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会社の合宿でマンガを書け!そして生まれた『ぼくらのチェイサーゲーム』

皆さんは『合宿』と聞くとどんなことを思い浮かべますか?

厳しい練習や同じ釜の飯を食べながら深めていく絆、その他にも色んなイベントが起こるのが『合宿』の醍醐味ですよね?

漫画の世界でも『合宿』は定番のイベントネタになり、多くの作品に登場します。

 

学生の時だけではなくて、社会にでてもこの『合宿』を行うことがあります。

意外と社員研修とかに『合宿』って名前で行事を行っている会社って多いですよね。僕自身も何度か『合宿』という名の修行に参加したこともあります。

 

さて今回取り上げる作品はそんな「合宿」なしでは生まれ得なかった作品となります。

 

マンガ新聞のレビュアーでもある松山洋さん。ご存知の方も多いと思いますが本業はゲーム開発会社株式会社サイバーコネクトツーを率いる社長です。

松山さんが社内施策としてここ最近、定期的に行っているのが社内のクリエイターを引き連れて旅に出る「絵描き合宿」です。

 

その「絵描き合宿」での成果である作品をまとめたのが、今回紹介する『ぼくらのチェイサーゲーム』なんです。

 

サイバーコネクトツーの「絵描き合宿」とは

「旅は人を成長させる!」との松山さんの発案で実施されるようになった施策で、会社を飛び出し、旅先で見たモノ、聞いたモノ、触れたモノ……そして出逢ったすべてに対して、五感を研ぎ澄ませることによってクリエイターとしての技術向上を図る!

このような考え方から生まれた企画です。

 

第一弾の宮崎県編から始まり、第二弾を静岡県、第三弾の奈良県編を経て、松山さんから参加者に伝えられた第四弾、つまり今回の行先は、愛知県名古屋市!

鳥山明センセイを生み、大企業TOYOTAがあり、多くのグルメを要する本州のド真ん中!

 

愛知県は名古屋市へ旅に出たサイバーコネクトツー御一行様ですが、今回はどんなテーマで課題がでるのだろうか……。

今までの傾向では、その地ごとに人々や場所、感じたこと、思ったことを題材としてきていました。

 

戦々恐々とワクワクを持って待ち構えていた参加者一同と、そんな旅の模様をリアルタイムに楽しみにしていた、僕を含めた日本中の松山さんのTwitterフォロワーたち。

「ネタの宝庫の名古屋にちなんだものだろう」と考えたりしてました。

 

しかし待っていたのは、誰もが驚いたものだった。

お題は「『チェイサーゲーム』に関する『漫画』を描くこと」。

 

『名古屋、関係ないんかい!』

参加したすべての人、フォロワーが一体となった瞬間だった。

 

 

第四弾となる「絵描き合宿マンガ」

恒例となりつつある、株式会社サイバーコネクトツーの「絵描き合宿作品」をまとめたこのシリーズも回を重ねて第四弾!

 

今回も松山洋さんをはじめ、常連から初参加のメンバーを加えた計六名が、名古屋市に乗り込んでいつも通りの合宿珍道中!

……のはずでしたが、お題がお題だけに、今までにない展開に。

 

今回の課題は、ファミ通.com で大好評連載中の『チェイサーゲーム』に関する『漫画』を描くこと。

今回のルールは(以下本編より引用)

今回のテーマは『ぼくらのチェイサーゲーム』。

漫画『チェイサーゲーム』に登場するキャラクターは自由に使用可能。

新キャラを登場させるのもアリ。

今回の合宿参加スタッフから見たゲーム業界やサイバーコネクトツー社内の

エピソード紹介でもオッケーだし、全くの二次創作でもオッケー。

時間軸も自由なので過去現在未来でもオッケー。

赤裸々な開発現場の姿から、それを支える業務部の姿、そんな彼らの日常でも、妄想でもなんでもオッケー。

もっと言うと感想マンガでもオッケー。面白ければオッケー。

形式は『漫画』。一本のストーリー形式で描くのもオッケーだし

複数話でもオッケー、4コマ形式でもレポート形式でもオッケー

自分に合った描き方で描いてください。

1ページでも1コマでもいいしページの中でコマ割っても良し。ただし

必ずページの中に吹き出しや擬音を使ったマンガ形式を意識すること。

最低10ページで上限は無し。

(ルール自体は④まであるんですが本稿とは関係が薄いので省略)

 

つまり、『チェイサーゲーム』本編を元にした公式によるスピンオフがテーマ。

 

『チェイサーゲーム』はサイバーコネクトツーを舞台にした現在進行形のゲーム業界を描いたお仕事群像劇。

実際にサイバーコネクトツーで働いている社員たちが(もちろん松山さんも含めて)登場しているので、今回参加のメンバーたちは自分を登場させるのも、知られざる成功体験や失敗談などを綴ることもできます。

 

自分たちの事だからこそ描ける分自由度も高いが、その分”面白さ”へのハードルは上がりまくるっ!

