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爽快さの後にじわじわ効いてくる天才からのメッセージ『響〜小説家になる方法〜』

たった一人の才能が世界を変える。ついに完結した天才物語

 

もう昨年秋のことだが『響〜小説家になる方法〜』が完結した。

2014年に連載開始して以来、話題を呼び、2017年にはマンガ大賞を受賞。

欅坂46の平手友梨奈主演で映画化もした、言わずと知れた名作だが、完結した『響』は、やっぱりすばらしかった。

と同時に、『響』終わってしまった、という一抹の寂しさを感じている。

 

文学界に突如現れた15歳の天才少女・鮎喰響は、物静かで地味な風貌だが、どんな大人にも物怖じせず意志を貫く強さを持ち、自分の邪魔をする人間には、手段を選ばず反撃する暴力的な一面も持っている。

 

『働きマン』『バクマン。』『重版出来』など、出版系ものづくりマンガというべきこのジャンルも、そろそろ王道のカテゴリーになってきた。

 

しかし、この『響』のおもしろいところは、響が主人公でありながら、なんの葛藤も壁もない、常軌を逸した天才であるところだと思う。

 

こんなに葛藤しない主人公っていただろうか

初めて投稿した小説が、直木賞と芥川賞を同時受賞。

 

高校の文芸部員へのアドバイスのために書いた作品がライトノベルの賞を受賞。

 

その両作品とも爆発的にヒットしてしまうなど、その才能は留まるところを知らず、さらに性格は暴力的で上から目線、世間からどう思われるかなど一切気にしない。

 

身元を隠していたこともあり、やがて響は社会現象を巻き起こすほどのスター的存在になっていく。

 

こういう天才的で奇抜なキャラクターって、普通は主人公のライバル側じゃないんだろうか。

『バクマン。』の新妻エイジが個人的に大好きだったのだが、天才でありながらフェアな性格、他の作家や作品へのリスペクトは人一倍持っている。

そんな愛すべきライバルがいてこそ、主人公の成長ストーリーは盛り上がる。

 

しかしこの『響』は違う。

もちろん無名だった響が瞬く間にスターダムを駆け上がる壮快感はすごいのだが、そこに何の鍛錬も努力も成長も感じられない。

響はいつもサラサラと作品を書き、例外なく世間から大絶賛を浴びる。

 

しかしその一方で、響のまわりには、さまざまなタイプの人物像が描かれていく。

 

高名な小説家を父に持ちながらも、響と比べると才能の限界にぶつかってしまう祖父江リカ。

 

メディア露出も盛んな売れっ子作家だが、実は自分の才能の枯渇から目をそらしている鬼島仁。

 

芥川賞に何度もノミネートされながらも受賞に至らず、自殺を考えるまで追い詰められる山本春平。

 

響の小説を漫画化しようと画策する漫画家・鏑木紫。

 

作家以外にも、響を見出した敏腕編集者・花井ふみ。

 

響のドキュメンタリーを撮ろうと画策するテレビプロデューサー。

 

響の人気を利用して国民の支持を得ようとする政治家など、響を取り巻く人物は、その誰もが、モデルいるのかな? と思うような、リアリティあるキャラクターだ。

 

天才じゃない私たちが、人生を生き抜くためのメッセージ

 

そういう意味では、響はそうした凡人たちを描くための狂言回しであるという読み方もできる。

 

読み手の私たちは、響のダイナミックなサクセスストーリーでカタルシスを得ながら、脇役の成長物語や画策の顛末を読み、共感にふるえることができるのだ。

 

そして響のセリフのひとつひとつは、じわじわと効いてくる。

 

「駄作しか書けないから死ぬ?(中略)小説家なら傑作一本書いて死になさい。」

 

「モノを作るのに何割とか言う奴がいたのなら、そいつは作家じゃないから相手にしなくていい」

 

「海外で働きたいの? 知らないわよ。今日行けばいいでしょう。」

 

こんなとき、響ならなんというだろう。

この先、きっとそんな風に思いおこしたくなるような作品だった。

まだ読んでいない方には、完結してやっと一気に読めるようになったいまこそ、読破することをオススメしたい。

 

 

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