TOP > マンガ新聞レビュー部 > 人間と狸と天狗の三つ巴!森見登美彦原作のマンガ『有頂天家族』を読んで面白く生きることの面白さを堪能しよう!あと京都にも行こう!

先日高尾山に登り、今も鳴りやまない筋肉痛に苛まされています。
祝日ということもあって混んでいたのですが、山頂の看板はもちろんのこと、
訪れた人々は紅葉を撮影していました。
ほんの少しですが赤い色味の差した木々があり、我ぞ先にインスタ映えらんかと、ひとだかりができるほどでした。
そして日本で暮らすひとは概ね、紅葉を見ると京都へ行きたくなるよう設計されています。
紅葉で溢れた京都が最高なのは当然なのですが、竹谷にとって、京都へ行く大きな楽しみがもうひとつあります。
京都は、『有頂天家族』の舞台なのです。
人間と天狗の間で狸が繰り広げる「阿呆の血」と家族の物語。
猫がバスに化けるように、狸も色々なものに化けられます。
主人公の狸は下鴨矢三郎(しもがも・やさぶろう)という名で、普段は「腐れ大学生」の姿をしています。
父は狸界屈指のレジェンド級大狸なのですが、先日とあることで亡くなっています。
残された家族は母と、矢三郎を含めたオス狸の四兄弟です。
真面目すぎる矢一郎と、面倒くさがりな矢二郎と、主人公であり阿呆の矢三郎と、繊細な矢四郎。
大きな父の死後、家族の心はどこか離れてしまっています。
そのさなか、狸界をもこもこに揺るがす事態が潮のように満ちていき、下鴨家の狸たちは否応なく巻きこまれていきます。
しかし、危機的な状況にあっても、なんだか騒ぎ始める「阿呆の血」。
小難しい理屈を吹き飛ばすかのように、誰にも流れる「阿呆の血」というものの力は、狸たちを愉快な選択へと駆り立てていく。
読むと、結局のところ人間もまた、面白く生きるよりほかはないのだ、と思い知ります。
読破前後で、3倍は変わる京都の楽しさ。
物語が面白いのは言わずもがなですが、『有頂天家族』の好きなところは、狸のまるまるとしたかわいさです。
……間違えました。
いや、それもあるのですが、作中に出てくる狸の名前が実際の京都の場所に由来しており、それが妙なリアリティを伴っています。
たとえば、主人公の下鴨という姓は世界遺産の下鴨神社から来ており、またこの家族の住処も下鴨神社です。
八坂や南禅寺という如何にも渋そうな狸もおります。
月並みな表現で言うなら聖地となります。
しかし、お読みくださればご理解いただけると思うのですが、ほかの京都を舞台にした作品に比べ、場所が登場人物の名前となっているため愛着が断然強いのです。
森見登美彦先生の別作品、たとえば『四畳半神話大系』も京都のお話で、また竹谷はこちらも大好きなのですが、場所にそこまで愛着は湧きませんでした。下鴨神社をここまで訪ねたくなる作品は『有頂天家族』のほかにないと思います。
『有頂天家族』は、小説発のコンテンツですが、マンガにもアニメにも展開されています。
すべて違った面白さがあって、どれを読んでも見ても泣きました。
きっと皆さんも、未来に何度か京都へ行くのではないでしょうか。
観光も紅葉狩りも楽しいですが、『有頂天家族』を読んだ後なら、違った面白さがきっとあるはずです。
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