TOP > マンガ新聞レビュー部 > 正月帰省前の必読マンガ。あなたにとって家族とは?

さて令和元年も残り一ヶ月を切りましたが、皆さんは年末年始の過ごし方について、もう決められましたか?
もし「まだ決まってないよ」という方は、今回ご紹介する『泉さんちの福福家族』を読んでいただき、ぜひ「ご家族」と一緒に過ごしてもらえたらと嬉しいなと思います。
マンガ原作者が家族との日々を綴ったエッセイ
本作は「ゲッサン」で連載中の『海王ダンテ』の原作を担当されている、マンガ原作者・泉 福郎先生による「家族」をテーマにしたエッセイです。
二年ほど前からツイッター(@okaeri_eripiyo)で公開されてきたマンガが、先月ついに書籍化しました。
昭和:両親、祖母、兄弟たちと過ごした子ども時代
平成:異国での出産・育児を経験した母親の時代
令和:日本に戻ってペットたちと暮らしている現在
上記のくくりで作者の「各時代の家族との思い出」が、温かみのある絵のマンガで語られていくのですが、両親や祖母からの愛情には「なるほど」と感銘を受け、息子さんやペットからの愛情には「胸キュン」して癒される……といった充実の内容になっています。
涙無しに読めない「“狸”お父さん」との思い出
作者の思い出のなかでも特に印象的なのは「父親」のエピソードです。
作者いわく、父親はとても優しい方だったそうですが、ただ子どもを甘やかしていたわけではなく、子どもに対しても「一人の人間」として思いやりを持って接してくれていたことが、マンガから良く伝わってきます。
寝る前ラクガキ漫画
— 泉福朗@11/22「泉さんちの福福家族」 (@okaeri_eripiyo) May 17, 2018
父には貼りついて回ってたので、会話の時間も多かったです。
けっこう生きやすくなるヒントをもらってた気がします。 pic.twitter.com/zMTRoeMtsG
そんな素敵な父親と作者の思い出エピソードはどれも心温まる内容なのですが、「その日」は突然やってきます……。
「変なベスト」
— 泉福朗@11/22「泉さんちの福福家族」 (@okaeri_eripiyo) September 4, 2019
「どんな大人になってほしい?」
そう聞くと
「人の幸せを喜べる大人」
と、父はいつも答えました
そんな父と私の話です
書籍化が決まりました
私一人の名前で本になるのは初めてで
照れくさいやら恥ずかしいやら
正直狼狽えておりますが
担当編集さんを頼りに精一杯頑張ります pic.twitter.com/G2oM3J8KMJ
……もう、読んでいて涙腺が決壊しました。
ちなみに「なんで父親は“狸”の顔なんだろう?」と前々から思っていたのですが、このたび単行本が完成した際の作者のツイートを見て、その理由が明らかになりました。
本日発売
— 泉福朗@11/22「泉さんちの福福家族」 (@okaeri_eripiyo) November 21, 2019
編集さんが私の落書きマンガをまとめてくださって
単行本ができました。
公開してない漫画もけっこう載せてます
父が狸なのは、普通に描こうとすると
私が泣くからでした。
本当はこんな顔でした。若い頃と亡くなる少し前。
それから、
描きおろし漫画「ペクとコテツ」のお写真も pic.twitter.com/8WxpSJk5Qc
父が狸なのは、普通に描こうとすると
私が泣くからでした。
……はい、また涙腺が決壊しました。
愛する家族との死別は残された人にとって想像を絶する苦しみですが、それでも少しずつ時間がたつにつれて、辛かったことよりも楽しかったことのほうが思い出せるようになっていき、そのつど懐かしくて泣いてしまいます。
今なお、父親を思い出して涙を流せる作者からは、本当に父親が大切な存在だったことが伝わってきますし、時間がたっても失われない「親子の絆」の強さを感じました。
たくさんの「ありがとう」が詰まった作品
本作は、昭和から令和へと時代が移り変わるにつれて起きる「家族との死別」や「母親の介護」など、「生」「死」「命」にまつわるエピソードが多数あります。
ですが、そういったエピソードは決して悲観的な内容ではなく、作者から家族へのたくさんの「ありがとう」がギュッと詰まっています。
そして、そんな作者を通じて「これまでの家族」から「これからの家族」へと「家族愛」が受け継がれていくんだな……と思うと、読んでいる側も心が温かくなってきます。
本作は読むと「家族との時間を大切にして感謝を伝えていこう!」という気持ちにさせてくれるマンガですので、ぜひたくさんの方に読んでいただけたら嬉しいです。
※単行本には未公開のマンガも多数収録されていますので、これまでツイッターで読まれたことがある方も、ぜひ単行本を買っていただいて読んでほしいです。
(描きおろしマンガ「ペクとコテツ」は号泣必死!)
それでは令和最初の年末年始が、皆さんと大切なご家族にとって素晴らしいものになりますように……。
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