面で次のリスクを取りやすくなるからです。

 

適度に怖がり、きちんと備えることが大切さ

孤独死のようなテーマは、これまで実録マンガやレディースコミックで多く取り上げられてきました。多くの場合はひとりで死ぬことになった人が周りに迷惑をかけて地域から排除されたり、家族と対立したりするというもの。『ひとりでしにたい』でいうと、山口さんの親世代の態度ですね。

 

こうした過去の作品に対して『ひとりでしにたい』は「ではどうするべきか」をかわいいネコがわかりやすくも真剣に教えてくれます。

 

誰もが避けられない最期を、適度に怖がり間違いのない王道の方法で早いうちからきちんと備えるためのヒントになります。

 

 


 

 
定価:本体640円(税別) 「月刊モーニング・ツー」で絶賛連載中! 
✴︎新型コロナウイルスと非常事態宣言に伴う諸事情により2020年4月22日発売予定の6月号は刊行休止とさせていただきます。

https://morning.kodansha.co.jp/c/hitorideshinitai/
 
ひとりでしにたい(1) (モーニング KC)
無料試し読み
著者:カレー沢 薫,ドネリー美咲
出版社:講談社
販売日:2020-03-23