TOP > マンガ新聞レビュー部 > 好きなものがあることの幸せを実感させてくれる『裸一貫!つづ井さん』

好きなものがあることの幸せを実感させてくれる『裸一貫!つづ井さん』

 

 この度行われたマンガ新聞大賞で見事大賞を受賞した『裸一貫!つづ井さん』。同じ作者の『腐女子のつづ井さん』につづき、腐女子たちがいかに日々楽しく過ごしているかを描いた作品です。

前作以上にこの世に好きなものがあることでいかに人生が楽しくなり、厳しい日々を生きのびることができるのかを見せてくれます。

 

 

 

 

自虐からの卒業

  「つづ井さん」については、ほかのレビュアーの方がすばらしいレビューを書いていられたのでもういいかなと思いつつ、大賞を取ったことがうれしくて、書くことを決めました。

 

 私自身もつづ井さんシリーズは人からすすめられて読んだ派で、前作から続き、オタク女性たちがいかに自分たちの推しと日々生きているかを見事に描いた作品だと思っています。

 

 今回の『裸一貫!』がすごいのは、この日常の楽しい瞬間を描くというコンセプトは維持しつつ、作者に明確な方向転換があったことです。

 詳しくは単行本が出たときの作者の方のnote(「裸一貫!つづ井さん」についてちょっと真面目に話させてくんちぇ~)にまとめられているのでぜひご拝読ください。

 

 簡単にいうと「自虐をしない」。自分に対する自信のなさや卑屈さを、意図的に取り除いたそうです。

(なお、私自身はこの姿勢を酒井順子さんの『負け犬の遠吠え』から知りました)

 

 なので新作の『つづ井さん』では、とにかく「仲間といることの楽しさ」「推しがいることの幸せ」が前面に押し出されています。

 もう何がどのように好きでも、どんなステータスでも他人に迷惑をかけないならだれにも恥じる必要はないと思わされました。

 

 

推しがいるから生きていける

 数々の珠玉のエピソードの中、私はお風呂に入ることを賞賛するエピソードと、つづ井さんが推しから年賀状をもらい、日々どんなにしんどいことがあってもそれを支えに生き抜くエピソードが気に入りました。

 

「ああ~わかる、わかる」です。

 

 私自身、もともと打たれ弱いのでミスをしたり注意をされたりするとすぐに自分の存在を消し去りたくなります。

 そんなとき、推しの出る舞台やイベントのひとつでも予約しておけば、少なくともその日までは消えるわけにはいかないと思い、当日舞台を見に行けば課金のために働き続けなければと決意できます。(その点で週刊連載ってありがたいです)

 

 全体的に登場する人たちの推しが広がっていることも、すごく楽しかったところ。

 全員「オタクで腐女子」と紹介されつつも、熱を上げているもののジャンルは人それぞれ。(前作から時間がたっているから増えるんですよ!)

 ジャニーズジュニアやアイドルに熱を上げている人もいます。つづ井さんご自身もある俳優の方との新たな出会いがありました。

 

 好きなものは違えど、その対象への熱を媒介に緩やかで居心地のいいコミュニティを作る――きちんと自分を維持できる場所の理想形といえそうです。もちろん彼女たちは日々しんどいことがあるかもしれませんが、「仲間との楽しい瞬間」を支えに、乗り切っているのではないかと思わせてくれます。

 

 出てくる人たちが強度の腐女子の方々なので、腐女子以外はなかなか手にしにくいかもしれません。もしかしたら「彼女たちはいったい何をしているのだ」と疑問に思うこともありそうです。

 

 しかし、それだけでこの作品を読まずにいるのはもったいないと思います。好きなもの、大切なものがある人なら、この作品を手にすれば、共感できるところを見つけられるでしょう。

 そして、何も好きなものが思いつかないという方こそ、つづ井さんの熱意を通じて、是非ご自身の好きなものを見つけていただきたいと思います。

 

 

裸一貫!  つづ井さん 1
著者:つづ井
出版社:文藝春秋
販売日:2019-09-11

『裸一貫!つづ井さん』関連記事

◼️マンガ新聞大賞は『裸一貫! つづ井さん』!第3回結果本日発表~2020年1月27日(月)授賞式開催~

◼️幸せになりたい人のためのライフハックマンガ『裸一貫! つづ井さん』