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『幽遊白書』もう一人の主人公は扉を開けたコエンマだ!

「実家にキングダム全巻置いてあって、年末戻ったときに必ず読み直しているんです」

「ベルサイユのバラ、年初に読んで、そこから一年が始まるんです」

 

お気に入りの作品の読み方について、こんな答えが返ってくることがある。

 

新しいマンガもいいが、どこかの決まった時期(場所)で往年の作品を読み直すのも、端から見てるとステキな習慣だ。

それに憧れて、時間の空いたときに過去の作品を読んでいると、色々な気づきがある。

やはり、大人になると見方が変わるのだ。

 

特に目が留まったのは『幽遊白書』。

いわずとしれた、ジャンプが誇る名作だ。

幽霊となってしまった主人公・浦飯幽助。ところが、特例により生き返る道があることが判明。幽助は己の価値や気持ちと向かい合い、さまよう霊の問題を解決しながら、復活を果たす。

 

しかし、復活を遂げた幽助は余人にはない特殊な力を持つようになり、それを異界のものが関わる問題解決に活用しようと、コエンマの指示の元、幽助は霊界探偵として様々な問題に立ち向かっていく……というジャンプおなじみのバトルマンガへと変貌(笑)。

 

しかも、シリーズ後半では幽助が再び死んでしまうものの、魔族の生まれ変わりとして転生。己のルーツを求めて魔界に足を踏み入れ、魔界の勢力争いに介入し、魔族の頂点を決めるバトルトーナメントを開催する……と、人間界を越えた壮大な展開へと進んでいく。

 

幽助をはじめとしたスタイリッシュなキャラクターが男性だけではなく女性にも広く支持された作品としても知られている。

 

実はこの作品、魔界編以降はエピローグ的エピソードが続き、大きな盛り上がりがないまま幕を閉じる。

だが、そのエピソードのなかに、驚きの事実が明かされているのを、みなさまは憶えているだろうか?

 

 

幽★遊★白書 1 (ジャンプコミックス)
著者:冨樫 義博
出版社:集英社
販売日:1991-04-10

敵なんていなかった

 

現世を脅かす妖怪。

霊界(人間界)を脅かす魔族。

 

敵がいて、守るものがあるから、幽助たちは戦っていたはずだった。

そして、異なる世界(種族)はその領域に入り込まないよう、結界が敷かれていた、という設定だと、思い込まされていた。

 

だが、それは誇張されたフェイクニュースだった。

 

そもそも人間を襲う(喰らう)魔族はごく僅か。

霊界を存在させるために、霊界は壁(敵)を作っていた。

魔族に関する情報の多くは改ざんされたものだった。

 

鞍馬から語られる事実。

さらっと語られているけど、結構理不尽だ。

 

これをリークしたのがコエンマ。

つまり、彼は父(エンマ)を告発したことになり、霊界という自分がいた場所を壊したことになる。

 

『幽遊白書』の“陰”コエンマ

元・霊界探偵だった仙水が敵になったとき、コエンマは“秘具”を用いて立ち向かおうとする。

それを幽助が遮り、代わりに仙水と戦ったが、命を落とした。

 

仲間達が静かな怒りを湛えて仙水と戦う中、コエンマは幽助の元へ。

その時、コエンマの脳裏には何が浮かんでいたいのだろうか。

 

(特例とはいえ)死んだ人間を生き返らせてしまった。

能力を買って、戦いの世界へ引きずり込んでしまった。

霊界探偵の後継者として持ち上げてしまい、結局殺してしまった。

 

自分が開けてしまったたくさんの“扉”。

浮かんだのは、後悔、だったのかもしれない。

(マンガでは描写が少なめだが、アニメ版ではコエンマの心情が少し足されている。ご興味ある方は観て欲しい)

 

だが、幽助は(悩みながらも)自分らしく扉をくぐっていく。

しまいには、人間と魔族、魔族の中の境界、そして霊界(人間界)と魔界(魔族)の壁すら越えていった。

 

その姿が、コエンマの中の壁をも突き破っていったに違いない。

 

描かれてはいないが、霊界の闇を暴いたことによる混乱は、想像を絶したものになっていたことだろう。

もし実現するのなら、告発後のコエンマ奮闘劇をみてみたいなあ(笑)。

 

扉を閉じた幻海

 

ちなみに、この物語は、幽助の師・幻海の死に際して仲間達が集まることで幕を閉じる。

 

生き永らえる手段はあったはず。

幻海は自然の死を選んだ。

 

続いていく物語があれば、終わらせるべき命もある。

本来在るべき形へ。

開いた扉を、玄海は閉じたのだ。

 

その爽やかさが、“生と死”を少し身近に感じさせてくれた気がした。

 

その当時読んでいたときは読み飛ばしていたシーンやセリフが、今読むと、違った意味合いを持ち、心に引っかかってくる。

読み直すときに、それまでとは違うキャラクターに着目して読んでみてはいかがだろうか?