そんなプレッシャーを胸に各々が挑んだこの『絵描き合宿』今回のメンバーは下記の6名。

<サイバーコネクトツー参加クリエイター>
●松島 幸太朗:サイバーコネクトツー所属の漫画家。『チェイサーゲーム』作画を担当。過去の主な作品『ショー☆バン(森高夕次 原作)』『ストライプブルー(森高夕次 原作)』『永遠の一手(伊藤智義 原作)』

●ヒガシ:自社企画制作グッズ・書籍など幅広いデザインを多数手掛ける他、イラストレーター「ヒガシ」としても活躍中。サイバーコネクトツーの(ほぼ)マスコットキャラクター「CCチュウ」のデザインも手掛ける。

●ミヨシ:ゲームのタイトルロゴやUIデザインをはじめ、企画書、書籍など各種編集・デザインをメインに行う。イラストレーター「ミヨシ」としても活動する傍ら、最近は展示用フィギュア・ジオラマづくりも手掛ける。

●あんけいと:UIデザインをメインにゲーム開発を行う。イラストレーター「あんけいと」名義で活動する傍ら、ゲームディレクターを目指して日々“次のおもしろい”を企てている。

●細川 誠一郎:ゲーム『.hack//G.U.』からメインキャラクターデザイナーに抜擢され、それ以降『.hack』シリーズを中心にキャラクターデザインを手掛ける。独創的な世界観で国内外で多くのファンを魅了する。

●松山 洋:株式会社サイバーコネクトツー代表取締役/ゲームクリエイター。『チェイサーゲーム』原作者。代表作『.hack』シリーズ、『NARUTO-ナルト-ナルティメット』シリーズ、『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』。著書『エンターテインメントという薬』『熱狂する現場の作り方』

 

松島センセイが初参加で松山さん筆頭にお馴染みの顔ぶれが筆を振るいます。

 

今回はテーマがテーマなので『チェイサーゲーム』の制作秘話やキャラクター達を使ったセルフパロディなど、自分たちが生み出しているものだからこそ、より深く掘り下げられる内容になっており、前三作と比較しても全くの別物と言って良い内容になっています。

 

そんな中でも個人的に非常に胸を撃たれたのは、アーティストのミヨシさんの描いた作品です。タイトルが『名もなきデザイナーの小さなチャレンジのはなし』です。

ゲームやマンガ、クリエイティブに限らず、普通のお仕事でもなかなか自分の物語を語ったり語られたりするような機会ってほぼ無いですよね。

武勇伝とかドラマや映画のような物語はたまにだれかに起こるから文字通り劇的なんだと思います。

 

今回ミヨシさんが描いたのは、とある印刷会社に勤めていたとある会社員の話。そんな彼がある会社のある人物と出逢い共に闘うようになった先に生まれたお話です。

楽しいとか面白いとかを産み出せるそんな仕事に携わった彼がした“かんちがい”その“かんちがい”。

そこで編み出されたのが“たったひとつだけ全部うまくいくクレバーな方法”なのです

 

そんなミラクルな方法ってなに?

ぜひ、その目で確かめてみてください。

これ、はっきり言って、号泣モンです。

 

自分の仕事に迷ってる人や、これからに悩んでる人、なにか踏み出したい人。

そんなもがいている人や『追う側(チェイサー)』の人たち全てにとっての必読書です。

そしてなにより大トリを飾る松山さんが描く『チェイサーゲームZERO』の熱量は本当にすごいです。合宿初日に酔いつぶれてた人が描いたとは思えないくらいの内容です。

 

というわけで、今作は『合宿本』ではあるものの、既刊3巻とは完全な別物と言って良い内容になっていると思います。

なにより今作はこれからマンガを描いていく人にとって気づきや勉強になることが多いので、読まれることを強くオススメ出来る一冊になっています!

 

 

 

 

ぼくらのチェイサーゲーム Vol.1
著者:株式会社サイバーコネクトツー
出版社:ナンバーナイン
販売日:2020-01-10
チェイサーゲーム (1)
著者:松山 洋,松島 幸太朗
出版社:KADOKAWA
販売日:2019-09-13