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衝撃の展開!あの大野所長がピンチに!?『カバチ!!!』の最新刊に心が震えた件

マンガを読んで心が震えるって感覚は、僕らみたいにマンガが大好きでしょうがない人でも、そうそうあるものではありません。
ましてや、読み続けている長編作品だと尚更そんな機会は少なくなります。

しかし……。

 

今回は、僕自身が久しぶりにガッツリ痺れて心が震えたこの作品をレビューします。

『カバチ!!! -カバチタレ!3-』の第26巻です。

 

 

カバチ!!! -カバチタレ!3-(26) (モーニングコミックス)
著者:田島隆,東風孝広
出版社:講談社
販売日:2020-01-23

 

 

『カバチ!!!』は『カバチタレ』のサードシーズンの連載中の作品でこの第26巻は発売されたばかりの最新巻。
様々なトラブルを大野事務所の面々が解決していく、法律の知識を駆使した人間ドラマです。

 

土地付き家屋を相続しても嬉しくない事実

今回のテーマは「法律は誰が為のものか?」という非常に重いものです。

 

事の始まりは、昨今問題になってきている「空き家問題」。

とある朽ちた空き家の処理を巡り、法律相談に来た町内会の人達からの依頼を受けて、主人公・田村は解決に向けて動き出します。しかし、所有者の捜索から相続者とのやり取りまで、非常に難航します。

 

この「空き家問題」をもう少し詳しく説明してみます。

所有者の死後、資産として相続人の手に渡るのが一般的です。

今回のケースでは、

  • 相続人がそもそも所有者と縁遠い
  • 所有者の身内も居なかったことから相続している事すら知らなかった
  • この空き家自体が朽ちかけており、また現行法でここに新しく家を建てることが難しい

などの要因が含まれていたために、お話がよりややこしくなってしまっていたのです。

 

社会問題化している「空き家」問題。

家を相続しても修繕費や相続税、固定資産税など単純に「家が手に入ってラッキー」ということだけでは実は無く、家屋は負の遺産になることも珍しくない時代になっているのです。

 

国が土地を売るのを許可しないケースに大野が悩む

そして並行して描かれるもう一方のストーリーでは、リタイアした前所長である大野が、旧知の依頼人からの案件に頭を抱えていました。

 

こちらは土地といっても「山」が問題になっていました。

所有しているのは高齢の女性。身寄りもなく一人で暮らしており、人生も晩年に差し掛かってきている、という身の上です。

 

そんな彼女が相続をして守ってきた山でしたが、悪天候による土砂崩れなどが頻発し、その都度近隣トラブルや、行政の指導に従い、多額の費用をかけ修繕をしてきていました。

 

とうとう金銭も底を尽きたため、山を処分したいと申し出たものの、国が許さないという事態に……。

 

この『カバチ』シリーズ全編を通しても“ラスボス”と言っていいほどの活躍を見せてきた大野と言えど、この依頼に関しては当初より旗色が悪く、手を打とうにも上手く事が進まない状況になっていました。

 

そして事態は更に悪化していき、個人間のトラブルから行政を巻き込んでいくことになります。

 

「法律は誰を助けてくれるのか」

片側の物語では行政の力を借りながら、もう片方の物語では行政の力に対抗するというストーリー仕立てになっており、非常に緊迫したシリアスな展開になっていきます。

 

『カバチタレ』シリーズは行政書士事務所を舞台にした物語で、様々な法律トラブルを取り扱って来ました。

 

ここ最近のエピソードでは、いわゆるマンガとして見栄えがするフィクション的でわかりやすい「解決策=勧善懲悪」のドラマではなくなっているのが特徴です。
「一応の解決はしてるように見えるけれど、実は根本的な解決はできていない」という結末の物語が増えてきていました。

 

マンガとしては、きちんと解決して終わる、というのが良いのかもしれません。

だけど現実では、こういったトラブルは得てしてお互いが納得できなかったり、どちらかだけが利を得るということもなく、とにかくモヤッとした感じが残ったりするものです。

 

本作も無理にキレイな解決にこじつけていないため、リアリティがより出ていて、説得力が増しているように思います。

 

今回のお話のように法律は僕達のことを何から何まで片をつけてくれたり守ってくれるのではなありません。

 

時に法律というのは、誰かにとっては味方になって力を貸してくれる反面、誰かにとっては人生を狂わせるほどの大きな力にもなりえる、ということが今回のエピソードで強く描かれました。

 

この観点は『カバチタレ』の連載開始時の最初のエピソードでも示されていたので、改めて原点回帰をこの第26巻で果たしたのではないでしょうか?

 

法律とは本来そういった多面性を含んだもので、片方にとっては役に立ったけど、もう片方にとってはどうしようも無いぼど太刀打ちできない権力ともなりえるものです。

行政をはじめ、依頼者、対峙する相手、など全ての人の立場がより丁寧に描かれていて、読み応えがある巻になっています。

 

法律と、それを取り扱う人達の矛盾や葛藤。

そしてそれでも戦わざるを得ないという物語。

タイムリーな社会問題について詳しくなれるお仕事マンガとも言えるかもしれません。