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女が生きる苦しさを、薬は救ってくれるのか?マンガで読む薬物依存の2作品『エスケープ』『ヘルタースケルター』

このところ、著名人の薬物による逮捕が相次いでいますね。

なかには何度も逮捕を繰り返す人もいて、そのたびに薬物依存の恐ろしさを実感します。

 

私は仕事がなくて貧乏なころ、めっちゃ酒飲んでました。

バイトの面接も受からないし、ライターの仕事もとれない。なにをどう頑張ったらいいのかわからなくて、なんとなく昼間っから酒飲んでました。酒飲むとフワーってして「ま、なんとかなるか」って思えるんですよね。

 

でも飲んだら勉強も仕事の準備もできないから、明日にしようと先延ばしする。そうして不安がまた大きくなって飲む。

どうやって復活したのかよく分からないけど、いつの間にか少しずつ稼げるようになっていました。

 

酒飲んでる時間って無駄以外の何ものでもないんだけど、人は、苦しいときには何かに頼って楽になりたいんですよね。ストレスに立ち向かう強さのある人なんていないんです。

 

薬物で逮捕のニュースを聞くたびに、思い出す作品がふたつあります。

ひとつめは、売れっ子AV女優の加奈子が運送業者でバイトをしている人志と恋に落ちる『エスケープ』。

 

 

恋の掟/エスケープ (祥伝社コミック文庫)
著者:桜沢 エリカ
出版社:祥伝社
販売日:2002-05-01

 

 

2人は出会うなり劇的な恋に落ち、そして自堕落になっていきます。昔の桜沢エリカあるある展開です。

でも恋に狂って周りのことがどうでもよくなるとか、少女マンガ脳にはビンビンくるんですよね。

 

加奈子はAVに出演することで、大金を稼いでいます。加奈子が仕事をすればお金は入るけど、人志は嫉妬で辛い。

じゃあ「俺が加奈子を守る」と言って人志が働きに出ると、今度は加奈子が自宅で時間を持て余してしまう。

2人はすべてを捨てて一緒になったのに、うまくバランスを取ることができず、すれ違っていきます。

そこにつけ込んでくるのが薬物です。

「ああ、こうして薬物が生活に入り込んでくるのか」

「一度経験のある人にはこうしてループに陥るのか」

と思ったものです。

 

そして少女マンガ脳の私は、

「やばい、ヤクやったら恋が終わる!」

と思ったわけですよ。

恋愛が人生でいちばん大事なお花畑野郎だったので、恋が壊れるなんて、そりゃ恐ろしい話なんです。

「うん、薬は絶対やっちゃいけないんだな」と刷り込まれました。

仕事がなくなるよりも、恋が壊れることの方が、自分にとっては恐怖だった。

リアルなヤク中啓発マンガとかよりも、よっぽど効きました。

 

薬物と聞いて思い出すあともうひとつが『ヘルタースケルター』。

 

 

ヘルタースケルター (FEEL COMICS)
著者:岡崎京子
出版社:祥伝社
販売日:2003-04-01

 

 

原作マンガが好きすぎて、どうにも映画を観る気にならなかったんですが、逮捕を受けて公開中止になるかもしれないので、この機会に観てみました。

とにかく、沢尻エリカが美しかった!

どのシーンを観ても、「きれいだなあ」「きれいだなあ」とつぶやいてしまう。

 

この作品は、全身整形で絶世の美女になったりりこが、人気タレントとしての寿命や美しさを失うことへのプレッシャー、作られた外見だけを求められることへのジレンマから、徐々に壊れていく物語です。

 

私は少しずつ人が破滅に向かっていく話が好きなんですな、スティーブン・キングの『ゴールデンボーイ』とか。

それでいうとフランス革命への序章を描く『ベルサイユのばら』とか、少女マンガ界で不滅の人気を誇る新選組とかも、破滅に向かう話なので、日本人はこういう話にビンビンくるのかも。

 

 

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)
著者:スティーヴン キング,Stephen King,浅倉 久志
出版社:新潮社
販売日:1988-03-30
ベルサイユのばら(1)
著者:池田理代子
出版社:フェアベル

「女」であることの息苦しさ

女は、とかく外見をとやかくいわれることが多いです。
きれいにしていると、とんでもなく周りがチヤホヤしてくる。

でも、そうされればされるほど、「外見ばっかりで評価しやがって」「私の中身で評価してよ!」と思う。

ややこしいというかひねくれてるというか。

そしてこういう複雑な気持ちはよく少女マンガの心理テーマになります。

少女マンガって、情緒的にものごとを訴えるところが、めちゃくちゃ心に響くんですよね。

 

作品では、りりこは精神の安定を求めて、種類はわからないけど、薬を大量に飲むようになります。

なんだか観ていて、沢尻エリカ自身と重なって仕方がなかった。
ワイドショーでは、彼女がどれだけマスコミに追われていたかを繰り返し報道していて、「そりゃプレッシャーだよな」と思いました。

20代のころのつたないコミュニケーション能力を今さらあげ連ねて繰り返し蒸し返されたら、私なら怒りと恥ずかしさで狂って死ねます。

 

『ヘルタースケルター』が恐ろしいのは、りりこが徹底的に「若さ」や「美」という呪いから逃れられなかったこと。

外見の美しさだけに自分の価値を置くと悲劇ですよ。若さとともに美しさは必ず失われるものなんだから。

だから、本格ババアになる前に、勉強したりいろんな経験をしたりして、中身で勝負できるようになっていたいって思ってました。

若さにすがりついてぼやくのなんて、絶対したくなかった。

 

『エスケープ』も『ヘルタースケルター』も、生きる息苦しさと、それでも転落しないための知恵を授けてくれた作品です。

 

 

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